『スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜』

スリーピング タイト 白肌の美女の異常な夜 [DVD]

原題:“Mientras Duermes” / 英題:“Sleep Tight” / 監督:ジャウマ・バラゲロ / 脚本:アルベルト・マリーニ / 製作:フリオ・フェルナンデス / 製作総指揮:フリオ・フェルナンデス、カルロス・フェルナンデス、アルベルト・マリーニ / 撮影監督:パブロ・ロッソ / 編集:ギジェルモ・デ・ラ・カル / 音楽:ルーカス・ヴィダル / 出演:ルイス・トサル、マルタ・エトゥラ、アルベルト・サン・フアン、ペトラ・マルティネス、カルロス・ラサルテ / 配給&映像ソフト発売元:ALBATROS FILM

2011年スペイン作品 / 上映時間:1時間41分 / 日本語字幕:?

2012年8月11日日本公開

2012年11月2日映像ソフト日本盤発売 [DVD Video:amazon]

公式サイト : http://www.albatros-film.com/sleepingtight/

DVD Videoにて初見(2012/11/16)



[粗筋]

 クララ(マルタ・エトゥラ)は最近気分が優れない。恋人マルコス(アルベルト・サン・フアン)がアメリカに出張して、半年も逢っていないせいなのか、早めに床に就いても寝覚めが悪かった。

 しかも最近、異常な手紙やeメールが頻繁に届いている。クララのあとをつけ、彼女のすべてを知っているかのような文面だが、どこか実際とずれていた。マルコスは気にしなくても大丈夫だ、といい、クララ自身それほど強くは心配していなかったが、次第に頻度が増しているのが不気味だった。

 だが、基本的に気丈なクララは、あまり気に病むことがなかった。まだしょくに就いて間もないアパートの管理人セサル(ルイス・トサル)とも気安く接し、口数は少ないが真面目なこの男に、信頼を置くようになる。

 ……それも当然だった。セサルは慎重に行動していた。管理人として妥当に仕事をこなしながら、極めて近い場所で彼女を観察し、生活習慣を研究し、決して自分の真意を悟られないよう、細心の注意を払っていたのだから――

[感想]

 私の知る限り、ジャウマ・バラゲロはホラー専門の映画監督である。注目を集めた『ダークネス』に『機械じかけの小児病棟』、そしてシリーズ化にハリウッド・リメイクまで為された『REC/レック』まで、微妙にスタイルを変えながらも、一貫してホラーばかりを発表し続けている。

 やけに艶めいたキー・ヴィジュアルが用いられ、官能的な描写の存在も仄めかされた本篇は、だから初めての新機軸か、と思わされたが、しかし最後まで通して観ると、この監督のやることはぶれていない。この作品もまた、従来とは異なる手管を用いたホラーであった。

 全篇が恐怖に彩られているわけではない。序盤、何が進んでいるのか解らずに困惑するひともいるだろう。粗筋ではクララの目線から描写したが、ほとんどはセサルの側から描かれている。何やら目的がありそうだが、狙いの判然としない行動の数々が掻き立てるのは恐怖よりも不穏な居心地の悪さだ。

 しかし、目的がじわじわと理解できるようになってくると、何も気づかないクララに対して危うさを感じるのと同時に、急速におぞましさを覚える。周到に立ち回り、クララに勘づかれないようにして張り巡らされる監視の網。そして時折、具体的に起こされるアクションがもたらすおぞましさは、女性であれば実感的だろうし、男性であっても慄然とするほどだ。

 面白いのは、そうして恐怖をじわじわと積み上げていく一方で、やもすると不足しがちな緊迫感を、セサルの側に危機が及ぶくだりを挿入して醸成している点である。この男が常軌を逸しているのは早い段階で察するはずだが、それでもどこか共感を覚えてしまうようなひとは――まずそのことに危機感を持って欲しい気もするが――スリルを共有することになるし、彼を悪役として観ているひとであっても、瀬戸際のやり取りで手に汗握るはずである。

 本篇の巧さは、人物配置にも表れている。セサルが何をしているのか、断片的に理解しているらしい少女や、管理人としての彼の人柄を信じ切っている老婦人、この両者との終盤のやり取りは、セサルの狂気、悪意を強烈に際立たせ、終盤の不気味さをいっそう色濃いものにしていく。

 そうして辿り着く結末の、じんわりと、そしてどっしりとのしかかるような悪寒は逸品だ。恐らく、これまでにバラゲロ監督が手懸けていた傑作の数々をどうアレンジしても、こんな余韻を生み出すことは不可能だっただろう。確かに新機軸ではあるが、この戦慄をもたらす結末を演出するためには必要だったのだ。スペインの鬼才が今回も作りだそうとしたのは、ホラー映画に他ならない――きっとこの監督はよほどホラー映画が好きなのか、或いはセサルと似たような目線でホラー映画と接しているのだろう。だとすれば、今後もまだまだ悪魔的な企みで、我々を慄然とさせてくれるに違いない。

関連作品:

ダークネス

機械じかけの小児病棟

REC/レック

REC/レック2

REC/レック3 ジェネシス

REC:レック/ザ・クアランティン

マイアミ・バイス

ストーカー

題名のない子守唄

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