『キャロル』ジャパン・プレミア上映。

ほんの3列前。 好きな俳優は? と問われると、日本ならともかく、海外ではどっちかと言えば男性を挙げがちな私ですが、例外的に昔から好きなのがケイト・ブランシェット。作品ごとに雰囲気が一変する、観るのがとても楽しみな女優なので、出演作はよっぽど嗜好からハズレていない限りは出来るだけチェックするようにしているのです。

 そんな彼女の最新作が、このたびのアカデミー賞でもいくつかの部門で候補となっているキャロル』(PHANTOM FILM配給)なのですが、今回初めて、キャンペーンのために来日することが決定した。併せて行われるプレミア上映で登壇、しかもそのイベントのチケットが一般販売される、という異例づくしの状態。ほんとーに、映画好きになった初期から注目していたので、これを外すわけにはいかない。10分くらいでソールドアウトになったチケットを、しっかり確保してやりました。というわけで本日、夕方からTOHOシネマズ六本木ヒルズへ。

深夜の馬鹿力』リスナーである私は、司会としてクリス・ペプラーが登壇した段階で思わず噴き出しそうになってしまったのですが、ケイト・ブランシェットが壇上に上がるまで、指示があるまでは一般客も撮影OK、という話で気分が一変しました。だって、入場時に劇場中断の通路にレッドカーペットを敷いてた、ってことはそこを通るんだぞ?! 私の取ったチケット、通路から3列目だぞ?!

 まー、こういう緊急時に適しているとは言いがたいiPhoneで、しかも私の腕ですから、まともな写真は撮れなかったんですけど、撮らせてくれただけで嬉しい。

 5分くらいで、通訳込みで簡単に話をするだけでもいいかな、と思ってたんですが、クリス・ペプラーまで呼んでいただけあって、けっこうしっかりとトークが展開したうえに、途中からは更に、彼女の大ファンだという寺島しのぶまで登場する大盤振る舞い。寺島しのぶが捧げた花束を、クリス・ペプラーが「実はけっこう重いんですけど」と言うとすぐに重そうな仕草をしてみたり、寺島が「生ケイトは如何ですか?」と問われると当のケイトのほうが恥ずかしがったり、と振る舞いがチャーミング。話の内容自体はたぶんプログラムとか各マスコミ向けの取材で口にする程度のものでしょうけれど、こーいう姿が間近に見られるのが何より嬉しい。

 最後には、場内に仕掛けられた風船が破裂すると、チョコレートの入ったハート型の風船が落ちてくる、という演出までついて、舞台挨拶は終了。この風船、すべての観客に行き渡るほどの数はなかったんですが、その代わり上映終了後に出口でチョコは配布してくれました。ふだん、割引価格で鑑賞できる私が、このイベントは通常と同じ料金を支払っているわけですが、十二分にその価値がありました。

 肝心の映画は、ケイト自身が語っていたとおり、殺人も暴力沙汰もないけれど、さながらクライム・ストーリーのように展開する恋愛物語。中心となる女性ふたりの心理を繊細に、緻密に組み立てられた映像で切り取っていく。全篇すべて映像が絵画のように美しく、血も流れないのに痛々しい。先頃発表されたアカデミー賞ノミネーションでは、ケイトが主演女優賞に、相手となるルーニー・マーラ助演女優賞に共に名前が挙がってますが、それも納得の、ひたすらに沁みる作品。行動が特異なので、心情的に受け入れられない人もいそうですが、『エデンより彼方に』や『アイム・ノット・ゼア』など、クセのある、それでいて映画として優れた佇まいのある作品を撮ってきたトッド・ヘインズ監督らしい傑作でした。正式公開は2月11日ですが、余裕があったらもう1回観に来るかも。

 鑑賞後は、いつものうどん屋で夕食を摂ってから帰宅。ふだん食事を摂る時間を逃していたため、すっかり空腹だったことも手伝ってか、前には残してしまった味噌煮込みうどんが問題なく入ってしまいました。そして、たっぷり詰め込んでおいたお陰で、寒波にめげることなく無事我が家に帰り着けました……なんでこの陽気、しかも帰りが夜になるの解ってて自転車で出かけたのかね私は。

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