第5回したまちコメディ映画祭・映画秘宝まつり

 東京都台東区にて開催されているコメディ専門のイベント、したまちコメディ映画祭も、早くも5回目です。第1回から、必ず1回は観る、ということに決めており、2年前からは映画秘宝まつりはとりあえず押さえるようにしてます。今年もいち早く注文、早々と参加を確定してました。

 ……ただ、正直なところこのイベントは、いまひとつタスクの管理がうまくない。昨年は行列の形成にまったく思慮がないので、入場の列と物販の列が交差して行き来出来なくなる、という状況を発生させていましたが、今年は入場列が伸びすぎた結果、ロビーの展示物を眺めていたら外に出られなくなる、という異様な状態に。確かに、こういう状況で横切って非難はされないでしょうが、それ以前に入場自由のロビーに出入りしづらくなるような列の作り方がまずいことは解っているはず。

 実のところ当初は、映画秘宝まつりのあとに上映される、『ロボット』の監督&主演コンビによる先行作『ボス その男シヴァージ』のチケットも押さえていたのですが、チケット発売後しばらく経ってから“マサラシステム”による上映を発表する、ということをしたので、返金してもらいました――“マサラシステム”とは、上映中に歓声を上げたり踊ったり、クラッカーを鳴らしたり、を許容して、会場が一体となって映画を愉しむ――というインド流の映画鑑賞のスタイルを指して言うもので、それ自体決して悪いとは思わないのですが、“静かに鑑賞する”というのが主流となっている日本では予め周知徹底しておくべき手法のはずで、発売後に決めていいものではない。私自身、そのスタイルを否定はしませんが、出来れば最初の1回は静かに観たい、というのが主義のため、先に公表していれば絶対に買ってませんでした。恐らく、早々と購入した方の中には“マサラシステム”を採用したことを知らなかったひともいたはずで、下手をすると揉めることになりかねない。インド映画が好きな方がこの手法を実現したい気持ちも理解出来ますが、知識のない方の理解をも得たいなら、もっとじっくり広めていかないと駄目だと思う。

 この調子でやたら配慮不足が目につき、かなり苛立って、心穏やかに映画を観られる状況ではなかったのですが、映画秘宝まつりは年に一度きりの機会ですし、肝心の上映作品も待ち焦がれていた1本だったため、ひととおり係員に苦情を伝えたあと、何とか気持ちを落ち着けるよう試みて会場へ。

 実は私、この映画秘宝まつりで採り上げられる以前から存在を知っていた本日の上映作品は、『クローバーフィールド』の脚本を担当したドリュー・ゴダード初監督作であり、『アベンジャーズ』で一躍その名を知らしめたジョス・ウェドンが製作と共同脚本を担当したホラー映画『The Cabin in the Woods』(KLOCKWORX配給)。時期や邦題は未定ながら日本公開も決定しているそうで、Twitter公式アカウントも稼働しています。

 ホラーなのになんでコメディ映画祭で、と思ってしまいますが、観てみるとなるほど、という内容。あまり詳しくは書けませんが、これは非常にマニア心をくすぐる良作です。単純に、オーソドックスなホラーとして鑑賞するつもりで劇場に赴くとかなり変な心境になるでしょうが、ジャンル分け困難、マニア向け、と承知していると、これほど愉しい映画もない。

 と、内容自体は良かったんですが、惜しむらくは上映環境がまったく内容に適していない。多くのシチュエーションが暗がりで展開されるのに、映像が不鮮明で、まったく状況の掴めない箇所が多い。会場である浅草公会堂はもともと映画上映のために作られているわけではないので当然なのですが、テスト上映をちゃんと行っていれば、もうちょっと対処のしようがあったはず。どうも、あっちを見てもこっちを見ても、配慮不足の点が目についてしまい、映画自体は面白いのにいまひとつのめりこめませんでした……そういう状態でも、クライマックスには思わず笑ってしまったので、映画自体は間違いなく傑作。

 映画秘宝まつりお馴染みの、町山智浩氏を中心としたトークは今回、上映終了後に行われました。いちおう上映作品についての解説も行われましたが、主題はなぜか町山智浩氏の半生。毎回一緒に登壇している水道橋博士氏と、過去の出来事についてしばしば議論となるらしく、今回それをはっきりさせたいがために、わざわざ年表を作って町山氏の人となりについて語ることにしたそうで。駆け足ながら、このトークも基本的には愉しかったのですが……如何せん、私はあまりに苛立ちが蓄積していたため、終始醒めた気分でした。

 上映終了後も、映像の不鮮明さについて苦情を伝え、配給会社のかたはあれで納得しているのか、と訊ねたところ、配給会社がついていることを係員の方が知らない、というオチがつきました。……私の記憶が確かなら、会場に入ったところでチラシを配っている方がいたはずなんですが、あれは配給関連のかたではなかったんでしょうか。本篇の冒頭にはKLOCKWORXのロゴが組み込まれていましたし、イベントのなかでも「劇場公開は決まっている」旨の発言があったんですが。

 馴染み深い土地での映画イベントゆえ、応援したいのはやまやまなんですが、せっかく回数を重ねているのに、運営の手際はだんだん悪くなっている感があります。寛大な人なら許してくれるでしょうが、もう少し繊細に切り盛りしないと、本当にシビアな人はついてきてくれなくなります。

 ……だいたい私はこんな辛いことを言うために観に行っているわけではありませんし、ある程度努力が認められるなら怒りはしない。とにかく随所で思慮の足りないことが不愉快なのです。せめて、列の形成や上映設備と内容の調整といった、想定出来る事態にぐらいもう少し対処しておいてほしい。

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