14回目の、そして今年最後の午前十時の映画祭。

 もはや毎週恒例の愉しみ兼運動となった、自転車での午前十時の映画祭詣で、これが今年最後となります。だんだん道にも慣れてきて、坂を登る以外はほとんど苦にならなくなってきました。六本木がそんなに遠く感じない。

 今週の作品は、『第三の男』のキャロル・リード監督の遺作でありながら、日本でも本国イギリスでも映像ソフト化が為されず、この午前十時の映画祭での上映がきっかけでソフト化が実現したという、ユニークな来歴の作品であり、ある夫婦のすれ違いを不思議なユーモアで彩ったコメディフォロー・ミー』(Uni×CIC・配給)

 amazonかどこかの評で、「これを嫌いという人に会ったことがない」といった表現があり、ソフト化がされていなかったという事実からも非常に気になっていた作品でした。なるほど、これは嫌いになれる人はちょっと珍しい。観終わったあとで、自分でも驚くほど優しい気分になれます。

 残念だったのは、上映開始15分ぐらいからしばらく、音の位相が乱れたこと。人物の声がまるで観客の周囲をぐるぐる回転しているかのように動き、観ていて非常に落ち着かない。しばらくして元に戻り、終盤は正常の状態で鑑賞出来ましたが、気になったのでインフォメーションで問い質してみた。

 他にも気になった方がいたようで、私のあとからインフォメーションにやって来た女性は、既に発売されているDVDでも鑑賞したそうですが、やはり問題はなかったとのこと。やがて現れたマネージャーの方が、スクリーンのほうで検証をしてみるので付き合って欲しい、と仰言るため戻ってみれば、そこでも別の男性が事情を確認していた。

 如何せん、本篇を巻き戻して上映は出来ず、ドルビーのロゴを利用してチェックしたのですが、そもそも上映終盤では正常に戻っていたので、他のフィルムを使ったところで現象が再現出来るはずもない。話を聞くと、映画はモノラルで収録されているため、そもそも意図してあんな現象が起きることはなさそうなので、恐らく機器の一時的なトラブルだったのでしょう。明日以降観に来る人のために注意を、とお願いして、その場は引き下がりました。

 ……しかし、普段の私なら怒っていても不思議のない成り行きだったのに、終始穏やかに話せたのは、映画の内容に随分影響されたせいでしょう。この映画、精神安定剤代わりに使えそうです。

 鑑賞後は毎度の如くうどん屋で昼食を摂り、帰りに来年最初に鑑賞する映画のチケットを押さえてきました――新年1本目としては重すぎる作品の気がするのですが、他の候補は事情あって当日でないと押さえられないし、観ておきたい作品であるのに変わりはないので。

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