『女子高生ミステリー・ナイト』

女子高生ミステリー・ナイト [DVD]

原題:“Nightmare at End of Hall” / 監督:ジョージ・メンデラック / 脚本:ノラ・ザッカーマン / 製作:ジェイミー・ゴーリング、リンジー・マカダム、キム・アーノット / 製作総指揮:ジョセフ・ロウラー、カーク・ショウ、スタントン・W・カメンズ / 撮影監督:アンソニー・メッチー / プロダクション・デザイナー:ジェームズ・ヘイゼル / 編集:クリストファー・A・スミス / 衣装:サブリナ・ホーリック / キャスティング:ディーン・E・フロンク、ジュディ・リー、ドナルド・ポール・パムリック、ローラ・ブルック・トップラス,CSA / 音楽:クリントン・ショーター / 出演:サラ・ルー、ジャクリーン・マッキネス・ウッド、カヴァン・スミス、ダンカン・レガー、フィリップ・グレンジャー、アンバー・ボリッキ、セバスチャン・ガッキ / インサイト・ライト・スタジオ製作 / 映像ソフト発売元:ALBATROSS FILM

2008年アメリカ作品 / 上映時間:1時間30分 / 日本語字幕:?

2009年7月24日DVD日本盤発売 [amazon]

DVDにて初見(2010/03/30)



[粗筋]

 ダグラス寮制高校で悲劇が起きた。卒業を3日後に控えた寮の物置で、生徒ジェーン(ジャクリーン・マッキネス・ウッド)が首を吊って発見されたのである。

 それから17年後。ジェーンの親友であったコートニー・スノー(サラ・ルー)は同窓会の席で、当時の担任教師であり、最近校長に就任したイアン・ラムジー(ダンカン・レガー)らから、教師兼寮長として勧誘される。ジェーンの悲劇を題材にした小説でセンセーショナルに小説家デビューを遂げたものの、その後新作を仕上げられていないコートニーはこの申し出を受けた。

 コートニーが受け持ちになったのはマクエヴォイ寮――奇しくも彼女が学生時代を過ごし、ジェーンが死んだ寮である。だが驚くべきことは他にもあった。寮は先日改装され、ジェーンの首吊り死体が発見された物置部屋は回想されて居室として使用されることになったという。そして、その部屋があてがわれたのはローレル(ジャクリーン・マッキネス・ウッド二役)という、ジェーンに瓜二つの少女であった。

 寮長としての生活が始まると、コートニーの身辺で奇妙な出来事が起きはじめる。さながら、ジェーンが蘇り、彼女を責め立てているように感じる状況に、コートニーは前々から患っていたパニック障害を悪化させてしまう……

[感想]

 心なしかいかがわしげな邦題だが、内容は幽霊譚の要素を絡めた、思いの外まともなミステリーである。変な期待を籠めて鑑賞すると拍子抜けするはずだ。

 それで胸がすくほど鮮やかな仕上がりであれば文句はないのだが、如何せん、語り口も出来映えも地味で、細かな要素を拾っていくとかなり有り体なので、尚更に失望する。

 序盤から何らかの超自然的な要素を匂わせながら、それが何を意味するのかを多く語っていないので、プロローグで描かれるジェーンの死という出来事の重みが感じられない。幽霊譚としての側面を強調したかったのなら、主人公であるコートニーにもっと彼女の存在を意識させるか、厭でもそうした出来事の背後に死んだ親友の面影を見てしまう、という描写をもっと盛り込むべきだっただろう。そうした描写の乏しさも問題だが、観客のほうで勝手に想像できるほど、具体的な現象の数も少ないのが余計にまずい。

 いちばん残念なのは、登場人物にいまいち味がないことだ。俳優たちは概ね好演している印象ながら、人物像に突出したところがないので、それぞれに印象に残らない。それなりにドラマがあるはずなのに、その重みを感じさせてくれないのだ。

 一連の出来事の背景自体、ありきたりながらミステリーとしていちおうは成立している。若干の不自然さはあるが、細かく描いていないので言い逃れも可能だから、ちゃんと解決篇にそれなりのカタルシスはある。ただそれにしても、謎解き映画や推理小説の愛好家にとっては珍しい趣向でもなく、早めに見抜くことは容易だし、描写の乏しさに歯痒さ、狡さを感じてしまうのは否めない。

 結局のところ、あらゆる部分で掘り下げの足りていない作品である。もっと細部を丁寧に詰め、伏線の数を増やし、人物像を深めて描いていれば、地味なりに良作に仕上がったかも、という可能性は窺えるが、だからといっていい点数をつけるのは難しい。

 テレビ映画として製作されたもののようなので、この出来映えも宜なるかな――と言いたいところだが、テレビ映画の予算や規模でも良作を撮ろうと思えば不可能ではないし、本篇の場合は恐らくあと少し練っていれば印象はがらっと変わっていた、と感じるだけに、もったいない作品と言うほかない。

関連作品:

怨霊の森

狐怪談

アナトミー

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