『ポリス・ストーリー2/九龍の眼』

『ポリス・ストーリー2/九龍の眼』 ポリス・ストーリー2 九龍の眼 [Blu-ray]

原題:“警察故事續集” / 英題:“The Police Story Part II” / 監督&原案:ジャッキー・チェン / 脚本:エドワード・タン、ジャッキー・チェン / 製作:レイモンド・チョウ、レナード・ホー / 撮影監督:チョウ・イウゾウ、リー・ヤウトン / 音楽:マイケル・ライ / 出演:ジャッキー・チェンマギー・チャン、エミリー・チュウ、チュー・ヤン、ラム・コーホン、トン・ピョウ、ラウ・チンワン / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:Twin

1988年香港作品 / 上映時間:2時間1分 / 日本語字幕:?

1988年8月13日日本公開

2010年12月17日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray DiscamazonBlu-ray Disc Box Set:amazon]

大成龍祭2011上映作品

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2011/10/02)



[粗筋]

 チェン刑事(ジャッキー・チェン)の大活躍により、麻薬組織のボス・チュウ(チュー・ヤン)を逮捕することに成功したが、しかし同時に各所に甚大な損害も齎してしまった。署長(ラム・コーホン)の尽力で解雇は免れたが、チェン刑事は制服警官に降格、交通係に回されてしまう。

 だが、チュウたちはチェンに対する恨みを引きずり、彼を執拗につけ回した。チャンは危機感を覚え、恋人のメイ(マギー・チャン)を彼女の叔母の家に避難させるが、チュウたちはそこにも出没、激昂したチェンはレストランで乱闘沙汰を起こし、ふたたび損害を齎してしまう。署長に警察官としての辛抱のなさを咎められたチェンは、遂に辞表を叩きつけた。

 情熱を捧げていた仕事を捨てたことで気落ちするチェンだったが、長いことほったらかしにしていた恋人への償いとして、しばらくのあいだ海外旅行に出かけることを決める。旅行会社に赴き、申込をしたその帰り、チェンは血相を変えた同僚と遭遇した。旅行会社の入ったビルに、爆破予告の電話が入った、というのである。未だ半信半疑の同僚やビルの関係者を、チェンは急ぎ説得して、客も従業員もすべて避難させた。遅れて駆けつけた署長らが「何もなければ責任問題になる」と戦々恐々とするその目前で、ビルは火を噴くのだった。

 警察の上層部は所轄の手際の良さを賞賛し、爆破犯の捜査も署長らに一任する。しかし、体よく押しつけられたことを察した署長たちは頭を抱え、けっきょくチェンを呼び戻すことを決めた。この厄介な事態に対処できるのは、スタンドプレイも多いが刑事として有能なチェンしかいない――

[感想]

 実は初期のジャッキー・チェンは、今にして思うとあまりシリーズ物を手懸けていなかった。日本で公開される際は『〜拳』で統一されていた作品群も、それぞれはリンクしていなかったし、当初『ヤング・マスター/師弟出馬』の続篇になるはずだった『ドラゴンロード』も実質的には別物だった。『ドラゴンロード』については、当時のジャッキーが作りたい内容、方向性こそ大事で、製作している途中に変更があればシリーズから切り離すことも厭わなかったために起きた変化だったようだが、何にしても無理にシリーズ化することに当初は固執していなかった節がある。

 それが初めて『プロジェクトA2/史上最大の標的』が正式な続篇として発表されると、ほどなく本篇が製作された。人気が最高潮に達して守りに入った、という嫌味な見方も出来るし、それも多少はあるような気がするが、それ以上に、下手に設定をこねくり回して無理な物語を構築するよりは、完成されたキャラクターと舞台のうえで新しい物語を築いた方が建設的である、と気づいたのではなかろうか。このあとにも『サンダーアーム/龍兄虎弟』の続篇『プロジェクト・イーグル』を製作しているし、ハリウッドでの活躍が始まった以降も『ラッシュアワー』や『シャンハイ・ヌーン』の続篇を繰りだしている。“アクション映画”という括りは一緒でも、だからこそキャラクターや舞台のヴァリエーションが絞られてしまうだけに、このジャンル中心で活躍する俳優としては選ばざるを得なかった道でもあるのだろう。

 しかし、既に充分に完成され、練られた世界で描かれる事件、アクションの数々が、その個性を理解している監督のもとであれば、確実に魅力を発揮できるものだ。本篇は特に前作に続いてジャッキー本人が監督と主演を兼任しており、そういう意味では期待通りの愉しさが横溢している。

 とはいえ、ストーリー的に見劣りする出来映えになってしまっているのは否めない。前作も、筋としては単純明快ながら、クライマックスでジャッキーが示す“怒りの鉄拳”に説得力を付与するプロット、そこに法廷を舞台としたコメディを組み込んで、ジャッキーらしさに独自性まで感じさせる内容となっていたが、本篇は生憎、それを越えていない。

 最大の問題点は、前半と後半で本筋が変わってしまっていることだろう。序盤では、前作の怨みを晴らそうとする犯罪組織がチェン刑事とその周囲の人々を振り回すが、中盤以降は一転して、連続爆破脅迫事件が中心になっていく。旧作の悪党たちは一気に行動が尻すぼみになってしまい、いちおう顔を出すがコメディ担当のようになるのが、どうにも消化不良の印象を与える。

 爆破犯たちの言動は非常に特徴的で、なかなか掘り下げ甲斐のあるものだったはずが、それをコメディか、終盤のちょっとした驚きに奉仕するだけにしか役立てていないのも不満だ。恐らくジャッキー自身もそう感じていたのではなかろうか、のちに製作された『香港国際警察 NEW POLICE STORY』に登場する犯人グループの価値観は、本篇に通じるものがあり、改めて掘り下げたような印象を受ける。

 だがそれでも、全体を通してどうしようもなく物足りない、とまで感じないのは、前作で築かれたキャラクター、世界観をきちんと踏まえたうえで、アクションやユーモアを構成しているからだ。前作では当初、もうひとりの憎まれ役として存在感を発揮しながらも、最後に粋な振る舞いを示した署長は、その人物像を押さえた上でコメディにより多大な貢献をしており、チェン刑事の上司とともにいい味を醸している。

 掘っ建て小屋の密集した村を壊滅させ、デパートに大打撃を与えた破天荒なアクションも、さすがに2階建てバスに傘でぶら下がったり、デパートの電飾を滑り降りる、という強烈なインパクトこそ生み出せなかったものの、きちんと新たな工夫を施したうえで再現しているのはさすがだ。特にクライマックス、倉庫を舞台にしたいつもながら立体的なアクションのなかに、強烈な癇癪玉のような武器を用いてユニークな見せ場を作ったり、犯人役に聾唖の人物がいるが故の一風変わった駆け引きを採り入れたり、と見所には欠かない。いささか唐突とは言い条、あのラストシーンの迫力も逸品だ。

 なまじ前作が大傑作であるだけに、「この程度か」「もっと出来るだろう」という印象を与えてしまうのは致し方ない。しかし、恐らく現在のスターとは比較にならないくらいの期待を寄せられている中で、少なくとも一定の満足感、爽快感を齎すアクション映画をきちんと繰り出していることは評価すべきだろう。

関連作品:

ポリス・ストーリー/香港国際警察

香港国際警察 NEW POLICE STORY

プロジェクトA2/史上最大の標的

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