小娘オーバードライブ2

小娘オーバードライブ2 『小娘オーバードライブ2』

笹本祐一むっちりむうにい[イラスト]

判型:新書判

レーベル:SONORAMA NOVELS

版元:朝日ソノラマ

発行:2005年12月30日

isbn:4257010770

本体価格:1000円

商品ページ:[bk1amazon]

 1994年から1998年にかけて角川スニーカー文庫で発表されていたシリーズの復刻第2巻。

 時給500円で“正義の味方”のアルバイトをはじめた女子高生・坂井美帆だったが、どちらかというと雇用主である小石川のぼるの研究所から思い出したように出来するトラブル解消にこき使われている、慌ただしいような平和なような毎日を過ごしている。しかし平穏はある日突然、のぼるのもとに齎された“お見合い話”によって打ち破られた。かねてからのぼるに想いを寄せるお嬢様・綾乃小路麗香の動揺は凄まじかったが、のぼるのもとに居候している戦闘のプロ・今和野京志郎の関心は見合い相手である李純麗の目的に向けられる――やたらと戦闘能力に長け、玄人には一目でそれとわかるほど重武装したクルーザーを所有する純麗が、いったいどんな目的でのぼるとのお見合いを画策したのか? やがてのぼるたちは、純麗らの真の狙いを知ることとなる……

 恐らくまったくの書き下ろしとなる第六話は前巻からの延長、つまり“正義の味方”としての活躍というよりは、魔窟と化した小石川研究所での“日常”を描いた話となっているので、特に取り沙汰はしない。

 本題となる第七話であるが――正直に言って、中盤くらいまではあまり面白いとは感じなかった。小石川のぼるのもとに持ち込まれたお見合い話をめぐって、麗香の恋するお嬢様らしい弾けすぎた動揺ぶりと、お見合いに並行して進行する“陰謀”を追う京志郎の姿が中心となっているが、いかんせん話が遅々として進まず、牽引力に欠く。第七話のサブタイトルが『誰も知らない戦争』であるだけに、相手方の目的ははなから察せられているというのに、そこにすらなかなか話が辿り着かないものだから、正直苛々させられっぱなしなのである。

 もうひとつ、というよりこのエピソードにおける最大の問題点は、『小娘オーバードライブ』というタイトルであるにも拘わらず、焦点であるはずの美帆にほとんど活躍の場が設けられていないことだ。動いているのは基本的に麗香と京志郎、それに敵方だけ。のぼるでさえ積極的に動いている印象はなく、美帆に至ってはほとんどお茶くみに徹している感しかない。随所で引っかき回してくれるならまだしも、発言も少ないので、自分がいったい何の話を読んでいるのか途中解らなくなることもしばしばだった。

 無論、クライマックスではちゃんと活躍する。なまじ専門知識がないからこその無鉄砲な行動がそのまま事態解決の鍵となっているあたりで強烈なカタルシスを齎してもくれるが、いかんせん全体に対する活躍の分量が少なすぎるので、題名に見合っているとは言い難い。終始ニュートラルな位置づけにあるからこそ彼女の行動に痛快さが生まれていることも否定しないが、いちおうタイトルロールにも等しい存在なのだから、もっと全篇にわたって存在感を示してもらわないと、やはり読む方としては満足しがたい。

 ヒロインと周囲の登場人物とのあいだに恋愛関係が存在せず、親愛感はあるけれどどこか乾いた部分も残していることが独特な味わいとなっていることも事実ながら、本編のように美帆の露出が非常識なほど下がってしまうと、そのドライさも考えものだ、という気がしてくる。とりあえず復刻はこれで終了したこととなるが、もし今後シリーズの新作を発表する予定があるなら、こんな長尺のエピソードではなく、前巻のように1話100ページ程度の尺に収めたほうが無難ではないかと思う。そうでないと、いよいよ誰が主役なのか解らなくなる。

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