『大酔侠』

大酔侠 [DVD]

原題:“大酔侠” / 英題:“Come Drink with Me” / 監督:キン・フー / 脚本:キン・フー、イー・ヤン / 製作:ランラン・ショウ / 撮影監督:ホー・ランシャン / 美術:ジョンソン・ツァオ / 化粧:ン・クォン / 録音:ワン・ユンホア / 編集:チャン・シンルン / 音楽:チョウ・ランピン / 出演:チェン・ペイペイ、ユエ・ホア、チェン・ホンリエ、ヤン・チーシアン、ジャッキー・チェン / 映像ソフト発売元:KING RECORDS

1966年香港作品 / 上映時間:1時間31分 / 日本語字幕:?

日本劇場未公開

2004年8月4日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2012/03/03)



[粗筋]

 犯罪者護送の任に就いていたチャン長官が、賊に襲撃され、囚われの身となってしまった。賊のリーダー格であるティン・チュンユ(チェン・ホンリエ)は投獄されている彼らの頭領と引き替えに助けると言う。チャン長官は自らの父でもある総督が脅しに屈するとは到底思えなかったが、やむなく賊の要求に応じ、書状をしたためた。

 現地に寄越されたのは、チン・イエンツ(チェン・ペイペイ)という女役人である。実はチャン長官の妹でもある彼女は、多数の賊を前にしても怯まない武芸の達人でもあった。接触した酒場で彼女の実力を思い知らされたティン・チュンユたちはいったん撤退し、寝込みを襲って仕留める策に出る。

 そうとは知らないイエンツだったが、しかし彼女はその晩、奇妙な男に振り回されて、宿を空けていた。日中、ティン・チュンユたちと交戦しているときにも飄然と現れたその男は、“酔いどれ猫”(ユエ・ホア)という仇名で呼ばれており、道化者の素振りをしながら、どうやらイエンツをこっそりと助けようとしているらしい……

[感想]

 まだブルース・リーが登場しておらず、恐らくは香港映画の代名詞とも言えるワイヤー・アクションさえ確立されていない時分の作品である。スピード感に溢れ、華麗で重量があるカンフー映画、アクション映画を既にたくさん観てしまったあとでは、見劣りすることはどうしても否めない。

 ただ、その点を割り引いて鑑賞すれば、むしろまだまだ技術的に困難な部分を見せ方で巧みに補った、創意のある作りになっていることが解る。カット割りで誤魔化しつつも、きちんと因果関係が明白になった超絶技巧の数々には、わざとらしい、と思いつつも唸らされるし、別の達人が後半でしばしば披露する擬斗は、後年のアクション俳優ほどの冴えはないが実に鮮やかだ。

 紆余曲折と外連に富んだストーリー展開も、なかなかに魅せるものがある――が、こちらについては“途中までは”と但し書きを添えねばならないのが残念だ。

 往年の香港映画は、あまりきちんとした脚本を用意せず、その場その場のノリや思いつきで話を組み立てていくことが少なくなかったらしい。本篇では子役としてちらっとだけ顔を覗かせるジャッキー・チェン後年の作品もそういうものが多かったようだが、本篇の場合、その即興的な作り方が序盤では奏功しているが、後半ではかなり失敗している。

 恐らく、この方向性のまま話を進めては尻すぼみになる、という予感を製作者が抱いたのだろう、本篇は半ばほどで新たな人物が登場、それが題名に謳われる“大酔侠”と因縁がある、という設定になっているのだが、はっきり言ってこれが後半の作りをかなり歪めてしまっている。結果的に、物語焦点がどこにあるのか解りにくくなっているのだ。中盤では存在感が薄れていったイエンツも終盤に来て気を吐き、そしてどうにかこうにかまとめた力業には脱帽するが、しかし終わってみると「いったい何がしたかったの?」という印象が強く残る。

 とはいえ、中盤あたりまでの牽引力は素晴らしいし、未完成ながらもアクションの見せ方は後年の香港流アクションの萌芽が随所に窺え興味深い。今となっては未熟さが際立つし傑作と呼ぶにも物足りないが、香港流アクション映画に親しんでいる人であれば、色々と楽しみ方のある古典作である――少なくとも、のちにジャッキー・チェンがロー・ウェイ監督のもとで出演した武侠もののほとんどよりずっと面白いのは確かだ、と思う。

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コメント

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