bananaman live 2016 腹黒の生意気 at 俳優座劇場。

俳優座劇場入口脇に掲示されたポスター。  初日に念願叶って鑑賞してきた『bananaman live 2016 腹黒の生意気』、きのうで公演が終了したので、感想を遅ればせながらアップ致します。

 ただし、恐らくは今回も年明けくらいに映像ソフトがリリースされるはずで、そのときまでなるべく内容は知りたくない、という方もいらっしゃるでしょうから、詳細は格納のうえ、少し間隔を空けて記します。観たくない方はこの項目を飛ばしてください。

“Haraguro no Namaiki”

 オープニングはいわば表題作。平素の設楽さんと日村さんの関係を彷彿とさせる、会社の先輩後輩のやり取りを、音楽や日村さんの顔芸で見せるひと幕です。

 明確なオチはないんですが、設楽さん演じる後輩の“生意気”っぷりを、日村さんの心象も含めたレスポンスで描く発想が面白い。特に今回、前から3列目の真ん中、という演者の表情も見える位置で鑑賞していた私は、音楽とうまく一致させた日村さんの芝居に笑いつつも唸らされっぱなし。日村という優れたお笑い飛び道具を、しれっと使いこなす設楽、という構図が明瞭な、バナナマンのバラエティでの才能を証明するような仕上がりです。

“cuckoo costume party”

 オープニング映像を挟んでのふたネタめは、1本目とも繋がるような会社の先輩後輩、という設定ですが、仮装パーティーに招待された日村さんの相談に後輩・設楽さんが乗る、という形で、やっぱり設楽さんの日村あしらいの上手さが光る組み立て。

 このネタの面白さは、序盤の想像からどんどん話が逸脱していくことでしょう。最初は日村さんの演じる先輩の、あまりに奔放すぎる想像力に翻弄されますが、設楽さん演じる後輩が、それを知ってか知らずか引きずり回して、どんどん振り回していく。終わってみて、これがいったい何の話だったのか解らない、けど散々笑わされた挙句の着地に計算高さがほんのりと匂う、バナナマンらしいネタ。

 しかしこのネタ、面白いのは面白かったんですが、残念ながら終盤に発生したハプニングに若干さらわれた感が否めません。まさかあのタイミングでズボンが破けるとは。前述した通り、私はかなり前方で、演者の様子がはっきりと見える座席だったうえに、舞台に置かれたのがガラステーブルだったため、座っている日村さんの股間からくっきりとその下のパンツが見える、という……位置的に下からやや見上げる構図だから尚更に生々しく、貴重な場面に遭遇した、と喜べばいいのかどうなのか。

karaoke

 これはちょっとした衝撃でした。発想がシンプルすぎるので、細かくは言及しません。しかし、ある意味何もしていないからこその面白さ、という、ライブだから成り立つ1発ネタです。それ故に、おふたりの芝居の上手さも引き立ってるんですが。

“panic attack”

 そんな名前の漫画家いたなあ……って言っても解らないでしょうけれど、それはともかく、デザイナーとその助手、という、珍しくふたりとも女性役で演じる、ちょっと短めのひと幕です。

 こちらも発想はシンプル、そしておふたりの演技力がものを言うネタですが、着目して欲しいのは設楽さんの女役の上手さです。『ゴッドタン』でのヒム子シリーズが知られているがゆえに、女性あるいはおかまキャラは日村さん、というイメージを抱きがちですが、実は設楽さんのクセのある女性キャラも面白い。最近だと『LOVE is GOLD』の大ネタで見せた“美熟女”風の芝居も見事でしたが、それよりはひとつのネタの中での早変わりのほうが強烈だったあちらと比べて、このネタの丁寧と無礼が混在したキャラクターのほうが設楽さんの上手さは際立っている。

 もちろん、そういう設楽さんを引き立てるために、外見の個性をネタのなかで活かしつつも、普通のおばさんっぽさを醸し出していた日村さんの上手さも忘れちゃいけません。

 ここまでの2つのネタは、バナナマンの芝居の上手さが効いた内容だった、と思います。

“赤えんぴつ”

 バナナマンのライブでは唯一定番のネタ、フォークデュオ“赤えんぴつ”シリーズは今回も健在。フォーマットがあるからこその面白さ、なんですが、今回は展開にちょっとひねりがあります。若干話運びが唐突だったのが引っかかったものの、定番ネタでもちゃんと工夫を凝らしてくるあたりにバナナマンの意地が垣間見られる。

 それにしても、基本的にネタと結びついた曲しか演奏しない彼らですが、よくよく聴くとけっこういい曲があるのも特徴。今回も、オチと直結する曲が、よく歌詞を聴くとけっこう沁みるのです。真面目にCD出してくれないかな。

おまけ:幕間映像

 順番をメモするのを忘れていたので、セット入れ替えの合間に流れる幕間映像について、鳥のネタの前に触れておきます。

 時として生のネタよりも面白かったりするこの幕間のVTR、今回もかなり見応えがあります。本当にしょーもない、どうでもいいことをしているだけなんですが、それがちゃんと笑えてしまうのが不思議。

 出色なのは、舞台挨拶で設楽さんも言及した“ペヤング”の奴ですが、個人的には“パーカー”の話も好きです。VTRならではの見せ方が絶妙。

“The pitiful two in the Philippines”

 トリを飾るのは毎回、そのライブでも最長で、ちょっとホロリとさせるネタ、というのもお定まり。昔からの腐れ縁である2人組が、何の因果か女を捜しにはるばるフィリピンに渡る、という話。

 最後を飾るネタは、時としてミステリとしても優秀、と言えるくらいに構成がしっかりしていたり、『LOVE is GOLD』のときのように見せ方に舞台ならではの趣向を凝らして魅せてくれたりしますが、今回そういう意味ではちょっと物足りない。設楽さん演じる湯田に裏があるため、その見せ方に舞台的な工夫があるくらいで、ネタとしても特に大きなひねりはない。

 ただそれだけに、腐れ縁であるがゆえの複雑な感情の表現とか、やり取りの呼吸の表現に、バナナマンのふたりがライブの中で培った演技力、コンビならではの間合いが寄与して、仕掛け的に凝っていないからこその見応えがあります。騒動の顛末の悲哀と、双方の不器用な態度が、やけにしんみりとさせてくれる。個人的に期待していたものとは違いましたが、トリとしては相応しいネタだったと思います。

総括

 正直なところ、映像ソフトでも完成度は味わえますから、それでもいいや、という気持ちはあったのです。しかし生で鑑賞するライブはやっぱり違いました。初日だから、というのもあるでしょうけれど、演者が醸し出す独特の緊張感と、ネタが観る側に届いたときの一体感はやっぱり生ならでは。何より、映像ソフトだとどうしても漫然と観てしまうのですが、生だからこそ、演技や表現に集中出来る。バナナマンのおふたりの、コント師としての底力をたっぷりと実感できました。

 とにかくチケットの確保が異常なくらいに難しく、今年取れたのも奇跡みたいなものですが、やっぱり生で観たほうがいい、という想いが募ってきたので、来年もあるなら、性懲りもなくチケット争奪戦に臨みたい、と思います……ホリプロコムお笑いファンクラブの会費、払い込んでこないとな〜……。

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