『薬師寺涼子の怪奇事件簿』ファイル05 表参道を這う蟲

 泉田は従妹の真奈という少女がいじめに遭っているらしい、泉田なら事情を話すと言っている、と請われて話を聞く……その場になぜか涼子までが加わっていた。真奈の事情は大したことがない、と判明した直後、青山ブロードウェイの内部で涼子が銃声を聞いた。闇に閉ざされた駐車場内で、一団が何かに襲われたようだったが、どうやら襲撃者は未だにここにいるらしい。一度撤退しようとした直後、ふたりの耳に、真奈の呼び声が響いた……

 原作は基本的に、人為的に召還された幻獣との戦いが主ですが、今回は少し変わったものが登場。でも、原作の世界観ならこういうのが出ても不思議ではないし、ちゃんと涼子の設定にも添っているので問題なしでした。

 話も、ハードボイルド調に流れて照準を見失った前回と比べると遥かにこのシリーズらしくできてます。原作では出ていた覚えのない泉田の幼い従妹が登場しますが、彼女の言動が結果的に涼子の泉田に対する恋心を、このシリーズらしい形で提示するのに成功していますから、これこそ理想的な脚色と言っていいのではないでしょうか。しかも涼子にいいところを持って行かれるだけではないのがうまい。

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