『白蛇伝説〜ホワイト・スネーク〜』

シネマート六本木壁面ポスター。

原題:“白蛇傳説” / 英題:“The Sorcerer and the White Snake” / 監督:チン・シウトン / 脚本:チャン・タン、ツァン・カンチョン、シト・チェクホン / 製作:チュイ・ポーチュウ / 美術&衣裳:ウィリアム・チャン / 音楽:マーク・リュイ / 出演:ジェット・リー、ホアン・シェンイー、レイモンド・ラム、シャーリーン・チョイ、ウェン・ジャン、ジャン・ウー、ビビアン・スー、ミリアム・ヨン、チャップマン・トー、ラム・シュー / 配給:TWIN

2011年香港作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:遠藤壽美子

2012年7月14日日本公開

公式サイト : http://www.cinemart.co.jp/theater/special/hongkong-summer/

シネマート六本木にて初見(2012/07/14)



[粗筋]

 医師を志す青年・許仙(レイモンド・ラム)は、山で薬草を摘んでいる最中、青い蛇の化物に脅かされて湖に転落してしまう。溺れながら彼は湖中で自分に手を差し伸べ、口移しで空気を送りこんでくれる美しい女の姿を見た。しかし意識を取り戻したとき、周りには一緒に薬草摘みに赴いた仲間の男達ばかりで、彼らからは幻覚を見た、と言われるが、許仙は釈然としない。

 許仙が目にしたものは幻覚ではなかった。青い蛇の化身・青青(シャーリーン・チョイ)とともに、薬草摘みの様子を物陰から眺めていた、齢千年に達する白い蛇の化身・素素(ホアン・シェンイー)が人の姿となって許仙を助けたのである。許仙の篤実そうな振るまいと、接吻の感触に心を蕩かされた素素は、青青の協力を得て、許仙と再会するべく下界へと赴いた。

 折しも街では、祭りのさなかであったが、その影で蝙蝠の化身が跳梁し、人々を毒牙にかけていた。金山寺の高僧・法海(ジェット・リー)が弟子の能忍(ウェン・ジャン)とともに討伐に赴くが、ちょうどそのとき街には許仙も、彼を探す素素と青青も訪れていた。許仙探しにいまひとつ気乗りのしない青青は、偶然に出逢った能忍と、正体を隠したまま親しくなる。ほどなく青青は許仙を発見し、素素のもとへと導いた。

 だがその直後、能忍を悲運が見舞う。蝙蝠の化身を発見するものの、噛みつかれ、毒を受けてしまったのだ。蝙蝠は無事に法海が討ち果たすが、金山寺に戻った翌朝、能忍は己の身体が妖怪に変わりつつあることに気づき、愕然とする。

 一方、素素は許仙と無事に結ばれていた。真面目な許仙は、素素の両親に挨拶がしたいと言い、青青は一芝居打つための舞台に仕立てる廃屋を訪れて、そこで首を吊ろうとしていた能忍を発見した……

[感想]

 本篇は中国の民間説話に基づいているのだという。恐らく、そのことに重きを置いたが故だろう、本篇は語り口も映像のトーンも終始、幻想的だ。

 率直に言えば、最初は不安を抱かされる。粗筋では許仙と素素の出逢いから描いてみたが、作品自体は法海と能忍が雪女(ビビアン・スー)を討伐に赴くところから始まっている。いきなりCG、ワイヤーをふんだんに用いたアクションが繰り広げられるが、このアクションがいささかぎこちないのだ。物の質感がいまいちだし、折角ジェット・リーという優れたアクション俳優を起用しているのに、肉体の迫力に乏しい。ジェット自身の所作にはキレがあり様になっているのだが、他のマーシャル・アーツ映画で見せるような重量感はない。

 ただ、観ているうちに、本篇の場合はこれでいいのだ、と思えてくる。はじめからコミカルでロマンチックな味付けを施した幻想絵巻として構築されており、映画的な見せ場としても物語の必然としても壮大な戦いを描く必要はあるが、強調しすぎてはそうした持ち味を損なってしまう。如何にもCGらしい映像にしても、たとえば水中で許仙と素素とが口づけするシーン、妖怪仲間たちが家族を装って許仙に結婚の許可を与える場面など、民話調の展開には少し非現実的な印象をもたらすぐらいがしっくりくる。そうしたトーンと反発しないためにも、ジェット・リーの他の出演作に見られるような重量感は排除する必要があったのだ。

 そして、そうして“民話の映像化”ということに対する姿勢を察したうえで鑑賞すると、本篇は終始程良いバランスを保っている。許仙と素素の甘いやり取りにそれを支える妖怪たちの優しさに、法海たちが絡むことで厳しさ、切なさが加味され、終盤の壮絶ながらも胸を締めつけるような展開に繋がっていく。

 特に印象的なのは、法海の妖怪への態度だ。討伐のために赴きながらも、基本的には彼は倒すことより封印して反省を促そうとする。あるきっかけから法海は、薬草売りの許仙が妖怪である素素と結ばれていることに気づくが、そのきっかけ故に法海は、ある条件を突きつけたうえで一度、彼女を見逃そうとする。妖怪になってしまった弟子・能忍への態度にしても、高僧である法海といえど迷いがあり、一連の出来事を経て成長を遂げる、というあたり、民話ならではの教訓を、説教臭さを巧みに和らげたうえで取り込んでいて、なかなかに悪くない。

 基本的なガジェットが民話とは言えあまりに有り体なので、全般に際立ったインパクトをもたらすシーンに乏しい。100分という尺は手頃だが、そのインパクトの薄さ故に、どうも作品全体が薄味に感じられてしまう嫌いもある。しかし、民話的なムードを、映像的な華やかさを考慮して再現した作品としては非常に堅実だ。厳しくも優しいラストまで含めて、心地好い佳篇である――傑作とは呼ばないが、妙に惹かれるものがある。

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