『男と女』

『男と女』 男と女 特別版 [DVD]

原題:“Un Homme et une Femme” / 監督&製作:クロード・ルルーシュ / 脚本:ピエール・ユイッテルヘーベンクロード・ルルーシュ / 撮影監督:クロード・ルルーシュ、パトリス・プージェ / 編集:クロード・バロア / 音楽:フランシス・レイ / 出演:アヌーク・エーメ、ジャン・ルイ・トランティニャン、ピエール・バルーヴァレリー・ラグランジェ、アントワーヌ・シレ、スアド・アミドゥ / 配給:日本ユナイテッドアーティスツ / 映像ソフト発売元:Warner Home Video

1966年フランス作品 / 上映時間:1時間43分 / 日本語字幕:古田由紀子

1966年10月15日日本公開

2010年4月21日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

第1回午前十時の映画祭(2010/02/06〜2011/01/21開催)上映作品

第2回午前十時の映画祭(2011/02/05〜2012/01/20開催)《Series1 赤の50本》上映作品

TOHOシネマズみゆき座にて初見(2011/05/13)



[粗筋]

 ジャン=ルイ(ジャン・ルイ・トランティニャン)とアンヌ(アヌーク・エーメ)が初めて出逢ったのは、それぞれの子供が通う寄宿学校の前であった。パリから寄宿学校までの移動に利用している電車が止まってしまい、ちょうど息子のアントワーヌ(アントワーヌ・シレ)を送り届けた直後だったジャン=ルイを学校の教師が呼び止めて、送って貰えないかと提案したのだ。

 道中、ジャン=ルイに問われるまま、アンヌは夫ピエール(ピエール・バルー)の人となりを語る。スタントマンのような仕事をしている彼と、記録係を担当するアンヌは映画の撮影現場で知り合って結婚、以後も常にともに働いていた。ブラジルを訪れて以来サンバを愛するようになったピエールは、だが撮影中の事故により命を落としていたのだ……

 ジャン=ルイもまた、妻のヴァレリー(ヴァレリー・ラグランジェ)を亡くしていた。次の日曜日、寄宿学校まで案内する、と提案し、約束通りアンヌを迎えに来たジャン=ルイは、それぞれの息子を交えて戯れたあと、帰り道で事情を語る。レーサーである彼は、耐久レースの最中に意識不明の重体に陥り、動揺し精神に変調を来したヴァレリーは、自ら命を絶ってしまったのだ。

 不運な経緯で愛する者を失い、幼い我が子を寄宿学校に託し、仕事に励んでいたふたりは、自然と惹かれあっていくが、その心には未だ、愛する者の面影が刻まれていた……

[感想]

 映画の内容はまったく知らなくても、この映画のテーマ曲を聴けば「ああ、あれ!」と思う人が大部分ではないかと思う。そのくらい、本篇は音楽のイメージが強い。私自身そういう認識で、今回初めて内容を知った。

 実のところ、カンヌ映画祭パルム・ドールアカデミー賞外国語映画賞部門など、作品としても多くの賞に輝いているぐらいで、内容的にも完成度は極めて高い。

 話としてはシンプル――というより、骨子だけをざっくり語ろうとすると、どうしてこれが映画になるのか不思議なほどに簡潔だ。配偶者を失った男女が子供を介して知り合い、愛し合うという、それだけの話である。たとえば途中に妨害が入るわけでもなく、告白の瞬間に劇的な趣向が用意されているわけでもない。最後に少しだけひねりがある程度で、ほぼストレートな話だ。

 本篇はそんな単純明快な素材を、スタイリッシュな映像表現と、過去や心情表現を巧みに織りこんだ構成によって、変化に富んだ物語に変えている。ジャン=ルイ側の出来事は赤や青の色調を強める一方で、アンヌ側から見た出来事は普通の色調で描き、両者の違いを強調すると共に、交差した瞬間が直感的に解りやすいように描く。アンヌが死んだ夫を回想するシーンは、夫の趣味であったサンバの音楽を織りこんでミュージカル的に描き出し、いささか大袈裟に表現する一方で、ジャン=ルイの過去は極端なほど説明を省略し、その衝撃をじんわりと伝えてくる。技巧的だが気遣いが繊細で、自然とそのリズムに乗せられてしまう。

 もうひとつ、注目すべき点は、車というものが非常に印象的に用いられていることだ。ピエールとアンヌの初めての語らいは車中、ピエールの職場では緊張感のあるテスト走行の光景が描かれ、心情表現に車窓の風景を盛り込んだりと、その動きが静的な物語にリズムをもたらしている。

 映像表現やモチーフの選択が巧みなので、一般的なロマンスのような過剰に甘い台詞に頼ることなく、吟味され洗練された言葉で心情が綴られているのも出色だ。初めて互いに抱く愛情を自覚するシーンでさえさらりと描かれ、抵抗を感じない。恐らく、ラヴ・ロマンスと呼ばれる作品にいまひとつ馴染めないという人でも、本篇は受け付けやすいのではないかと思う。

 ……ただ、そう考えていくと、実のところ本篇の美点にして最大の瑕疵は、あまりにも印象的すぎるテーマ曲それ自体だ、という気もする。脚本も映像表現もきっちりと噛み合い、見事な高みに達しているものを、更に引き上げているのがこの音楽であるのは疑いないが、観終わったあと何よりも記憶に留まり、下手をすると“男と女”という語句を目にするたびに、“ダバダバダ、ダバダバダ”というスキャットを頭のなかで唱えてしまうほど刻みこまれてしまう、というのは、効果としては少々過剰だ。

 傑作であることは疑うべくもないが、恐らく今後も、作品の中身より音楽のほうが多くの人の心に残ってしまうだろう、という意味では不幸な作品である――まったく名を刻まない映画もあることを思えば、充分に幸運ではあるけれど。

関連作品:

シベールの日曜日

ファウンテン 永遠につづく愛

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