“お寺で試写会”企画第2弾『花はどこへいった』at広尾・佑浩寺

 本日も映画鑑賞、但し昨日とは違った種類のイベント上映です。先頃公認ブロガーに加えていただいた映画情報サイト『シネトレ』で企画している、お寺で戦争に関係する映画を観て平和について想いを馳せよう、といった趣旨の試写会の第2弾に当選したので、普段は昼寝している時間帯に、いつもの某氏を引っ張り出して広尾まで。

 普段訪れることのない土地なので、ちゃんと地図も刷りだしていったのですが、道は実に解り易く迷う余地がありませんでした。ただ――寺の様式が予想外だった。“お寺で試写会”なんて言うからこっちは木造の堂宇で、仏像とか祭壇を脇にして、とか畳敷きの広間で座布団を敷いて粛々と鑑賞する状況を想像していたのですが、会場となる佑浩寺の看板がかかっていたのは実に近代的なビルディング。表に映画のポスターを掲げて立っていた係員に促されるまま、エレベーターで4階にあるホールに移動すると、いちおうお寺なので靴は脱ぐのですが、中はカーペットを敷いた会議室のような仕様で、座席はずらっと並んだパイプ椅子。壁際に仏画や仏像が並んでいなかったらとうていお寺とは思えないような環境でした。実際、昨今はこういう類の寺社仏閣も存在しているとは知っていたのですけれど、まさかこーいう“お寺”を前面に打ち出した企画で利用するとは思ってなかったわ。

 ともあれ、15時30分に趣旨と、今回の上映に使用したプロジェクター――ご家庭でも導入可能な金額らしい――の紹介などがあって、ようやく目玉である作品上映へ。本日の映画は、夫の死の遠因がベトナム戦争での枯葉剤散布にあると考えた女性が、現地で未だに被害に苦しむ人々の姿を捉えていったドキュメンタリー花はどこへいった』(SIGLO・配給)。出来はというと――申し訳ないけど駄目。夫が生前語らなかったベトナムでの体験を追う形で被害の現実を抽出していくでもなく、そこをきっかけと割り切って未だ国全体を覆う被害の実態を掘り下げていくでもなく、ただ出逢った枯葉剤の影響による障害児とその家族の様子とをさらっと撫でていくだけの、正直底の浅い作りです。狙っていることは解らないでもありませんが、それを掘り下げるためには素材が絶望的に足りない。この10倍は取材した上で70分程度の尺に纏めることが出来れば狙いは達成できたでしょうけれど、少ない素材を中途半端に洗練された編集の仕方をしているから余計にインパクトを損なっている。監督自らによると思しいナレーションも聞き取りづらく、正直お薦めできない出来でした。

 しかも、上映環境もお世辞にもいいとは言えない。上映システム自体はいいと思うのですけど、やはりこういう会議室のような部屋で、スクリーンの位置がどうしても低くなるというのに、パイプ椅子を何列も並べるのはあまり良くない。一般の映画館であればスクリーンの位置が椅子に座った目線より高くなる、或いは前方の座席の位置が目線より下になるので、前列の人の頭が邪魔になることは少なくなっていますが、しかしフラットな部屋にパイプ椅子ではどうしたって前の人の頭がスクリーンにかかってしまう。私はまだある程度鑑賞できましたが、同行した某氏は右側に表示された字幕がほとんど前に座った女性に妨害されてしまったそうです。お寺だから、というのではなく、こういう場所で上映するのにパイプ椅子は向かない。もともとお寺で上映することを喧伝していたのですから、割り切って座布団を並べて座らせてもらった方がよほどましでした。実際、よほど邪魔だったのでしょう、上映開始直後にパイプ椅子を離れて、横の方でカーペットに座って鑑賞していました。

 まがりなりにも映画関係のイベントを中心に企画している会社の主催なのですから、もうちょっと見やすい環境を整えるように工夫していただきたいものです。経験としては面白かったのですが、映画そのものも試写会のセッティングも評価は出来ません。

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