『呪怨 −終わりの始まり−』

新宿バルト9、施設外に掲示されたポスター。

監督:落合正幸 / 脚本:落合正幸一瀬隆重 / プロデューサー:山口敏功、平田樹彦 / エグゼクティヴプロデューサー:田中順、今山武成、百武弘二、久保忠佳、鶴谷誠 / ラインプロデューサー:宿崎恵造 / クリエイティヴスーパーヴァイザー:一瀬隆重 / 撮影:岡田博文 / 照明:舘野秀樹 / 美術:尾関龍生 / 視覚効果:松本肇 / 特殊造形:松井祐一 / 編集:深沢佳文 / 録音:松本昇和 / キャスティング:北田由利子 / 音楽:上野耕路 / 音楽プロデューサー:慶田次徳 / 主題歌:鬼束ちひろ祈りが言葉に変わる頃』 / 出演:佐々木希、青柳翔、トリンドル玲奈金澤美穂高橋春織黒島結菜、最所美咲、小林颯、緋田康人袴田吉彦 / 配給:Showgate

2014年日本作品 / 上映時間:1時間31分

2014年6月28日日本公開

公式サイト : http://www.juon-movie.jp/

新宿バルト9にて初見(2014/06/28)



[粗筋]

 結衣(佐々木希)は念願の小学校教師の口を見つけた。しかも、学期の途中にも拘わらず、クラス担任を委ねられる。同棲する恋人の直人(青柳翔)も、彼女の幸運を喜んだ。

 だが赴任当日から、結衣はクラスに問題があることを知る。佐伯俊雄(小林颯)という生徒が、1週間も無断で欠席しているのだ。学級日誌によれば、前任者が自宅を訪問しても、母親が出てくるだけで肝心の俊雄には逢えなかった、とある。

 結衣が訪れた佐伯家の雰囲気は、異様だった。ドアには鍵がかかっておらず、母親の言動は常軌を逸している。肝心の俊雄は、気配こそすれ、やはり姿を確認することは出来なかった。

 あの家族には、何か問題がある。結衣はそう直感するが、しかしその家庭訪問を境に、彼女の周りで奇妙な出来事が相次いだ……

[感想]

 ハリウッドでもリメイクされたシリーズの最新作、という印象の宣伝をしていたが、しかし本篇は、これまでに製作されたシリーズ作品のどれとも話が繋がっていない。シリーズで登場した要素を抽出し、舞台となる家や登場人物を変更、新たに仕切り直した作品である。リブート、と言った方が実態に近いのではなかろうか。

 その意図自体は否定しない。第1作が発表されてからだいぶ年月が過ぎ、オリジナルのスタッフ、キャストを巡る状況が変わり、クレジットに名前を残しているのはオリジナルを製作した一瀬隆重(脚本とクリエイティヴ・アドヴァイザーとして加わっている)ぐらいだ。それなら、変に旧作とリンクさせることに執着するよりは、いったん仕切り直すほうが無難だろう。そこまでは決して悪い考えではない。

 だが問題なのは、そうして改めて表現を試みた恐怖が、ことごとく旧作を超えていないことだ。

 構成を大きく変えているが、旧シリーズで印象が強かった怪奇現象、恐怖を生む趣向は改めて採り入れられている。だが、そのいずれもがオリジナルのおぞましさを凌駕できていない。

 二番煎じだから、とか観る私のほうが慣れてしまった、という理由ではない。それもまるっきりは否定しないが、仮にまったく『呪怨』を日本版ハリウッド版どちらも観ていなかったとしても、本篇の怪異はその場の驚きには繋がっても、あとを引く恐怖にはなり得ないのではなかろうか。

 怖さが足りない原因は場面によって異なれど、怪異の特徴を活かした工夫がいまひとつ、というあたりに集約されそうだ。たとえば、オリジナル・ビデオ版でも鮮烈なインパクトを持っていた、女子高生が見舞われた出来事は、直前に警察の捜査で異様な事実を提示して伏線を張り、あとで「こんなことが起きていた」という衝撃を作り出した。しかし本篇は、その現象がどんな風に起きたのか、というオリジナルでは使わなかったヴィジュアルを用いる一方で、そこで恐怖を倍増させるような伏線のしかけかたが出来ていない。予兆はあるが、そもそもなんであんな予兆があったのかも解せない。オリジナルも、何故、どうして、という部分をすっ飛ばすことは少なくなかったが、ああいう“予兆”のような描写を採り入れ、怪異を起こす側がドッキリをしかけているかのような不自然な印象を残す愚は犯していない。

 オリジナルは“気配”を濃密に感じさせ、無音が恐ろしくなるような空気を生み出していたが、そういう演出もいまひとつうまく行っていない。現象に至るまでの過程が少々性急だ、というのもあるし、無音でもいいところを大袈裟にBGMを使ってしまってぶち壊しにしている場面もあった。監督もスタッフもホラーについては理解があるはずなのだが、それがあまり活きていないようだ。

 評価出来るところもあるにはあるのだ。まず、リメイクにあたって、『呪怨』シリーズ特有のルールを踏まえつつ、物語の構成に手を加えたことは評価に値する。初見のひとにとっても無論のこと、なまじ今までの作品を観てきたひとほど足許をすくわれる発想には唸らされた。その辺の状況が透けてくる終盤は、本篇でいちばん見応えがあった――が、少々説明がすっきりしておらず、また折角のアイディアを活かすための工夫がやはりもうひとつ足りないので、充分な効果を上げていないことは惜しまれるが。

 そして、これも『呪怨』シリーズのお約束を踏まえつつ、細部の趣向にひねりを加えていることも評価したい。特にクライマックスのあれは、単純だがなかなか巧いひねり方である――ただこれも、ひねった方向性に合わせた伏線や描写の調整が必要ではなかったか、と思う。

 また、ホラー映画でありながら、全年齢対象に留めていることも評価したい。人の死や呪いを扱った映画では当然のように残酷なシーンが相次ぎ、PG12くらいは指定を受けてしまうものだが、海外では『インシディアス』が全年齢対象を維持してヒットを挙げたという経緯もあり、その点を配慮して製作したのだろう。……しかしこの点にしても、どうせレーティングを避けて作るなら、それ相応のクオリティは欲しい、と感じてしまう。手加減して内容が緩くなっては意味がない、同等の恐怖を与えるぐらいでないと、挑戦としては失敗の部類だろう。

 姿勢や考え方については頷けない部分もないではない、だが完成した作品はあまり評価出来ない。観るな、というほど不出来だとも捉えてはいないのだが、旧作を評価しているひとは、あまり期待値を上げない方が無難だろう。

関連作品:

呪怨』/『呪怨2』/『呪怨 白い老女』/『呪怨 黒い少女』/『THE JUON―呪怨―』/『呪怨 パンデミック』/『呪怨 ザ・グラッジ3

感染』/『シャッター』/『劇場版 怪談レストラン

山形スクリーム』/『アナザー Another

インシディアス』/『インシディアス 第2章』/『ダーク・フェアリー』/『死霊のはらわた』/『キャリー

コメント

タイトルとURLをコピーしました