『北の夕鶴2/3の殺人』

 TVドラマ版吉敷竹史シリーズ第3弾は、まさかこんなに早く来るとは思っていなかったシリーズ最高傑作の登場です――尤も、ドラマとしては2年振りなので、順調とは言い難いんですが。飽きの早いテレビの世界で、こんな悠長なスパンでもちゃんと続けてくれていること自体が嬉しいとも言える。

 原作と比べると老けすぎな鹿賀丈史ながら、もう3作目ともなると充分にキャラクターが育っているので、違和感はない。内容的にも、このシリーズは基本的な話の流れと事件の構造は温存してくれているので、ほぼ不満なし。

 出来れば写真は使って欲しかったところですが、前作『灰の迷宮』にしても一番偶然性の高い部分は外していましたし、あれなしでも充分に成立しているのでいいでしょう。

 原作の良さである吉敷の懸命さは出ている一方で、行きすぎた部分に抑制がかかっているので、トリックの大仰さに対して作品全体が落ち着いた雰囲気になっているのも良し。ラストシーンで台詞が省かれていたのも、寧ろ心の交流が伝わってきていい感じでした。

 ……あー、久々に原作が読みたくなってきました。私が読んだときとは文庫版の装幀も変わっていることですし、買ってこようかなー。

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