『続・猿の惑星』

続・猿の惑星 [Blu-ray]

原題:“Beneath the Planet of the Apes” / 原作:ピエール・ブール / 監督:テッド・ポスト / 原案:モート・エイブラハムズ、ポール・デーン / 脚本:ポール・デーン / 製作:アーサー・P・ジェイコブス / 製作補:モート・エイブラハムズ / 撮影監督:ミルトン・クラスナー,A.S.C. / 美術監督:ジャック・マーティン・スミス、ウィリアム・クレバー / 特殊撮影効果:L・B・アボット,A.S.C.、アート・クラックシャンク / 編集:マリオン・ロスマン / 衣装:モートン・ハック / 特殊メイクデザイン:ジョン・チェンバース / 音楽:レナード・ローゼンマン / 出演:ジェームズ・フランシスカス、キム・ハンター、モーリス・エヴァンス、リンダ・ハリソン、ポール・リチャーズ、ヴィクター・ブオノ、ジェームズ・グレゴリー、ジェフ・コーリィ、ナタリー・トランディ、トーマス・ゴメス、デヴィッド・ワトソン、ドン・ペドロ・コーリィ、トッド・アンドリュース、グレゴリー・シエラ、ルー・ワグナー、チャールトン・ヘストン / 配給&映像ソフト発売元:20世紀フォックス

1970年アメリカ作品 / 上映時間:1時間36分 / 日本語字幕:飯嶋永昭

1970年8月1日日本公開

2011年9月21日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon|DVDマルチBOX:amazon|コンプリート・ブルーレイBOX:amazon]

Blu-ray Discにて初見(2011/09/28)



[粗筋]

 宇宙飛行士のジェームズ・テイラー(チャールトン・ヘストン)が衝撃の事実を目の当たりにした直後、ほど近い場所に、別の宇宙船が不時着する。船長は着陸直後に亡くなり、乗員唯一の生き残りとなったジョン・ブレント(ジェームズ・フランシスカス)は、そこで馬に乗ったひとりの女性と遭遇する。

 口の利けない彼女がテイラーのドッグ・タグを提げていたことに気づいたブレントは、懸命に呼びかけ、会話の出来る者のもとへと案内するように懇願する。どうにか理解したらしい彼女は、ブレントを馬に乗せて、ある集落へと導く。

 だが、そこで彼が目にしたのは、言葉を話し文明を築いた猿たちの集落であった。しかも、折しも集会を開いていた彼らが口々に語るのは、食糧確保のために版図を広げること――侵略戦争の企てであった。聖典によって立ち入りを禁じられていた領域に踏み込み、そこに潜む者を制圧して、領土を広げようというのである。

 ブラントは最初に出逢った人間の女――ノヴァ(リンダ・ハリソン)の案内で、かつて囚われたテイラーを救った猿の科学者ジーラ(キム・ハンター)とコーネリアス(デヴィッド・ワトソン)の家を訪ねる。別れたあとのテイラーが向かった先を確認し、食糧を調達すると、ブラントはテイラーを救うために、ノヴァと共に禁止区域への侵入を試みた。

 いちどは捕えられたブラントだったが、ジーラの機転で難を逃れると、禁止区域への潜入に成功する。新たな追っ手に遭遇し、命からがら逃げこんだ洞窟で、ブラントは衝撃的なものを目撃する……

[感想]

猿の惑星』は理想的なSF映画だった。当時に可能な限りの視覚効果技術を詰めこんで作りだされた知的生物である猿たちの姿、社会諷刺を取り込んだ奥行きのある表現に、予備知識なしで鑑賞したときに激しいショックを齎すであろう結末。チャールトン・ヘストンというスター俳優を配することで、恐らく当時はまだまだ根強かったはずの、「SFはマイナーなもの」という意識を払拭する役割も果たしたはずで、映画史においても重要なターニング・ポイントになったのではなかろうか。

 従って、続篇の製作、という提案が為されることも、自然なことと思われる――が、1作目を観た者なら、「このあとどうやって続けるのか?」という疑問を抱くのも当然だろう。それほど1作目は完成され、間然する余地のないものだった。

 結論から言えば、第1作のテーマを掘り下げる語り口、その衝撃の結末に惹かれたような人は、観ない方が正しい。ただ、この先の予定がなく、とりあえず全力で取り組んだ続篇である、という捉え方をするなら、恐らくこれ以上にいい作り方もなかっただろう。

 前作に見られたような諷刺的な語り口、文明批判の側面はだいぶ薄れている。中盤を過ぎて登場する、第1作とは違った形の変化を遂げた人類の特徴、生活様式、信条などには若干、そうした批判的な視点も感じられるが、しかし掘り下げが非常に甘い。あの造形は、第1作以上に「どうしてそうなったのか」という点に自覚的でなければならなかったのに、明らかに思慮が足りない。あの描写だけだと、彼らがどのように生活を営んでいたのかさえ不明瞭なのだ。

 だが、それではどうしようもない愚作だったか? と問われると、そうは思わない。前述の通り、そもそも完成された第1作の続きを作ろうとして、同じテーマ、同種のサプライズを演出することを試みても失敗に終わることは想像に難くない。本篇はそれを承知で、テーマを掘り下げることよりも、この世界観を広げることを選択したと見られる。

 故に、猿たちが領土拡大を目論んで彼らの禁忌を犯そうとしたことも、別の形で変化を遂げた人類を出したことも、発想としては正しい。全体に活劇めいた内容に転じていることも、本篇のヴィジュアルや世界観はそちらのほうに適していたのだから、続篇映画としては間違っていない選択だろう――如何せん、その膨らました部分がもうひとつ徹底できていなかったために、かなり落ちた印象になってしまったのは惜しまれるが。

 そして、今となっては呆気に取られるしかないあの結末も、たぶん制作時点で更に続篇を想定する余裕がなかった、と考えれば間違いではない。本篇の世界観を突き詰めた先には、ああいう一種投げやりとも取れる締め括りより相応しいものはなかった。

 ……とは言ってみるものの、もし本篇制作時点でもう次を考えていたのだとしたら、その大胆さにはむしろ頭が下がる。前作以上に続きが想像しにくい結末は、翻って続篇の登場に驚きと話題性を提供するものとも言えるから、これもまったく間違った発想ではないのだ。

 とはいえ、そういう穿った見方を抜きにすれば、やはり前作の優れた語り口、結末をのみ高く評価するのなら、観る必要はない1本だろう。知性を持ち、人類を支配する地位に就いた猿が闊歩する世界、という大元の設定に魅力を感じるような人なら、ややその出来映えに首を傾げつつも、愉しめるはずだ。

関連作品:

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