『ロスト・ルーム』第1話「鍵」/第2話「時計」

『ロスト・ルーム』

原題:“The Lost Room” / 監督:クレイグ・R・バクスリー、マイケル・W・ワトキンス / 脚本:ローラ・ハッカム、クリストファー・リオーネ、ポール・ウォークマン / 製作:ポール・カータ / 製作総指揮:リチャード・ヘイテム / 撮影監督:デヴィッド・コーネル / 美術:キース・ニーリィ / 編集:ソニー・バスキン、デヴィッド・クラブトゥリー / 衣装:ダニエル・J・レスター / 音楽:ロバート・J・クラル / 出演:ピーター・クラウス、ジュリアナ・マルグリース、ケヴィン・ポラック、エル・ファニング、ピーター・ジェイコブソン、デニス・クリストファー、エイプリル・グレース、クリス・バウアー / ライオンズ・ゲート製作

2006年アメリカ作品 / 上映時間:1時間26分(全6話中2話) / 日本語字幕:渡辺ひとみ

2008年10月13日WOWOWにてプレミア放送

公式サイト : http://www.wowow.co.jp/lostroom/

アキバシアターにて初見(2008/09/25) ※ブロガー試写会



[粗筋]

 刑事のジョー・ミラー(ピーター・クラウス)がこの奇妙な出来事に巻き込まれるきっかけは、ある事件の捜査に携わったことであった。質屋で発生したそれは、被害者がいずれも焼死するという凄惨な事件であったが、不思議なことにみな躰だけを焼かれ、着衣には異常がない。脱がせてから焼いたのか? と鑑識のマーティン・ルーバー(デニス・クリストファー)は茶化すが、ジョーは違和感を禁じ得ない。

 事件現場からは、質屋の従業員であったひとりの青年が行方をくらましていた。ジョーにとって旧知の人物であった彼を辛うじて捕まえ、事情を質すものの、彼は要領を得ないことを口にしたのち、一瞬の隙をついて逃走した――まるで、警察署から別の場所に瞬間移動したかのような、異様な状況で。

 そして、その青年がふたたびジョーの前に姿を現したのは、何とジョーの家のなかであった。銃弾を浴び息も絶え絶えの青年は、ジョーにひとつの鍵を託す。「この鍵は、あらゆる扉を開けることが出来る」およそ常識的な大人なら鼻で笑うような言葉だったが、ジョーは笑えなかった。何故なら、青年が現れたのは、クローゼットの扉だったのである。

 警察が引き上げたのち、ジョーは青年に託された鍵をクローゼットに使ってみた。開いた先にあったのは、見知らぬ安モーテルの一室。いちど部屋に入り、ふたたび扉を開けてみるとそこはなまた見知らぬ土地。モーテルに戻り、「家に帰る」と意識して鍵を使うと、そこはふたたびクローゼットの扉になっていた。

 どうやらこの鍵こそ、質屋での謎の殺人事件の原因であるらしい、というところまではすぐに察しのついたジョーだが、しかしその先にまでは思い至らなかった――鍵の秘めた力と、どれほど危険な者たちがそれを狙っていたのかを。

[感想]

 2006年にアメリカで製作されTV放映されたミニ・シリーズを、WOWOWでの放送に先駆けて冒頭2話のみ上映するイベントに当選し、鑑賞してきたものである。

 率直に言えば、作品の内容よりも“アキバシアター”という会場を目の当たりにしたいがために応募したために、公式サイトの記述をざっと眺めた程度の予備知識しかなく、取り立てて期待していたわけでもなかった。その程度のスタンスであったためか、想像以上に楽しめた。

 冒頭、鍵を巡る不思議なやり取りを除けば、基本的には事情を一切知らない刑事の視点で物語は綴られる。そうして少しずつ“鍵”と、それが使用者を導くモーテルの一室にまつわる謎を引き出していく一方で、刑事という第三者的な立場から次第に主人公が事態の核心に巻き込まれ、自ら行動せざるを得ない状況に追い込んでいく。

 このあいだに、“鍵”とモーテルの部屋に関する特殊なルールが明かされていくのだが、これはかなり入り組んだ代物で、ここで説明しようとするとそれだけでかなりの分量に達してしまう恐れがある。そんな複雑な設定を、決して観る側を混乱させることなく少しずつ紐解いていき、受け入れさせてしまう、構成の巧みさが出色だ。

 また、そうして提示されたルールを、きちんと物語のなかで活かしている点もいい。当たり前ではあるのだが、こういうシリーズもので提示される伏線はなかなか背景が解き明かされず、気づけばほったらかしになっていることも珍しくないなか、本篇は1話の中で何度もそのルールを活かした場面やサプライズが用意されているので、常にシリーズならではの面白さが味わえる。

 正直なところ、第2話までしか観ていない現時点では不安に感じるところもある。モーテルを軸とする“オブジェクト”の謎が解かれるか、第1話の最後で主人公である刑事にもたらされる災厄に納得のいく決着がつくか、そこに焦点を合わせて、経緯や必要な描写がどれほど活きていたか、最終的に判断してみるとグズグズになっている可能性もある。作品のなかで、モーテルに絡んだ“オブジェクト”は100点を下らない、という台詞があり、そこには6話というミニ・シリーズで収まらない発展を目論んでいたような痕跡も窺え、そこに色気を出しすぎていれば、とりあえずこの全6話では満足のいかない決着になる危険は否定できない。

 ただ、とりあえず冒頭2話を観た印象では、緊張感に富んだ良質のSFスリラーであり、更に続きを観たい、という気分にさせられる仕上がりになっているのは確かだ。日本での放送は6話一挙というかたちなので、祝日とはいえ気力や余裕が求められるように思うが、恐らく観始めたら理由がない限り止めることは出来ないだろう。そのくらいの魅力は確実に備わっている。

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