第29回東京国際映画祭観客賞授賞式&受賞作上映。

 本日をもって第29回東京国際映画祭は終了です……当初、だいぶ絞って3本だけ観るはずが、1本目を断念する事態になり、先日鑑賞した『雪女』と、本日授賞式とともに上映される観客賞受賞作品のみ、ということになってしまいました。そんなわけで、2回目にして私にとって最後の第29回東京国際映画祭上映作品を鑑賞するべく、朝から自転車にて六本木ヒルズへ。祝日なので、普段は通行人が多く通りづらいオフィス街に人が少ないので、非常に走りやすかった。

 10時20分よりイベントが始まりました。港区区長らの挨拶を挟んで発表された、本年度の観客賞受賞作品は、フィリピンの『ダイ・ビューティフル』(日本配給未定)。監督、プロデューサーへの表彰、挨拶を経て、本篇の上映です。

 作品は、突然亡くなったゲイを、親友達が生前の要望に応えて連日メイクや衣裳を変えて葬儀を催す様を描く一方、その変化に合わせるように、彼女が生前に見せた、息子としての顔、女性としての顔、母親としての顔などを、時系列をシャッフルしつつ描いていくもの。

 彼女が抱えていた多くの問題が未解決のままなので、観終わってもどこかスッキリしない気分が残るのですが、ただ不思議なほど余韻は清々しい。それは、遺体を美しく彩りながらも、ある意味では飾ることのなかった人生を、様々な側面からありのままに描き出し、その覚悟とバイタリティとを浮き彫りにしているからでしょう。ミスコン生活の師である女性が用意した回答集から引用した、「生まれ変わってもいまの私になりたい」という言葉が、結果としてヒロインであるトリシャの想いをシンプルに象徴している。

 個人的には、すべてではなくても、ひとつくらいは葬儀のプロセスのあいだに決着させるくらいでもよかったように思いますが、あえて綺麗にまとめなかったことで、その生き様にリアリティを感じさせると共に、ありのままをポジティヴに称える内容にもなっていて、これはこれで清々しい。ゲイは養子をとったほうがいい、であるとか、美容に対する意識であるとか、フィリピンにおけるゲイ・カルチャーのガイドにもなっている意味でも、興味深い1本です。映像のパッチワークで人生を前向きに描き出し、あまり触れられない世界や価値観を如実に実感させてくれる、という映画ならではの体験が出来るあたり、確かに観客賞に相応しい作品だと思います。

 六本木で映画を観た場合、いつもなら行きつけのうどん店で食べて帰るのですが、先週食べたばっかりなので、帰り道の途中にあるラーメン屋に久々に立ち寄ってきました……まだ胃の調子が万全ではないので、ちょっと重かった……。

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