『水魑(みづち)の如き沈むもの』刊行記念トークセッション&サイン会。

 ジュンク堂新宿店の喫茶スペースにて催された、刀城言耶シリーズ最新作『水魑(みづち)の如き沈むもの』の発売を記念した、著者・三津田信三氏と評論家の杉江松恋氏によるトーク・セッション及びサイン会に参加してきました。

 主に三津田氏の執筆作法や、三津田作品とりわけ刀城シリーズの特徴である本格ミステリとホラーの融合についての話が多く出ていましたが、個人的にいちばん衝撃だったのは、三津田氏が「プロットは書けない」と堂々と仰言っていたこと。小さい頃に、タイトルや粗筋だけ考えるのが好きで、今もタイトルだけ先行したり――実際今日も、聞くとやたら魅力的なタイトルが幾つか出てました――作品を支えるワン・アイディアだけが出て来て、あとは書きながら細部を固める、というのが基本なんだそうです。現在は、『山魔の如き嗤うもの』の前に本来執筆するつもりだった題名の新作に着手しているとか。

 イベント最後のほうで、会場に配布したアンケートを回収、そこから杉江氏が面白そうな質問を選んで三津田氏に訊ねる、ということになりました。私が書いた質問は“実話怪談の著書を出す予定はないのでしょうか?”というものだったのですが、これを杉江氏が選んでくれた。三津田氏の回答は、どうせ出すなら小説の形式でやりたい、それも仕掛けがあって……という形で考えていくと、題名は『百怪の如き騙るもの』になる、でもそれだと刀城言耶シリーズでなければ無理で、しかもこれを書いたらどう考えても言耶シリーズ終わりだから……といった具合で、実話怪談を小説の形で違和感なく用いられるアイディアがなかなかないので着手できない、という事情とのこと。となると、三津田氏による実話怪談に触れられる機会はなかなかなさそうなのが残念なれど、しかし、『百怪の如き騙るもの』という魅力的なタイトルに、三津田氏も会場の観客も沸いていたので、私としては満足。

 会場を出たところで、久々の某氏にばったりと出くわしたのでしばらく立ち話をし、まだまだ作業が山積みなので、適当なところで離脱。イベントとしては短めでしたが、非常にいい気分転換になりました。さー作業だ作業だ。

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