『スティング松岡 危機一髪!』

 なんだそりゃ、と殆どの方は思われるでしょう。昨晩、25時30分から1時間という実に奇妙な時間帯に放送されていたスペシャル・ドラマです。企画・主演が内村光良で、ドラマの構造とコントのスタイルとを融合させたという触れ込みの変わり種。何気なく年末年始の特番を調べていて発見したので、鑑賞してみました。もともと話芸一本槍の芸人として好評を博していたのに、いまやすっかりテレビのリアクション芸人と化したスティング松岡。そんな彼が、間もなく総理選に打って出ようという代議士の娘との結婚を決意するが、初めての挨拶で大混乱となってしまい……という筋。

 もともと内村光良という芸人は、“作り込んだコント”というスタイルの継承者としての地力が備わっています。が、すっかり主流から外れてしまって、最近は中堅芸人中心の番組の司会とかばかりになってしまっていたのを寂しく思ってました。

 で、このドラマはまるでそういう自分自身の境遇を自ら皮肉って、原点を見つめ直そうとでもいうような仕上がり。同棲中のカップルのやたらと息の合った肉体芸に、複数の人物が絡みあって起きる妙なトラブル、そしてちゃんとカタルシスのある結末。ドラマとして構成がしっかりしているうえに、随所で笑いを取ることも忘れていないので、1時間とすっきりした尺ながら充分に楽しめました。こんな時間帯の作品なのに和久井映見神山繁鷲尾真知子火野正平田中要次と実にいいキャストが揃っているのも見所。

 このドラマのいいところは、ちゃんと“スティング松岡”という男の話芸が、芸として成立しているということ。回想でいちど、ラストでいちど披露するのですが、ちゃんと言葉でネタが成り立っていて、しかも設定を活かしたドラマ部分にとってのツボも押さえてある。

 深夜で終わらせておくには勿体ない、と感じる一方で、ゴールデンに持っていっても変にゴテゴテとするだけだったろうし、この辺がちょうどいい位置だったのかも。いずれにせよ観られたのは幸運でした。来年4月にはDVDも出るようですが、気が向いたら――というか覚えていたらどーぞご覧ください。

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