『アンダーワールド 覚醒 IN 3D』

『アンダーワールド 覚醒 IN 3D』

原題:“Underworld Awakening” / 監督:モンス・モーリンド、ビョルン・スタイン / 脚本:レン・ワイズマン、ジョン・フラヴィン、J・マイケル・ストラジンスキー、アリソン・バーネット / 原案:レン・ワイズマン、ジョン・フラヴィン / キャラクター創造:ケヴィン・グレヴィオー、レン・ワイズマン、ダニー・マクブライド / 製作:トム・ローゼンバーグ、ゲイリー・ルチェッシ、レン・ワイズマンリチャード・ライト / 製作総指揮:エリック・リード、デヴィッド・カーン、デヴィッド・コートスワース、ジェームズ・マクウェイド、スキップ・ウィリアムソン、ヘンリー・ウィンタースターン / 撮影監督:スコット・キーヴァン / プロダクション・デザイナー:クロード・パレ / 編集:ジェフ・マケヴォイ / 衣装:モニク・プリュドム / キャスティング:トリシア・ウッド、デボラ・アクィラ / 音楽:ポール・ハスリンジャー / 出演:ケイト・ベッキンセールスティーヴン・レイ、マイケル・イーリー、テオ・ジェームズ、インディア・アイズリー、サンドリン・ホルト、チャールズ・ダンス、クリステン・ホールデン=リード、ジェイコブ・ブレア、アダム・グレイドン・リード、キャトリン・アダムス / レイクショア・エンタテインメント製作 / 配給:Sony Pictures Entertainment

2012年アメリカ作品 / 上映時間:1時間28分 / 日本語字幕:風間綾平 / R-15+

2012年2月24日日本公開

公式サイト : http://www.underworld-kakusei.jp/

TOHOシネマズ西新井にて初見(2012/03/09)



[粗筋]

 ヴァンパイアの処刑人・セリーン(ケイト・ベッキンセール)と、ヴァンパイアとライカン双方の能力を覚醒させた唯一の混血種マイケルの活躍により、長年に亘るヴァンパイアとライカンの抗争はひとまず終止符が打たれた。ようやくセリーンは平穏を手にした――かに思われたが、間もなく新たな敵と対峙することとなる。

 次に彼女たちに立ちはだかったのは、“人類”だった。

“感染者”の発覚が、ヴァンパイアとライカンという、地下で生き延びてきた“異種”を人類に認識させ、それは“除染”“駆除”という反応を導く。肉体的に劣る人類は、しかし数と圧倒的な執念でヴァンパイア、ライカンを狩り、セリーンとマイケルでさえ安穏と暮らすことは難しかった。ふたりは安全圏に逃亡するため、港から出国しようとするが、追いつめられ、そしてセリーンは海中で意識を失う。

 ――ふたたび目醒めたとき、セリーンはカプセルのなかにいた。

 混乱しながらも、自らを閉じ込めていた建物から脱出したセリーンは、マイケルと落ち合うはずだった港へと赴く。そこに現れた警備員は、驚くべき事実をセリーンに知らしめた。港は大規模な“駆除”が行われたあと、12年に亘って閉鎖されているのだ、という。

 自らを閉じ込めていた建物――“アンテイジェン”という企業の研究所の研究員から、自分とともに混血種が確保され、被験体として用いられていた事実を知ったセリーンは、視覚を同調させる特性を活かして、彼女を解放したと思しいもうひとりの“被験体”を捜す。

 だが、セリーンの予測に反して、彼女を助けた“被験体”はマイケルではなく、幼い少女(インディア・アイズリー)だった――

[感想]

 怪奇映画では定番だった“吸血鬼”と“狼男”というモチーフを現代的かつスタイリッシュな感覚で再解釈し、個性的な作品に仕立てた『アンダーワールド』は、1作目から人気を博し、当然のように続篇が製作された。しかし、第1作での因縁はほぼ断ち切られ、ヒロイン・セリーンにとっては幸福な状況が形作られたことから、あっさりと続篇が作られることはないだろう、と個人的には思っていた。事実、第3作は『アンダーワールド:ビギンズ』は題名通り、ヴァンパイアとライカンとの戦いの始まりを描いた作品となっており、次を作ることの難しさを窺わせた。

