稲川淳二のすご〜く恐い話SP 八王子怨霊地帯

稲川淳二のすご〜く恐い話SP 八王子怨霊地帯 稲川淳二のすご〜く恐い話SP 八王子怨霊地帯』

稲川淳二

判型:B6判

版元:リイド社

発行:2005年6月16日

isbn:4845827786

本体価格:286円

商品ページ:[bk1amazon]

 夏の風物詩である著者による語り下ろし怪談集『稲川淳二のすご〜く恐い話』シリーズ。本書は1995年から2002年までに発売された既刊五冊より厳選した15話を収録した、廉価版傑作選である。“首切り地蔵”にまつわる怨念を描いた『八王子怨霊地帯』、死と生の交差する現場を捉えた『病院裏の火葬場』など。

 傑作選というだけあって、質は安定している。どこかで聞いたような話ばかり、になるのはこの時期になるとあちこちに姿を現して怪談を披露していく著者であるゆえ仕方のないところだろう。ただ、同時期に刊行された『新 稲川淳二のすご〜く恐い話 窓を叩く女』の感想でも指摘したことだが、顔を見せ語り聴かせることを主なスタイルにしている著者の怪談をあまり推敲することなく文章に落としているために読みづらかったり意味が取りにくい箇所が認められるのが欠点だ。折角傑作選という体裁で出しているのだから、多少は調整するなりの配慮が欲しかった。

 税込300円という低価格で比較的粒の揃った怪談集が読めるのは有り難いが、しかしそのぶん本の作りは安っぽい。コンビニ中心の流通を狙っているせいだと思うが、カバーなしでやや質の落ちる紙を利用、更に文字組みも他と比較して大きめのリイド文庫判シリーズよりも更に大きく、画面が白っぽい。結局差し引き同程度、という印象を受けてしまうのだが……それがいいか悪いかは読み手の価値観次第だろう。どんな本でも一定期間は保存できるのが望ましい、と考える私にはちょっと脆い作りが難に思われる。各編一枚ずつイラストが挿入されているが、これもあちらこちらで発表された著者原作の漫画から引き抜いたものと思しく、効果を齎しているものもあれば、却って邪魔に感じられる場合もあった。

 保存よりも軽く読めてちょっと涼しい思いをしたい、という方には間違いなくお誂え向きの一冊である、が、継続して読んでもらうためにはもうちょっと体裁を考慮して欲しい。そうそう誰も彼もが昔のことを忘れてくれるわけではないのだから。

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