『ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝(3D)』

TOHOシネマズ六本木ヒルズ、階段下に掲示されたポスター。

原題:“龍門飛甲” / 英題:“Flying Swords of Dragon Gate” / 監督、原案、脚本&製作:ツイ・ハーク / アクション監督:ユエン・ブン / 製作:ナンサン・シー / 製作総指揮:ユ・ドン / 撮影監督:チョイ・スンファイ / 美術:イー・チュンマン / 編集:ヤウ・チーワイ / 3D監修:チャック・コミスキー / 音楽:ウー・ワイラップ / 出演ジェット・リージョウ・シュン、チェン・クン、グイ・ルンメイ、クリス・リー、メイヴィス・ファン、ルイス・ファン、ゴードン・リュー、シェン・チェン、リュー・チャーフィー / 配給:Showgate

2011年中国作品 / 上映時間:2時間1分 / 日本語字幕:? / PG12

2013年1月11日日本公開

公式サイト : http://dragongate-movie.jp/

TOHOシネマズ六本木ヒルズにて初見(2013/01/11)



[粗筋]

 中国、時は明朝。不甲斐ない皇帝に代わって権力をほしいままにしていたのは、宦官たちであった。彼らは東廠という組織を形成し、反抗の意を示す官僚を次々と捕え処刑していったが、しかしそんな彼らを次々と倒していく者がいた。彼の名はジャオ(ジェット・リー)。優れた剣技を備え、ふたりの同胞とともに、志のある官僚たちが処刑される寸前に突入して救い出すと、宦官たちの手の届かないところへと解き放ち、捲土重来のときに備えさせた。

 東廠とともに民衆を恐怖によって牛耳る西廠は、この機に乗じることを目論む――皇帝の妻・貴妃が寵愛するユー・ホアティエン(チェン・クン)を督主に据える西廠は特務機関であり、東廠が実力者ワン(ゴードン・リュー)をジャオに殺害されたのを好機に朝廷の権力を掌握し、ジャオを倒すことで盤石のものにしようとしていた。

 時を同じくして、貴妃の命により、皇帝の種を宿した可能性のある官女を処刑していた西廠は、そのうちのひとり・スー(メイヴィス・ファン)を配下に追わせていた。遂に渡し船でスーを発見、殺そうとしたそのとき、忽然と現れた人物が西廠の役人を打ち倒す。自ら“ジャオ”を名乗ったその人物の正体はリン(ジョウ・シュン)という女であった。彼女の目的は、ジャオの名を騙ることで、彼の関心を惹きつけること。彼女には、どうしてもジャオと再会したい理由があった。

 一方、そのジャオは、スーの行方を追って遠征に赴いたユーたちを海上で襲撃するが、予想外に手練れの揃った西廠に翻弄され、仲間を失いながらも辛うじて脱出する。ユーはほぼ同時期に別々の場所で“ジャオ”と相まみえたことを訝りながらも、スーを救った“ジャオ”たちが向かったと思われる土地を目指した。

 そこは、広大な砂漠。謎の碑文に刻まれた文字から、“龍門”と呼ばれるこの土地は、毎年のように凄まじい砂嵐が訪れ、唯一建てられた宿もこの時期には埋もれてしまうために、主人たちは店じまいを始めようとしていた。しかしここに、多くの人間が集っていく。スーを伴ったリンに、彼女たちを追う西廠の配下、龍門のある“秘密”を目当てに居座る、チャン(グイ・ルンメイ)を首領とする韃靼人の部族、女盗賊グー(クリス・リー)と情報屋のファン、そしてジャオ……やがて、辺境の地に、60年に一度の大嵐が訪れる……

[感想]

“香港のスピルバーグ”とも呼ばれるツイ・ハーク監督は、だが少しずつ文芸的路線、社会派的な視点も加えるようになっていった本家とは異なり、本篇の主演ジェット・リーと組んで“ワンチャイ”シリーズを生み出していた頃と変わらず、徹底した娯楽路線を貫いているようだ。両者にとって初となる3D映画である本篇も、3Dという特性を徹底的に活かした娯楽大作に仕上がっている。

 序盤から、3Dである利点を活かした、距離感を味わえる構図が随所で用いられることもさりながら、アクションの迫力は並大抵ではない。現実では不可能なバランス感覚と驚異的な跳躍、宮殿の構造を利用した曲芸的なアクションなど、かつて“ワンチャイ”シリーズにおいて観客を魅せたようなシチュエーションを流用し、観客を非現実の世界に引きずり込む。ワイヤーやCGを多用しているのは明白で、そうした虚構性がよほど性に合わない、というひとでもない限り、冒頭から一気にのめり込んでしまうに違いない。

 ストーリーはいわゆる“武侠もの”の様式を取っている。往時の中国を舞台に、貴族に武術家、ならず者にわけありの人間たちが入り乱れ、復讐や革命、或いは欲望を題材とし、その熱気や悲哀を描き出す。こちらも“ワンチャイ”シリーズと同様、複数の視点や出来事が輻輳し、複雑に展開していくため、なかなか先読みできない面白さがある。

 ただ惜しむらくは、あまりに多くの視点が入れ替わり立ち替わりするために、ところどころ何が起きているのか、画面に現れたのが誰なのか、よほど中国の俳優たちに精通しているひとでもない限り把握しづらくなっていることだ。特に中盤、龍門に関係者が蝟集する場面では、“女侠客”で一括りに出来そうなキャラクターが相次いで顔を見せるので、ちょっとぼんやりしているだけで、とばらく混同してしまう可能性がある――というより、実際に私自身が少々困惑した。

 それでも話が進むにつれ、キャラクターが明白になっていくので、観ていて整理がつくのだが、観終わってから改めて考えると、行動に筋が通っていない人物が散見されるのも残念なところである。とりわけ、終盤であるサプライズを提供する人物など、その前提の上で話を遡ると、どう考えても言動が不自然なのである――かつての香港映画では、アイディアを盗まれることを恐れて脚本を用意せずに撮影し、そのために支離滅裂な作品が多かった、と言われるが、それとは少々性質が違いそうに思えるものの、どうも考慮が足りないように感じられる。

 とはいえ、最後まで一転二転する物語の牽引力は素晴らしい。あまりに人物が多くて混乱してしまうが、しかしいつしかきっちりと掴める人物像、それぞれの目的意識の明確さは見事だし、故に生まれるクライマックスの緊迫感、昂揚感は逸品だ。

 本篇の中で最も際立っているのは、ジャオの行方を追って、彼の名を騙るリンである。ひと言、健気、という見方も出来るが、決して報いられることを望まない彼女の佇まいは実に凛々しい。いつも通りに洗練された身のこなしでアクション面において魅せながらも、キャラクター的にはシンプルな“義士”に過ぎないジェット・リーよりも、正直なところ存在感は上と言わざるを得ない。

 しかし、やはりアクション・シーンを引っ張っているのがジェット・リーであることは確かだ。クライマックス、奇想天外なシチュエーションで繰り広げられるアクションはハリウッドの大作とも異なる興奮を堪能させてくれる。

 往年の香港映画の持つ外連味を踏襲しながら、新しい技術を獲得し、着実な進歩を窺わせる、優秀な娯楽映画である。香港映画特有の大らかさがどうしても引っかかるようなひとだと辛いかも知れないが、そうでもなければきっと、充分な満足感に浸って映画館をあとに出来るはずである。

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