 だがそれから3年を経て登場した、本当の意味での第3作となる本篇は、終わったかに見えた戦いに新たな局面を打ち出し、決して従来の世界観を崩すことなく、見事に物語を引き継いでいる。

 2作目までは、人間社会にその存在を感知されることなく、闇で壮絶な争いを繰り広げるヴァンパイアとライカンの姿を描いていたのが、本篇は人間によって認知され、“駆除”の対象となったところから物語が始まる。新機軸、というよりはゾンビ物の亜種めいた展開が予想され、一瞬不安に囚われるが、直後にセリーンが眠りに就き、ふたたび目醒めたあと、まったく異なった手触りに変貌する。実のところ、こうした“冷凍睡眠”状態から抜け出したとき世界が一変していた、という類の発想もありふれていることは確かだが、本篇の世界観に持ち込むことで、物語を牽引するための謎を仕込むガジェットとして有効活用している点がこのシリーズらしい。

 それ以降の展開も、シリーズを順に追っている者ならいちいちニヤリとしてしまうようなものばかりだ。観客にはバレバレな幼い少女の正体もさることながら、12年ののちに変化したヴァンパイアやライカンの立ち位置、その中でのセリーンの扱いなど、実によく考えられている。人間たちの目に留まらぬよう潜伏するヴァンパイアたちの、セリーンに対する複雑な感情は、シリーズを追っていると実感的に理解できるし、そういうところを疎かにしていない姿勢に好感が持てる。

 だがとりわけ秀逸なのは、終盤できちんとひねりを凝らしているところである。予想しようとして出来ないことはないが、セリーンの置かれていた状況、そして途中でぽつぽつと語られる、セリーンが眠りに就いているあいだの出来事がきちんと伏線として機能しており、驚きがクライマックスの重層的な見せ場とリンクして、牽引力は並大抵ではない。

 また、アクション面が充実しているのも特筆すべき点だ。ライカンの残党による襲撃から車で逃れるくだりや、クライマックスの決戦など、見せ方も巧みならアイディアもシンプルかつ効果的なものが多い。第1作で印象深いシーンをひっくり返したような趣向があるかと思えば、他の個体よりも肉体的に優れたライカンを倒す方法など、単純明快だがそれ故にインパクトのある場面も用意している。

 意外、と言っては何だが、3Dを導入した作りが効果を上げていることにも注目したい。撮影時から3D方式に対応したため、実写部分が自然なのは当たり前だが、視覚効果を駆使して作りだされた大型のライカンなどは、3Dであるがゆえに迫力が増している。スピードを落とさないまま繰り広げられるカーチェイスでは、ライカンがフロントガラスを割った瞬間、ガラスがこちらに飛んできて、思わず避けてしまった――近年、後処理で3D化したものではない、純正の3D映画もだいぶ増えたが、こういう反応をさせてくれた作品は稀だ。

 あくまでシリーズ独自の世界観の枠に収まっており、それを破っていないので、旧作を超えたような印象はない。だが、シリーズの持ち味をきちんと押さえながら、次のステージへの扉を巧みにこじ開けた、優秀な“続篇”である。旧作未経験の方にはさすがにお薦めしづらいが、第1作、第2作を楽しんだ方であれば問題はない。3D映画としても上質なので、是非とも劇場で堪能して戴きたい――私が鑑賞したのが遅かったため、これをアップした時点で、かなりの劇場で上映終了となっているのが悔やまれる。

関連作品:

アンダーワールド

アンダーワールド:エボリューション

アンダーワールド:ビギンズ

ヴァン・ヘルシング

ウルフマン

デイブレイカー

ブラッディ・パーティ

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