『半魚人の逆襲』

半魚人の逆襲(〇〇までにこれは観ろ! ) [DVD]

原題:“Revenge of the Creature” / 監督:ジャック・アーノルド / 脚本:マーティン・バークレイ / 原案&製作:ウィリアム・アランド / 撮影監督:チャールズ・S・ウェルボーン / 美術監督:アレクサンダー・ゴリツェン、アルフレッド・スウィーニー / 装飾:ラッセル・A・ガスマン、ジュリア・ヘロン / 編集:ポール・ウェザーマックス,A.C.E. / 衣装:ジェイ・A・モーリーJr. / メイクアップ:バド・ウェストモア / 音響:レスリー・I・ケアリー、ジャック・ボルガー / 音楽:ハーマン・スタイン、ジョセフ・ガーシェンソン / 出演:ジョン・エイガー、ロリ・ネルソン、ジョン・ブロムフィールド、ネストル・パヴァス、グランドン・ローズ、デイヴ・ウィルコック、ロバート・B・ウィリアムズ、チャールズ・R・ケイン、リコー・ブラウニング、トム・ヘネシークリント・イーストウッド / 配給:ユニヴァーサル映画 / 映像ソフト発売元:KING RECORDS

1955年アメリカ作品 / 上映時間:1時間22分 / 日本語字幕:?

1958年12月日本公開

(2009年7月25日ぴあフィルムフェスティバルでの上映が日本初公開との情報もあり)

2014年8月6日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon]

DVD Videoにて初見(2014/08/08)



[粗筋]

 南米、アマゾン川にて発見された半魚人を捕獲するため、ジョー・ヘインズ(ジョン・ブロムフィールド)らのチームが現地に赴いた。潜水作業中に襲撃されるひと幕もあったが、爆薬を用いて半魚人を気絶させ、見事捕らえることに成功する。

 半魚人はアメリカのフロリダ州にあるポート・ハーパー水族館に収容され、大水槽にて一般公開と研究とが並行して実施された。詳しい調査は生物学の権威クリートファーガソン教授(ジョン・エイガー)の手に委ねられ、彼は若い女性科学者ヘレン・ドブソン(ロリ・ネルソン)を助手に、半魚人の生態を研究する。

 発見されたときはその外見と凄まじい怪力が注目されたが、ファーガソン教授はそれ以上に、半魚人が魚類よりも人間に遥かに近い性質を持っていることに注目する。学習能力も高く、彼が研究室で飼育している猿よりも早く、言葉を理解していくことも教授の関心を惹いた。

 だが、教授は気づかなかった――半魚人の高い知能は、教授が次第に親しくなっていったヘレンの、その美貌の魅力さえも理解していたことに……。

[感想]

 本篇を紹介する文言でいちばん響きがいいのは、実際に私が鑑賞したDVDの広告やジャケットにも用いられている、“クリント・イーストウッド初出演映画”というものだろう。残念ながら、それ以外の理由で本篇を評価するのは難しい。

 タイトルに“逆襲”とあることから察せられるとおり、本篇は続篇だ。『大アマゾンの半魚人』というタイトルでヒットした作品を、同じジャック・アーノルド監督のメガフォンで撮ったものだ。ギルマンと名付けられた半魚人はオリジナルだったそうだが、続篇なので本篇のオリジナルとは言い難い。また、第1作も本篇も、青と赤のフィルムを嵌めた眼鏡で鑑賞する、初期の3D方式で上映されていたそうだが、それとて独自性というわけではないし、改めて鑑賞する手段がない(そもそも日本では、第1作が公開された時点でさえ3D方式では上映されていなかったらしい)以上、ただの知識でしかない。

“半魚人”というクリーチャーのアイディアや、それを活かした独創的なプロットが用いられているのか、といえばそれも違う。半魚人の際立った特徴は、えら呼吸であるため長時間陸地にいられないこと、驚異的な怪力ぐらいのものだ。水掻きと鋭い鉤爪を持っていることから、地上でも水中でもその凶暴性を顕わにするのか、と思えば、あまりその残酷性や恐怖を表現してはいない。際立っているのは外見的な特徴くらいのもので、まるで戦隊モノのザコキャラめいた有様なのだ。

 プロットで活かしていないばかりか、こういう“研究対象”を扱ううえでの研究者たちの振る舞いにも不自然さが無数に見られるのも引っかかる。凶暴だと解っている生物を蘇生させるのに、あんな無防備な格好で処置を施すものなのか。ろくに研究されておらず、何を食べるのかも解らない段階で一般展示するものなのか。そもそもアマゾン棲息なら淡水で飼育するべきのはずだが、どうも海水で飼育しているように見えるのは、最初の対応として正しいのか。順を追って描くなら、特徴や変化として認められそうな趣向でもあるのだが、そういう工夫は皆無だし、そうした独自性が話の展開に何ら奉仕していないのだから、釈然としない気分にさせられる。

 捕獲に赴いたメンバーのリーダーが主人公になるかと思うと何故か途中で交代してしまうし、物語の過程でけっこうな悲劇が起きているのに、それをすっぱり無視して振る舞っているひとびとの様子も訝しい。とにかく気配りの雑さが目について仕方ないのだ。

 そうした違和感、問題点をツッコミどころとして、「んなわけあるか」「なんでやねん」と心の中で叫びながら、であれば存分に楽しめるだろうが、およそ真面目になると見所はさすがにない。工夫が必要だっただろう水中撮影や、半魚人の印象的な造形など、時代を考慮すれば評価したい点はあるのだが、よほどクリント・イーストウッドに心酔しているか、怪奇映画そのものを愛しているか、ツッコミどころ自体を楽しめるひとでなければちょっと辛いと思う。

関連作品:

恐怖城 ホワイト・ゾンビ』/『ヒューマン・キャッチャー/Jeepers Creepers2』/『ウルフマン』/『ザ・フィースト』/『ピラニア3D

荒野の用心棒』/『マンハッタン無宿

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