『ボヤージュ・オブ・タイム(吹替)』

TOHOシネマズシャンテ、施設外壁に掲示された看板。

原題:“Voyage of Time : Life’s Journey” / 監督&脚本:テレンス・マリック / 製作:デデ・ガードナー、ニコラス・ゴンダ、サラ・グリーン、グラント・ヒルブラッド・ピットビル・ポーラッドソフォクレス・タシオリス / 製作総指揮:ターナー・ビアード、メアリー・ビング、イヴ・シュヴァリエ、ダニエル・ハモンド、ガブリエル・ハモンドクリストス・V・コンスタンタコブーロス、ジャック・ペラン、ライアン・レッティング、ロナルド・ローゼンフェルト / 撮影監督:ポール・アトキンス / 視覚効果監修:ダン・グラス / 編集:レーマン・アリ、キース・フラース / サウンド・デザイナー:ジョエル・ドハティ / ナレーション:ケイト・ブランシェット / 日本語吹替版ナレーション:中谷美紀 / IMAXエンタテインメント、ソフィスティケイテッド・フィルムズ製作 / 配給:GAGA

2016年フランス、ドイツ、アメリカ合作 / 上映時間:1時間30分 / 翻訳:松浦美奈

2017年3月10日日本公開

公式サイト : http://gaga.ne.jp/voyage/

TOHOシネマズシャンテにて初見(2017/3/11)



[概要]

 母なる命はどこから生まれ、どのように育まれたのか。カメラは遙か太古、宇宙が芽吹いた瞬間から、その歴史を辿っていく――

[感想]

 ひどく簡単な概要で申し訳ないが、実際、これ以上書きようがないのだ。

 冒頭、漆黒の画面が続く中、囁くようなナレーションが“母”に呼びかけ続ける。やがて現れる、何かが弾けるようなイメージ。そこから次第に展開していく宇宙。それらがどうやら宇宙の発生から辿っているのだ、と気づいたときから、鏤められた映像に意味が生まれていく。

 こうした理解、解釈の変遷から、本篇は既に意味を持っているのかも知れない。光を与えたことでかたちが生まれ、かたちが触れ合うことで変化が生まれ、変化を定義することで意味が生まれる、いわば知性の発達のプロセスを、本篇は再現しようとする試みだった、とも受け取れる。

 だから、あまり多くの情報を得て鑑賞するよりは、むしろいったん真っさらな状態で臨むべき作品なのかも知れない。序盤はまったく先が見えない状況に困惑し、目の前に広がる映像から何らかの意味を汲み取るように努め、次第に自分のなかでかたちを為していく過程をも、作品の一部として享受すべきなのだ。

 ――とはいえ、観ている者の中身は真っさらではない。窓口で料金を支払いチケットを購入して指定された座席番号に着席するくらいには知性があり文明にも馴染んでいるのだから、真っさらな心に対峙するような本篇のアプローチは平板で焦点を欠いているように感じられてしまう。率直に“退屈”と感じてしまうひとも少なからずあるだろうし、その試みの価値、面白さを評価していても、1時間以上この調子で繰り広げられる映像に倦んでしまう可能性は否めないところだ。パンフレットによると、プロデューサーが「観客が耐えられない」と本篇の尺を90分にするよう指示したそうだが、賢明な判断だと思う。

 こういう、観る側に寛容さと辛抱を要求する作品は、それだけで製作するうえで高いハードルが生じる。それが許されるのは、「それでも観る価値がある作品を作り出せる」という信頼を獲得した監督だからこそ、だろう。事実、同じことを思いついたとしても、ここまで芸術的で、観る者の想像力を刺激するような作品に仕上げるのは難しいだろう。

 かく言う私も、終盤ではしばしば意識が飛びそうになったくらいで、鑑賞にはかなりの気力と集中力とを要する。しかし、しっかりと体調をととのえたうえで臨んでみる価値はある1本であるのは間違いない。少なくとも、こんな感覚をもたらす作品には、そうそう簡単にはお目にかかれないはずだから。

関連作品:

ツリー・オブ・ライフ

キャロル』/『マネー・ショート 華麗なる大逆転』/『源氏物語 千年の謎

2001年宇宙の旅』/『LIFE IN A DAY 地球上のある一日の物語』/『ネイチャー』/『シーズンズ 2万年の地球旅行

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