『ほんとにあった!呪いのビデオ リング編』

呪いのビデオ パーフェクトBOX3 [DVD]

構成、演出、撮影&編集:近藤太、坂本一雪 / 演出補:横田直幸 / 音響効果:三宅洋 / 再現映像出演:刈込和弘、平林康世、出口泉実、福里沙耶香 / 監修&ナレーション:中村義洋 / レポーター:北川さおり / 映像ソフト発売元:BROADWAY

2002年日本作品 / 上映時間:1時間25分

2003年1月24日映像ソフト発売

2007年8月3日映像ソフト最新盤発売 [パーフェクトDVD-BOX3:amazon]

DVD Videoにて初見(2011/05/10)



[粗筋]

 視聴者から寄せられる怪奇な映像と、その背景を詳細に取材するドキュメンタリー・シリーズ『ほんとにあった!呪いのビデオ』。

 その製作委員会に、最近、奇妙な共通点のあるビデオが複数寄せられていた。映像自体は何気ない日常のひとコマを撮したものだが、その映像の途中に、男のものらしき不自然な声が記録されているのだ。声は「消えろ」と言っているように聞こえる。そして、その映像に写った人物のうちひとりが、例外なく謎の自殺を遂げているのである。しかも、撮影された日時はすべて一緒だった。

 やがて、まったく同じ現象を捉えながら、犠牲者が出ていない、という投稿が寄せられ、取材班は投稿者の元へと赴く。投稿者の下川智之(仮名)は父親・正幸(仮名)が別荘を交う予定だという土地に下見に行った様子を撮影したのだが、その映像にくだんの声が記録されていたのである。

 取材班は下川家の人々に、一連の映像に絡んで死者が出ている、という事実を告げることに躊躇するが、後日、投稿者のひとりから、映像に生じたノイズに、奇妙な現象が確認された、という連絡が入り、それもすべての投稿映像に共通していることを確認すると、意を決して下川家に報告に向かう。

 だが、下川家の反応は、取材班にとって予想外のものだった……

[感想]

 本篇は劇場公開されたものではない。だが、制作時期といいその方向性といい、のちに制作された『ほんとにあった!呪いのビデオ』劇場版2作品のプロトタイプ的な位置づけにあるという印象を持ったので、少しだけ詳しい感想を残しておこうと思う。

『ほんとにあった!呪いのビデオ』は、不可解な事象を映しだしたビデオを、ものによってはその背後事情を取材した映像も含めて紹介する怪奇ドキュメンタリーの先駆とも言えるシリーズである。2011年現在まで年に3本から4本くらいのペースでリリースされており、レンタルショップでずっと棚を賑わせている人気作だ。

 通常は数本の投稿映像を紹介することで成り立っているが、本篇はまったく同じ傾向のビデオが立て続けに寄せられる、という不可解な状況をきっかけに、その関連性を探る、という経緯が綴られている。問題のビデオは、直接のインタビューに答えた関係者があるものに限り長めで紹介しているが、他のものは焦点となる部分を引用しているのみだ。そのため、このシリーズ従来の物量を期待していると不満を覚えるだろう。

 本篇の興味の中心は、そうした異様なビデオを撮影してしまった関係者の反応と、その周囲に蠢く怪しい影を追うことに絞られている。当事者の心情を充分に察することが出来ないまま漫然と見ていると、ただ右往左往しているだけで面白くも何ともない、と感じるだろうが、その右往左往の理不尽ぶり、反応が明らかに常軌を逸していることに気がつくと、染み出すような不気味さがある。

 中盤からは、唯一被害者を出していない下川家の人々とのやり取り、彼らの周辺に蠢く影を追うことに話が絞られていくのだが、最初のうちはごく平凡な家族、という雰囲気だった彼らが、下川家の立場からすると興味本位に映る取材班の行動を、ごく常識的に非難していたかと思うと、取材班を無視して強硬な単独行動に及んだり、カメラを前にしているとは思えない振る舞いをしたりする。見ようによっては最初からどこか歯車が狂っていたかのように感じられるその行動を辿るさまは、一見従来のシリーズ作品と異なっていても、やはり方向性は同じなのだ。

 ただそれでも、もっと掘り下げようがあったところを、あのタイミングで打ち切ってしまったのには不満が残る。原因を完璧に探ることは出来なくても、一挙に集まったビデオの共通項を手懸かりに調査の網を広げることは可能だっただろうし、終盤で辿り着いた場所についてもその背景を仔細に調べるべきではなかったか。

 ……とはいえ、基本的にそれほど調査能力に恵まれた取材班ではないようだし、本来のシリーズで扱う映像の調査もあとからあとから溜まっていくわけであるから、終盤の経緯を思えばここが限界だったかも知れない。そういうところまで考慮すれば、充分に仕事を果たした作品と言えるのだが、翻ってシリーズ本篇にある程度親しんでいないと、ただただ納得のいかない、どこが怖いのか、どこが不気味なのか理解もしづらい出来映えである。そうした反省が、単品での完成度を高めた劇場版に繋がっていった、と捉えると、興味深い作品でもあるのだが。

関連作品:

ほんとにあった!呪いのビデオ THE MOVIE

ほんとにあった!呪いのビデオ THE MOVIE2

呪霊 THE MOVIE 黒呪霊

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