お前は既に持っている。

 最近、“けいすけ”というラーメン店のチェーンがお気に入りで、ときどき足を運んでいます。

 いちばんのお気に入りは本駒込駅近くにある“四代目けいすけ”で、夜間と月曜昼に提供している、伊勢海老を炊いたつけ汁を用いたつけ麺です。ここは麺を焼き盛りにすることも出来、伊勢海老の風味とカリッとした麺の香ばしさがやけにクセになってしまい、限られた提供時間を狙って訪れてたりします。

 この“けいすけ”というチェーン店、店舗によってメニューどころか、スープに利用する食材も麺もぜんぶ異なっている。私も立ち寄ったことのある銀座東急プラザの地下では珍しいふぐ出汁を用いたメニューを扱い、GINZA SIXのそばにある店舗では鴨出汁を使っていたりします。

 例外的に複数存在しているのが、“肉盛り”を看板とする店舗。メニューの種類や期間限定メニューの内容は各店舗でその都度異なった趣向を凝らしているようですが、“肉そば”と銘打った店舗が特に多い。

 実はここの系列店が、あの『ラーメン大好き小泉さん』に登場してたりします。

 アニメ版では採り上げられませんでしたが、それは原作第4巻収録の三十五杯目“ラーメン大好き大澤さん”の回。小泉さんにずっと袖にされた挙句にとち狂った大澤さんが小泉さんになり切ろうと彷徨った挙句、ようやく辿り着いたのが“肉そば総本山神保町けいすけ 神保町店”だったわけです――私自身はここは未訪問ですが、肉系列の店舗で食べたことはあるので、あとでそうと気づきました。

 この話、大澤さんが小泉さんになり切って振る舞う、という趣旨なので、当然大澤さんは店舗をひとりで訪問している。ちょっと変わった食券機のシステムに戸惑いつつ、肉のボリュームに満足している様子でしたが、しかし、しばし待って欲しい。

 この店はトッピングに定期券のシステムを導入している。300円払えば半年を有効期限として発行してもらうことが出来て、通常はこれでトッピングひとつ、回数によってふたつが無料でつけて貰えるのです。四代目では3回通うと無料で定期券を貰えるので、私は既にけっこう活用している。

 だから、私は気がついた。大澤さんはどうやら気づかなかった――というより思い至らなかったようですが、実は彼女、ここのトッピング定期券を持っている。

 第1巻収録の九杯目。定休日で閉まっていたラーメン屋の前で行き倒れになっていた小泉さんを家に連れ帰り、即席麺のアレンジで精一杯おもてなしをしたところ、後日そのお礼として複数のラーメン屋のクーポンを進呈してもらうのですが、問題のコマの右下に、“けいすけ”のトッピング定期券がはっきりと描かれているのです。

 ……あれ、ずっと気づかれないままなんだろうか。全篇通して、大澤さんが唯一、小泉さんから受け取った厚意だったのに。もしアニメ第2期があるのなら、せめて大澤さんに定期券の存在を思い出させてあげて欲しい……。

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