好きになるその瞬間をこの世界の片隅に、ってなんだそれ。

 プログラム切替直後の月曜日は午前十時の映画祭7を観に行く日、なんですが、今コマの作品は思うところあって先送り。代わりに、とりあえず観ておきたい作品を午前中に押さえておこう、と考え、色々と上映時間を確かめた結果、いい具合にハシゴ出来るものがあったので、ネット経由でチケットを確保し、朝からお出かけ。本日の劇場は、このあいだ変な2本立てで訪れたTOHOシネマズ西新井です。

 まず鑑賞した1本目は、クリエイターユニット・HoneyWorksの作品をベースにした劇場用アニメの第2作、先輩に憧れる女の子・雛の視点を軸に描かれる好きになるその瞬間を。 〜告白実行委員会〜』(Aniplex配給)

 第1作は、とりあえず予備知識は大してなく(sphereがコラボしていた、という程度の知識)、ちょっと気になっていた程度だったので、タイミングが掴めずにそのまんま見送ってしまったのですが、今回はうまくスケジュールが噛み合ったので鑑賞した次第。

 ……1本目、観ておくべきだったんじゃないの? これ。

 面白かったかどうか、と問われたら面白い、と言える。だいたい経緯の想像もつきます。とはいえ、1作目の出来事を頭に入れてからのほうがきっともうちょっと楽しみようがあったはず。トキメキであるとかドキドキであるとか、そのあたりの描写がいいだけに、本篇で仄めかすだけ仄めかして描かれていない部分が気になって仕方ないのです。話が進んでいないらしい友人たちの関係は別として、明らかに決着しているはずの部分がすっ飛ばされているので、どうもモヤモヤして仕方ないのです。帰宅後調べてみたら、やっぱりそこが第1作で描かれていた部分だったようです。推測は出来るけど、やたらと視線が動く話の組み立てであるが故に、決着しているところが不充分、というのが引っかかるので、やっぱり1作目から観るのが正解だったかも知れない。

 そしてもっと引っかかるのは、エンドロールの部分。後日談のところをエンディングテーマとリンクしたイラストストーリーで見せているんですが、どう考えてもここだけでもう1本分の分量があるんですが。むしろここも含めて見せて欲しかった気がするんですが。

 まああれこれ言いつつも堪能し、トイレとかを済ませて戻ったのは、奇しくも同じスクリーン1の同じ席……要は、このスクリーンでは2部構成にしていたために、ハシゴするのに絶好の時間割になっていたわけです。そう気づいたところで、折角だから、と席も同じにしてしまいました。

 この劇場では1日1回、この時間にだけかかっている本日2本目は、こうの史代の傑作コミックを『マイマイ新子と千年の魔法』の片渕須直監督がクラウドファンディングも駆使して映画化、昭和初期に広島市呉市で暮らした平凡な女性の姿を情緒豊かに描き出したこの世界の片隅に』(東京テアトル配給)。2本続けて助詞で終わる題名なのはたまたまです、っていうかそれも含めて劇場に操られていたようなものだ。

 あれこれと話題になっているから、というのもありますが、もともとこれは観たかったのです。これまでとは違った角度、庶民の目線で描かれる戦争、というのに関心があったので。

 柔らかなタッチ、ちりばめられたユーモアと、何かと妄想に耽りがちなヒロインだからこそのファンタジー的な描写と相俟って、戦争期を描きながらもあまり暗さはない。しかし、確かに忍び寄る影、そして舞台に広島と呉を選んだがゆえの出来事が必然的に困難をもたらしていく。しかしそれでも、戦争の展開ではなく、そこで生きる市井の人々に目を向け、自らの意志で戦争に進んだわけでなかったとしても、順応していくしかない生き方をさり気なく、生々しく描いている。終盤でのある出来事がもたらす衝撃が特に尾を引きますが、しかし本篇は冒頭からずっとその映像、描写がいちいち印象に残ります。それらが凝縮していくような結末は、フィクションで泣くことは基本的にない私も目頭が熱くなりました。ナレーションも含めて全篇喋りっぱなしと言っていいのんのあまり飾らない口調も作品の空気に馴染んでいて見事。この時代を描いたアニメをたくさん観ているわけではありませんが、『火垂るの墓』と共に、アニメ史に刻まれるべき傑作だと思います。

 鑑賞後は映画館の入っているアリオ西新井のフードコードで手早く食事を済ませて離脱。家に着いたときには既に14時半、仮眠を取ろうにも半端に目が冴えてしまって寝付けず、この時間になって著しい眠気に襲われております。映画感想の宿題をひとつくらいは片付けられそうだったんですけど、明日にしときます……。

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