『パラノーマル・アクティビティ2』

『パラノーマル・アクティビティ2』

原題:“Paranormal Activity 2” / 監督:トッド・ウィリアムズ / オーレン・ペリ監督『パラノーマル・アクティビティ』に基づく / 原案:マイケル・R・ペリー / 脚本:マイケル・R・ペリー、クリストファー・B・ランドン、トム・パブスト / 製作:ジェイソン・ブラムオーレン・ペリ / 製作総指揮:アキヴァ・ゴールズマン、スティーヴン・シュナイダー / 撮影監督:マイケル・シモンズ / プロダクション・デザイナー:ジェニファー・スペンス / 編集:グレゴリー・プロトキン / 衣装:クリスティン・M・バーク / 出演:デヴィッド・ビーレンド、ブライアン・ボーランドモリー・イフレイム、ケイティ・フェザーストーン、ミカ・スロート、セス・ギンズバーグ、スプラグ・グレイデン、ウィリアム・ジャン・プリエト、ジャクソン・グゼニア・プリエト、ヴィヴィス・コルテス、パーパー・ゼリンスキー / 配給:Paramount Japan

2010年アメリカ作品 / 上映時間:1時間31分 / 日本語字幕:川又勝利

2011年2月11日日本公開

公式サイト : http://www.paranormal2.jp/

TOHOシネマズ日劇にて初見(2011/02/11)



[粗筋]

 2006年。クリスティ・レイ(スプラグ・グレイデン)が生まれたばかりの我が子ハンターと共に、夫ダニエル(ブライアン・ボーランド)と義理の娘アリ(モリー・イフレイム)の待つ我が家へと帰ってきた。家族が互いを撮影しあい、喜びを捉えたその映像は、だが次の場面で突如、異変を記録するものに変わる。

 夏のある日、一家が出かけているあいだに、家の中が何者かによって激しく荒らされていたのだ。テーブルはひっくり返され、テレビは壊され……しかし、どういうわけか貴重品が盗難にあった形跡はない。気味悪がる家族のために、ダニエルは専門家を呼び、家の各所に監視カメラを取り付けさせた。

 監視カメラの記録が始まっているのは、2006年の8月6日。それは、クリスティの姉ケイティ(ケイティ・フェザーストーン)の恋人ミカ(ミカ・スロート)が殺害される、ちょうど60日前のことだった……

[感想]

 僅かな製作費で撮影され、当初少数の小屋でレイトショーのみ上映されていたところ、口コミでその怖さが喧伝され、全世界で記録的な大ヒットを遂げた話題作『パラノーマル・アクティビティ』の正式な続篇である。

 海外に限らず、こういう形でヒットしたホラー映画の続篇が作られるのはほぼお約束のようなものだが、全般にあまり成功した例を聞かない。前作から抽出するべき要素を間違ったり、縮小再生産にしかならないことが多いせいだが、本篇はそういう意味では、なかなか優秀な仕上がりである。

 並行して製作された日本独自の続篇『パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT』は、1作目の怪奇現象をそのまま応用して、更に恐怖を強めるように工夫を凝らしていたが、本篇はオリジナルの備えていた方向性を敷衍し、新たなシチュエーションや表現の想像に尽力している。

 特に感心したのは、時間軸を前作よりも少し遡ることで、意外な繋がりを明らかにしていることだ。粗筋に記した、ミカの殺害される60日前、という表現は実際に作中でテロップとして示されている事実だし、直後にはまだ本格的に“超常現象”に悩まされる前のケイティの姿が登場している。じわじわと起こり始める怪奇現象は、本篇で初めてこのシリーズに触れた人にも恐怖をもたらすが、前作を観た上だと、いったいどのようにあの出来事に繋がっていくのか、という興味が湧き起こるように仕組んであるのだ。そのあたりはよく考えた痕跡が窺われ、好感が持てる。

 ただ、提示された映像を素直に受け入れるような観客は普通に怖がることが出来るだろうが、しかし、それがどんなシチュエーションで撮影されたいたのか、どんな素材が残っているのか、という点にまで気が回ってしまうような人間が鑑賞すると、本篇にはどうしても引っ掛かる点がある。

