『エンゼル・ハート(1987)』

【Amazon.co.jp限定】エンゼル・ハート(ポストカード付) [Blu-ray]

原題:“Angel Heart” / 原作:ウィリアム・ヒョーツバーグ / 監督&脚本:アラン・パーカー / 製作:アラン・マーシャル、エリオット・カストナー / 製作総指揮:マリオ・カザール、アンドリュー・ヴァイナ / 撮影監督:マイケル・セレシン / プロダクション・デザイナー:ブライアン・モリス / 編集:ジェリー・ハンブリング / 衣装:オード・ブロンソン=ハワード / キャスティング:リサ・ブラモン、ビリー・ホプキンス / 音楽:トレヴァー・ジョーンズ / 出演:ミッキー・ロークロバート・デ・ニーロリサ・ボネット、シャーロット・ランプリング、ストッカー・フォンテリュー、マイケル・ヒギンズ、ブラウニー・マッギー、エリザベス・ウィットクラフト、ジェラルド・オレンジ、ダン・フロレク、ペギー・サヴィアー、エリオット・キーナー、キャスリーン・ウィルホイト / カロルコ・ピクチャーズ製作 / 初公開時配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:TCエンタテインメント/是空

1987年6月13日日本公開

2016年4月18日映像ソフト日本盤発売 [Blu-ray Discamazon]

Blu-ray Discにて初見(2018/11/03)



[粗筋]

 1955年のブルックリンで、私立探偵を営むハリー・エンゼル(ミッキー・ローク)のもとに、弁護士からの依頼が舞い込む。

 ワインサップ(ダン・フロレク)というその弁護士を介して接触してきたのは、ルイス・サイファー(ロバート・デ・ニーロ)という、羽振りはいいが素性の知れない謎の男。彼は、戦前に人気を博しながらも10年前に忽然と失踪したジョニー・フェイバリットという歌手を探して欲しい、と依頼してきた。戦場に召集され、神経を患って帰ってきたジョニーは精神病院に収容され、支援していたサイファーのもとには毎年請求が届いていたが、最近調べてみると、病院からとうに姿を消していることが判明したのだ、という。

 ハリーはまず、その病院から調査を始めた。やはり記録上、かなり前に転院したことになっていたが、一連の手続は担当医であったアルバート・ファウラー(マイケル・ヒギンズ)が行っていた。ハリーはファウラー医師の居所に侵入すると、発見した違法薬物の存在を仄めかしてジョニーの行方を聞き出そうとする。ファウラーはケリーと名乗る男たちが2500ドルをファウラーに支払い、入院し続けているという工作を依頼して連れ去っていった、という。更に情報を探るためにハリーはファウラーを寝室に閉じ込め、食事をしているあいだに思い出すよう促すが、食後に戻ると、寝室の中でファウラーは眼孔を銃弾に撃ち抜かれた姿で絶命していた。

 人死にの絡む案件に尻込みしたハリーは、サイファーを訪ね、手を引くと告げる。しかしサイファーに相場を遥かに上回る報酬を提示し、翻意を促した。

 ハリーはニューヨークタイムズに勤める知人からジョニーの情報を得た。その中のひとり、ギター奏者のトゥーツ・スイート(ブラウニー・マッギー)がニューオーリンズに移ったことを知ると、その周辺に関係者が多く存在すると踏んで、現地に赴いた――

[感想]

 その昔、本篇がテレビ放映された際、ラストシーンだけ観てしまった、というけっこう不幸な過去がある。過程をまったく観ていないので、“どうしてそうなった?”という点を確認したいあまりに、初めてリリースされたブルーレイ版を購入してしまった。

 率直に言えば、こういう出会い方をしてしまったのはやはり不運だったように思う。なまじラストを知っているだけに、筋を確認しながら鑑賞してしまったのだが、そういう見方をするといささか物足りない。

 ミステリー仕立てではあるのだが、実のところ、結末を予見させる手懸かりはあまり仕掛けられていない。その事実が判明したときに意味を持つ伏線は細かに張り巡らされているが、それらが即ち結末を暗示する手懸かりである、と気づくひとは少ないだろう。特に私は、結末の一部だけを見届けたような状況だったために、なおさらしっくり来なかったようだ。

 しかし翻って、あまり内容について予備知識を持たず、素直に鑑賞すれば、確かにこの結末はかなりの衝撃をもたらすはずだ。ひとによっては荒唐無稽と切り捨てる可能性もあるが、間違いなくある種のインパクトは齎す。

 そもそもこの作品の魅力は、決して論理的な謎解きにあるのではない。むしろプロセスにおいては、王道のハードボイルドを思わせる語り口や登場人物こそが見所だろう。

 のちにボクシングに手を出し、そのダメージを隠すために整形をしてしまい、結果だいぶ容色に衰えが生じてしまったが、本篇の当時は女性たちを陶酔させた美しいマスクであったミッキー・ロークが、粗暴だが妙に人を惹きつける魅力を持った私立探偵を好演している。いずれも腹に一物抱えていそうな関係者とのやり取りはウイットに富み、まさにハードボイルドの趣を湛えている。

 しかも、このタッチの中にオカルティックな背景が見え隠れするのが面白い。ミッキー・ローク演じるハリーがある程度、基本に忠実に失踪者の行方を辿る一方、その随所に奇妙な文化や習俗がちらつき、物語に不気味な彩りを添えている。

 ハードボイルドにオカルト要素を融合する、という趣向において、本篇は間違いなく高いクオリティを成し遂げている。問題があるとすれば、そもそもそれが肌に合わなかったり、不幸な出会い方をしてしまった場合だ――少なくとも、結末の一部だけ知ったうえで鑑賞してしまった私は、そうとう不運な部類に属すると思う。内容を吟味したいまは、極めて個性的な意欲作、と理解できるけれど、初めて通して鑑賞した直後は、やっぱりモヤモヤとした気分を味わったのだから。

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