優れた凡人が神を装う。

 通常、プログラムが切り替わった直後の月曜日に観に行くことに決めている午前十時の映画祭7ですが、今週は月曜日が祝日、しかも夏休み突入直後ということもあって、劇場そのものが混雑している可能性があったので見送り、今日足を運んできました。

 毎度のTOHOシネマズ日本橋にて鑑賞した今コマの作品は、高い評価を得た戯曲をベースに、歴史に名を残す名作曲家と同時代を生きた人物の目から、芸術に身を投じる者たちの苦悩を描くアマデウス ディレクターズ・カット』(松竹富士初公開時配給)。『ドクトル・ジバゴ』同様、東日本大震災の年にこの映画祭で観て以来です。

 初見のときも思いましたが、これはとても興味深い作品。芸術を巡り、歴史に名を残す天才と、同時代に名声を勝ち得つつも自らの才能の乏しさを自覚してしまった人物の深遠なドラマなんですが、そこにキリスト教的なモチーフを盛り込んで“神”というものを描いているようにも映る。神の恩寵により音楽的才能に恵まれた、と信じて神に心身を捧げながら、品性に乏しく信仰も薄い男のほうがより神からの恩寵を受けていることに絶望し、いつしか神を呪うようになる。そして最後には、自らが神のように振る舞っている。信仰心の厚さを誇る人間が陥りがちな陥穽を汲み取っていて、他の出来事に当てはめると頷くところの多い作品です。

 鑑賞後は、最近日本橋で昼食を摂るときのお馴染みになってしまった蕎麦屋にて食事。ここのところ何度も行っているせいか、そろそろ顔を覚えられた気がしなくもない。まあ、ビジネスマン中心の客層の中で、私の格好はだいぶ異質ですから、そのせいで印象に残ってしまった可能性はある。

 なお、来週から3週間、午前十時の映画祭7はすべての劇場で同一プログラムがかかります。『バック・トゥ・ザ・フューチャー』全3作を、1週間交替で連続上映するのです。人気のあるシリーズながら、たぶんここ最近でいちばん大きな上映規模になると思いますので、お好きな方はどうぞ劇場に足をお運びください。

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