やってみたかった変則的ハシゴ。

 アカデミー賞を間近に控えた映画サービスデー、という今日は、たぶんマーケティングのうえでも要となる日なのでしょう、木曜日ながら封切りとなる作品も多い。しかも個人的に観たい作品が複数あるので、確実に拾っていかねばなりません。で、発表されたスケジュールを検討した結果、TOHOシネマズ上野にて朝1本鑑賞したあと、いったん家に帰って、また上野でもう1本を観る、という変則的なハシゴを実践することになりました――実のところ、上野にTOHOシネマズが出来る、と知ったときからやってみたかったの、これ。

 到来が予報されていた春の嵐は、朝のうちに関東を通過してくれたので、ひとまず朝は運動がてら徒歩にて移動……もうそろそろ自転車を漕いでもいいかな、と思い始めているのですが、今日はちと風が強い。

 まず鑑賞したのは、敬愛するクリント・イーストウッド監督最新作、アムステルダムからフランスに向かう列車内で発生したテロ事件を食い止めた若い3人の男性が、そこに至るまでの経緯を、本人に演じさせる、という意外なアプローチで表現した15時17分、パリ行き』(Warner Bros.配給)

 出来事自体もシンプルなら、若者たちがそこに至るプロセスもありがちなものです。しかし、それを当事者自らに演じさせる、という趣向故に、役者が演じるのとは違ったリアリティが生まれている。彼らの等身大の生き方に寄り添って撮っているから、というのもあるのでしょうが、御年87歳の大ヴェテランが手懸けたとは思えないくらい語り口がフレッシュで小気味良い。イーストウッドの作品としては出来としても尺としても小振りですが、質の高さは相変わらず。ああ、やっぱり大好きこの監督。

 鑑賞後は上野駅に移動、構内の書店で買い物をしたあと、いったん帰宅。どこかで風邪でももらったのか若干悪寒を覚えたのですが、食事を摂り、一眠りすると改善したので、予定通りふたたび上野へ……時間の都合もあるので、今度は電車です。

 本日2本目は、ギレルモ・デル・トロ監督最新作、冷戦時代のアメリカで、研究のために捕獲された未知の生物と、口の利けない女性との“ロマンス”を、グロテスクながらも美しい映像で描きだしたシェイプ・オブ・ウォーター』(20世紀フォックス配給)

 デル・トロ監督は過酷な時代に生きづらい背景を抱えた人々を誠実に描きつづけていますが、今回もその眼差しは健在。冷戦という、大規模な破壊に及ぶことのない戦いを繰り広げつつ、黒内には未だ根強い差別意識に虐げられる人々がいる、という時代背景があってこそ成立するドラマは、空想的なのに異様に説得力があって惹きつけられます。個人的に、物語としては『パンズ・ラビリンス』のほうが優れている、と感じましたが、しかしモチーフ、描写の味わい深さにおいては文句なし。間違いなく傑作です……アカデミー賞が獲れるかどうかは解りませんけど。獲れなくっても観る価値は充分にある、と断じたい。

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