『花都大戦(はなのみやこたいせん) ツインズ・エフェクトII』

ツインズ・エフェクトII 花都大戦 [DVD]

原題:“千機變II 花都大戦” / 監督:パトリック・レオン、コーリー・ユン / 脚本:チェン・キンチョン、ロイ・ツェト、ラム・シュー、ピーター・シィ、ミシェル・ツィ / 製作:アルバート・リー、ツァオ・ジェングヮオ / 製作総指揮:ソン・ルクン、アルバート・ヤン / 撮影監督:チャン・チーイン / 美術:ビル・ルイ / 編集:チュン・カーファイ / 衣装:リー・ピックヮン / 視覚効果:メンフッド・エレクトロニック・アート / 音楽:トミー・ワイ / 出演:ジェイシー・チェン、シャーリーン・チョイ、ジリアン・チョン、ドニー・イェン、レオン・カーフェイ、チェン・ボーリンファン・ビンビン、チュー・イン、シェ・ジンジン、ジャッキー・チェンダニエル・ウーエディソン・チャン / 配給:AMGエンタテインメント / 映像ソフト発売元:GENEON UNIVERSAL ENTERTAINMENT

2004年香港作品 / 上映時間:1時間46分 / 日本語字幕:?

2005年8月27日日本公開

2006年1月25日映像ソフト日本盤発売/2010年5月26日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2013/06/08)



[粗筋]

 古代の中国。その辺境に、女人国が存在した。女帝(チュー・イン)が支配し、男達はすべて奴隷として扱われ、等しく売買される国である。

 だが一方で、やがて現れる“皇帝星”が秘められた神剣を取り、女帝を倒して男達を解放する、という預言があった。女帝は“皇帝星”の出現に備え、配下のワイ・リュ(ダニエル・ウー)らに怪しい者を追わせ、他方で抵抗組織を率いるジェネラル・ローン(ドニー・イェン)は、神剣を封印した土地を示す石板を宮殿から奪おうと試み、彼が使わしたタオ(エディソン・チャン)という男が遂に成功を果たした。

 掠奪の3日後、タオは改めてローンと落ち合う予定だったが、職場である芝居小屋に戻ったところを女帝の刺客に襲撃されてしまう。しかし、タオの懐には既に、石板はなかった。同じ芝居小屋の仲間であるコール(チェン・ボーリン)とチャー(ジェイシー・チャン)に託されていたのである。

 タオの代わりに、落ち合う予定の場所を目指そうとしたふたりは、道中でジェネラルとローンの姉妹を名乗る女ふたりに遭遇した。女の一方はスプリング(シャーリーン・チョイ)、奴隷商人だが、将軍の命で人捜しをしており、目をつけたコールがどうやら金づるになると見込んで彼に付け入ろうとしていた。もうひとりの女はブルー(ジリアン・チョン)、もともとはワイ・リュの配下であり、石板の追跡を命じられていたが、任を解かれ、単独でコールとチャーに辿り着いたのだった。

 石板が示す“神剣”の在処を、宝の隠し場所と信じこんで、奇妙な4人連れは旅を始める。しかし、彼らの行方は既に、ワイ・リュに把握されていた――

[感想]

 てっきり、『ツインズ・エフェクト』の続篇と思いこんでいたが、はっきりと別物である。あちらが吸血鬼をテーマにした現代的伝奇アクションであるのに対し、本篇は武侠ものの系譜に連なる歴史アクションで、世界観においても連携していない。両者に相通じているのは、ユニット“TWIN”が中心人物に配され、アクションにドニー・イェンが絡んでいる、という2点くらいだ。

 ただ、そこは大した問題ではない。いけないのは、ストーリーの不出来さを踏襲してしまっていることだ。

 近年はそうでもなくなってきたようだが、かつての香港映画はアイディアの盗用が氾濫するあまり、その予防策として、ろくに脚本を用意せずに撮る、というのが普通になっていた――実際に誰もが盗用を警戒していたかどうかは定かではないが、全体像を定めず、大まかな設定に基づいて撮り始めてしまう、というのは伝統的に行っているらしい。最近でも、そんな撮り方をした、と公言している作品があったりする。