 前作の、ハンディカメラひとつによる映像と異なり、本篇はハンディカメラ以外にも防犯目的で設置された6台のカメラの映像が用いられている。当然、そこに様々な怪奇現象が記録されることとなるのだが、本篇を観ていると、どうも肝心な部分を恣意的に省いているのではないか、という疑念を抱かされるのだ。

 例えば、監視カメラは玄関ホールの内側と玄関の外、来訪者をチェック出来るような位置にそれぞれに1台ずつ設置されている。中盤、ダニエルとクリスティが久々に夫婦だけで食事に出かけ、アリがハンターの面倒を見がてら留守を任されるくだりがあり、そこでいつの間にかドアが開いている、という部分があるのだが、普通中にも外にも監視カメラがあり、それを記録しているのであれば、問題の時刻の映像を確認するのが普通の感覚だろう。だが作中、そこにはまったく言及していないのである。直後、アリが様子を見るために外に出ると、勝手に扉が閉まってしまう、という部分には触れ、父親は「風のせいだ」と強弁するが、しかしそこに拘泥するのなら、いったい誰が開けっぱなしにしたのか、という点を検証するのが自然ではないか、と思う。

 この流れから感じるのは、製作者側のイージーミスでなければ、編集段階でそこがカッとされたのではないか、という疑問だ。もし演出意図にそこが組み込まれているのでなければ、ここは何らかの形で、観客が覚えるかも知れない疑問を解消すべきだったと思われる。もしその疑念を更なる恐怖や不可解さとして演出するつもりでいたのなら、終盤で言及があって然るべきだが、それすらないことを思うと、どちらかと言えば製作者の配慮不足だったと考えられる。

 本作は既に続篇の、2011年秋の全世界同時公開が決定しているそうで、或いはこのあたりの疑問符は次作以降で解消しよう、という心積もりがあるのかも知れない。しかし、なまじ怪奇現象の膨らませ方が好感触であり、物語的には本篇で一区切りをつけていることも評価出来るだけに、そこだけ大きく姿勢にブレが生じているのが惜しまれてならない。

 また、観終わったところで、それぞれの怪奇現象にいったいどんな意図があったのか、今ひとつ意味不明のままなのも気にかかる――とはいえ、この点は実は前作にも存在した欠点であり、そこを敢えて別の論理で補強したりせず、意味不明のまま広げていったことは、むしろ評価すべきところだろう。前作を愛し、本篇を鑑賞するために劇場まで足を運ぶような人は、こういう不可解さを好んだのだろう、と判断したことが窺えるからだ。

 とまあ、色々と茶々を入れることも難しくはないが、少なくとも前作の精神は完璧に受け継いでおり、その意味ではやはり理想的な“続篇”と言っていい。従って、前作がまったく評価出来なかったのなら観る必要はないし、逆にお気に入りだったのなら、その創作姿勢がどのように受け継がれたのか確かめるために劇場に足を運ぶだけの価値はあるだろう。もし期待した通りだったのなら、残った疑問の答は、次作まで待てばいい。

 ――斯様に、難点を挙げつつも基本的に好印象を受けた本篇だが、ひとつ、どうしても残念な点がある。

 前述の通り、本篇には日本独自で製作された、もうひとつの続篇が存在する。スタッフもキャストも日本人に絞られているが、きちんとオリジナルの監督オーレン・ペリのチェックを受け、承認も取った正式な続篇として公開されたのだが、気になるのは、本篇のなかに、日本版のある設定を根本的に否定しかねない表現があることだ。

 もし日本側がきちんとしたシナリオを提供しなかったために起きた齟齬であれば日本版のスタッフの失態だが、公開された作品の設定を完全な状態で届けていたのにこうした齟齬があるとすれば、それはオーレン・ペリ監督はじめ本篇のスタッフの目配りが働いていないことを証明してしまう。すなわち、上で掲げたミスが、本当にただのイージーミスであった可能性を示唆してしまうのだ。

『SAW』シリーズのように、前作にあった矛盾や軽率な描写を逆手に取って、続篇で意外性の演出に役立ててしまう、という方法もないではない。『パラノーマル・アクティビティ3』のスタッフには、そうしたフォローを期待したいところだが……果たして?

関連作品:

パラノーマル・アクティビティ

パラノーマル・アクティビティ第2章 TOKYO NIGHT

コメント

タイトルとURLをコピーしました