3本目の第28回東京国際映画祭作品は、イラン映画。

 日がすっかり暮れたあとで、3度目となる第28回東京国際映画祭上映作品鑑賞のため新宿へ。ちょっと冷えてきましたし、帰ってから働く体力を残したいので電車での移動です。

 今日の会場は土曜日に続いての新宿バルト9。作品はイラン映画、結婚式を翌日に控えた花嫁が突然亡くなる、という悲劇を、視点と時間軸の変化により重層的に描いたミステリータッチのドラマ

 アスガー・ファルハディ監督作に出会って以来、イスラム圏の現代をミステリ的に描いたドラマがちょっと気になっており、昨年の『メルボルン』と同様、このあたりのスタイルを受け継いでいると思われる本篇を拾ってみた次第。

 ミステリ風、とは言い条、謎解きに主眼は置いてません、というか、登場人物の誰かが謎を解くわけではない。かつ、観客に対しても色々な点を説明していないので、モヤモヤしたものが残ります。しかしこれ、恐らくは観る人間の立ち位置によって、“事件”に対する感情に大きな違いが生じることを念頭に置いている作品なのです。ある立ち位置からは花嫁に同情し、別の立ち位置からすると彼女の死は当然にも映る。そして、私たちのように、イランの文化と遠いところにいる人間には、不思議にも憐れにも思えてしまう。そう捉えると、なかなかに深い作品。

 ただ、これも私がイランの文化について十分な知識を備えていないせいかも知れませんが、謎の残し方が妥当だったのか、が判断に迷うところです。ひとつ採り上げると、あの電話の主は最後まで不明のままなんですが、あそこの解釈が何か物語に対する判断に影響するんだろうか。

 とはいえ、重層的な見せ方はやはり前述のアスガー・ファルハディ監督や『メルボルン』に通じるものがあり、そしてイランの文化の描写はやっぱり興味深い。見応えは充分でした。日本で公開は……するのかなあ。『メルボルン』も面白かったんですが、けっきょくその後音沙汰がないしなー。

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