 本篇がそういう作り方をしていた、という確たる根拠を私は持ち合わせていないが、少なくとも、脚本があったとすればろくに練ることをしていないのは間違いない、と思う。登場人物の行動はおろか、背景にも筋が通っておらず、ほとんど説得力がないのだ。

 そもそも皇帝を殺したからあっさりと支配者の権力が与えられる、というものではないはずだが、女帝が即位するなり、彼女が世の男達に抱く怨みゆえに男達を隷属させる、という規則がああも簡単に浸透してしまっているのが不思議だし、それに対してレジスタンスまで存在しているわりには、男達のあいだに抵抗する機運も、逆に敢えて立場に甘んじる、という姿勢も窺えず、設定の上っ面しか描いていない、と感じる。本篇が全体的にコメディ・タッチで描かれていることを考慮しても、この不徹底振りはなおさらマイナス材料と言わざるを得ない。

 監督は『トランスポーター』をはじめ国際的に活躍するコーリー・ユンがパトリック・レオンと共同で携わっており、ならばアクションの質は高いのでは、と期待するほどに上出来とは言い難い。如何せん、やはりメインであるTWINSのふたりの動きにはあまりキレがなく、ワイヤーや特殊効果で人間離れした格闘能力を表現しても説得力に乏しい。前作ではアクション監督を担当したドニー・イェンが今回は自ら出演してアクション面を補強しているが、それでも心許ない。

 しかし、そういう出来映えであっても、やはりジャッキー・チェンが出て来ると状況が変わる。全篇通して、あまり見所がないと、というのが率直な印象だが、それでもジャッキーが出演しているパートだけは出色だ。しかも相手が、現在の香港アクション映画を牽引する第一人者ドニー・イェンなのだから、愛好家としては燃えるほかない。ワイヤーなどに頼らず、もっと全力で拳を交えて欲しい、という嫌味はあれど、その華麗さにはさすが、と唸らされる。

 とはいえ、このくだり自体、アクション映画として魅力に欠ける本篇を補強するために無理矢理に付け加えた、という印象を受けてしまうのは、結果として全体のイメージをより貶めている、とも感じられるのだが。しかもジャッキーの退場の仕方は、思わず太字で何しに来たんだお前と呟いてしまうほどで、もう少し納得のいく登場の仕方にさせられなかったのか、と大いに疑問が残る。

 細かい趣向自体は悪くないのだ。クライマックスがそれなりに盛り上がるのは、そこまでで形成された人間関係があればこそで、そういう意味では全体を貫くアイディア自体はちゃんと用意されていた可能性が考えられる。ただ、それを裏打ちする準備が乏しく、不自然だから充分な効果を発揮できていない。もっと主要キャストたちが惹かれ合う様子をきちんと納得のいくかたちで描き出し、女帝の背景にしても綺麗に組み込んであれば、仮に演出がぎこちなく、アクション面が充分に活きなかったとしても、もっと好意的に受け止められる出来になったのではなかろうか。

 前作もそうだったように、香港映画の持つ悪癖をある程度理解していて、それを承知の上でなら楽しみようはある。ジャッキー・チェンとその息子ジェイシー・チャンが共演している(直接絡む場面はない)ことや、のちにスキャンダルに巻き込まれる俳優たちの存在、そんななかでドニー・イェンら大物による予想外の見せ場があったりと、香港映画に多少なりとも馴染んでいれば、本筋には絡まない楽しみも少なくない。しかし、芯のあるプロット、筋の通ったアクション、といった質を求めてしまうと、およそ満足出来るものではないだろう。

関連作品:

ツインズ・エフェクト

トランスポーター3 アンリミテッド

新少林寺/SHAOLIN

1911

ライジング・ドラゴン

王朝の陰謀 判事ディーと人体発火怪奇事件

白蛇伝説〜ホワイト・スネーク〜

ドラゴンゲート 空飛ぶ剣と幻の秘宝

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