新 稲川淳二のすご〜く恐い話 異人館に棲む少女

新 稲川淳二のすご〜く恐い話 異人館に棲む少女 『新 稲川淳二のすご〜く恐い話 異人館に棲む少女』

稲川淳二

判型:文庫判

レーベル:リイド文庫

版元:リイド社

発行:平成19年6月17日

isbn:9784845832259

本体価格:552円

商品ページ:[bk1amazon]

 日本の夏の風物詩、稲川淳二の怪談本2007年度2冊目。投票によるベスト作品ばかり集めた『稲川淳二の怖い話 ザ・ベスト』が1冊目であったことを思うと、本書こそ今年最初の新作と言えるだろう。

 ……が、なんだかいつにも増して精彩を欠く出来である。自身の体験を多めにし、不確かな内容や因果で説明をつけようとする話を削ることで全体の信憑性を増す工夫をしているように感じられるのはいいことなのだが、その分明らかにネタの密度が薄くなっている。どこかで聞いたような話、新作と言い条、テレビなどでもう何度も披露して味わいの薄れた作品ばかりが並んでいる印象である。

 特に茨城にある工房での体験、宿坊での出来事などは確かに新しい出来事なのかも知れないがもうパターン化していて新味がないし、タクシーの運転手が体験した出来事は初めて聞いたときには衝撃は大きいものの、著者にとってお気に入りだからだろう、テレビなどで既に幾度か披露しているため新作という気がしない。文字媒体では初なのかも知れないが、それなりに工夫が欲しいものだ。

 既にいちど本人の語りで聞いたものを思い出したい、手許に留めておきたいという怪談初心者には手頃な本であるが、長年親しんでいる者ほど却って不満の多い内容であると思う。……まあ、もうそういう出来だということさえ承知で買っていたりするんですけど。

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