『ブロンド少女は過激に美しく』公開初日特別上映&トークイベント

 公開が決まってからというもの、ひたすら今日が訪れるのを楽しみにしていました。マノエル・ド・オリヴェイラ監督の最新作ブロンド少女は過激に美しく』(フランス映画社・配給)の初日特別イベント付上映です。生憎の雨模様につき電車で日比谷まで向かうことになりましたが、正直今日はどっちでもいい。

 まずは本篇。……基本的にオリヴェイラ監督の作品なら何でも観る、出来は二の次、と思っているくらいなのですが、これは本当に良かった。洒脱で哀しくて、ゆったりとした語り口は健在ながら、尺の短さも幸いして牽引力が途切れない。これ、私が映画道楽にどっぷりと嵌って以降鑑賞したオリヴェイラ作品のなかでも、いちばん好きです。素晴らしい。同時上映に選ばれたゴダール監督の短篇も、主題がシンクロしていて巧い選択。

 続いては、ちょうど本篇の撮影時に100歳(!)の誕生日を迎えたオリヴェイラ監督に密着取材を行った日本のドキュメンタリー番組の抜粋を上映。本当にごく一部ながら、ずっと表沙汰にされていなかったオリヴェイラ監督の撮影風景を窺い知ることの出来たのは非常に嬉しい。世界中からファンの集まった誕生日パーティでは、100本のローソクをひと息でこそないもののちゃんと吹き消し、理路整然とコメントして、翌日にはほぼ1日撮影を行っている。しかも現場では自ら動いてみて俳優に演技をつけており、矍鑠としている、などという表現では生易しいぐらいに気力が漲っている。本当に驚きに満ちた映像でした。

 最後に、日大芸術学部教授・古賀太氏と、先に上映したドキュメンタリーの演出を担当した小林三旅氏のトークショー。小林氏の証言で、映像だけでは解らなかったオリヴェイラ監督の演出スタイルや、その人柄が明かされていきます。家族的な空気の中での撮影を好む監督のために基本取材はシャットアウト、小林氏もオリヴェイラ監督からロケ地を教えてもらえたので、現場に入ってくるまでは間近で撮影できたものの、いざ映画の撮影が始まると止められ、しかしロケであることを幸いと、遠くから撮影して事後承諾という形で許可をもらったのだとか。撮影を止めた映画のプロデューサーにも、オリヴェイラ監督にも気に入ってもらえたので無事に日の目を見ることが出来たようですが、まあ危ない橋を渡ること。他にも、小津安二郎生誕100周年記念イベントで来日した際の振る舞いや、本篇の主演女優が語るオリヴェイラ監督の意外な演出スタイルなど、10分程度ながら実に聴き応えのあるトークショーとなってました。

 もっと時間を取るものかと思っていましたが、いざ終わってみると映画を含めて2時間足らず。しかしオリヴェイラ監督のファンとしてはひたすら至福のひとときでありました。ますますオリヴェイラ監督が好きになった気がします。102歳の誕生日に届ける、という趣旨で配られていたポストカード、本当にメッセージ書いて送ってしまいそうだ。

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