『デフロスト』

デフロスト [DVD]

原題:“The Thaw” / 監督:マーク・A・ルイス / 脚本:マーク・A・ルイス、マイケル・W・ルイス / 製作:トレント・カールソン、ロブ・ニールソン、メアリー・アン・ウォーターハウス / 製作総指揮:ブレーク・コーベット、スティーヴン・ヘギース、ショウン・ウィリアムソン / 共同製作:アンドリア・スプリング / 撮影監督:ジャン・キーサー,ASC,CSC / プロダクション・デザイナー:マイケル・ノーマン・ウォン / 編集:ロブ・ニールソン / 衣装:パトリシア・ハーグリーヴス / 視覚効果スーパーヴァイザー:ジェームズ・ティチェノー / 音響デザイン:ミゲル・ヌナス / キャスティング:ヘイディ・レヴィット,CSA、キャンディース・アルジンガ / 音楽:マイケル・ニールソン / 出演:ヴァル・キルマー、マーサ・マックアイサック、アーロン・アシュモア、カイル・シュミット、ステフ・ソング、ジョン・カランダー、アン・マリー・デルイス、ヴィヴ・リーコック / アナグラム・ピクチャーズ製作 / 映像ソフト発売元:日活

2009年アメリカ、カナダ合作 / 上映時間:1時間33分 / 日本語字幕:?

2010年1月15日DVD日本盤発売 [amazon]

DVDにて初見(2010/04/28)



[粗筋]

 極地観測の結果を環境保護運動プロパガンダにするべく研究を続けるデヴィッド・クルーペン博士(ヴァル・キルマー)は、助手たちと共に捕獲したホッキョクグマに、ある痕跡を発見する。

 数日後、彼らの基地に1機のヘリコプターが着陸した。搭乗していたのは操縦士のバート(ヴィヴ・リーコック)に、フィールドワークに同行の許された3人の学生、そしてクルーペン博士のひとり娘エヴリン(マーサ・マックアイサック)。

 だが基地は電源が落とされ、人の気配はなかった。見つかったのは、ラボに放置されていたホッキョクグマの死骸だけ。

 どうにか非常電源を恢復したあと、エヴリンは無線で父親たちと連絡を取ることに成功するが、クルーペン博士は「そこから決して出るな」と必死の様子で訴えるばかり。

 エヴリンも学生達も気づくよしはなかった――彼らは既に、溶解した大地から蘇ってきた脅威に晒されていたのだ……

[感想]

 サスペンスやオカルト、SF的な趣向のあるホラーで、社会派めいた題材を用いる作品がたまに登場する。堅苦しい考察がやもすると作品を無心で楽しめないものにしてしまうため否定的な向きもあるが、個人的には構わないと思う。きちんと娯楽性とのバランスを保つなり、題材の本質をわきまえているのなら、多少は主義主張がちらついてもいいだろう。

 だが、本篇のそれは、明らかな失敗だ。完全に、間違った使い方をしている。

 採り上げているのは地球温暖化問題である。北極の氷が溶けていった結果、危険な生命の封印が解かれてしまった……という趣旨だが、しかしよく考えて欲しい。温暖化の原因が何であるか、そこに人間の営みが絡んでいるか否かにはまだ議論の余地があるので一旦おくとしても、確実に言えるのは、仮に人為的な温暖化現象がなかったとしても、地球の温度は変わり、海岸線は大きく移動するものだ。その場合でも、本篇で登場した人々を、同じ脅威が襲う。

 温暖化がもたらした害として訴えるには、根拠が乏しいのだ。そこを考慮せず、安易に乗っかって話を進めているせいで、全体が説得力を失ってしまっている。

 その部分さえ補強できていれば、SF的ホラーとして本篇は決して不出来ではない。低予算だったことを随所に窺わせながら、ピンポイントで異様なモチーフを登場させ、あとは空気の醸成や役者の表情で仄めかす技を駆使して、恐怖やサスペンスを盛り上げる。広野に取り残され危機と隣り合わせにある人々の心理や言動も、ストレートではあるがうまく辿って起伏のある物語に仕立てており、終盤のひねりやクライマックスの混沌とした展開などはなかなか見応えがある――生憎、その終盤の流れが、軽率な理解で成立しているから、説得力を欠いているし、やもすると鬱陶しさを助長してしまうのが難点だが。

 仮に地球温暖化に関する描写にもっと配慮があったとしても、B級の域は出なかっただろう。しかしそれでも、限られた予算の枠内できっちり作られたSFホラーとして、もう少し多くの観客に評価されていたのではないか、と思う。だが、思慮の浅さのせいで、どっちつかずな出来になってしまった。勿体ない限りである。

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