千尋もハウルもアリエッティも風立ちぬもマーニーも観たスクリーンで、ナウシカと再会しました。

 コロナ禍による映画館の作品不足は解消しつつある――とは言い条、調べてみると解りますが、邦画の新作が少ない。邦画は洋画よりもスクリーンに対する満席率が高くないと費用の回収が難しい、という事情があるようで、市松状に埋めて半減した収容量のままではうかうかかけられないんだそう。それ故に、7月に確定した『コンフィデンスマンJP プリンセス編』を例外として、新作の公開日がなかなか確定しないんだとか。
 そのため、マーヴェル作品やいまも週2作ずつかけられている『男はつらいよ』などが用意されたわけですが、ここに来て遂にジブリも特別上映が始まりました。実は私、ジブリに関しては、劇場作品はすべて映画館で観てる――けれど、いわゆる“ジブリの劇場作品”でただ1本だけ、映画館で鑑賞したことがないものがあった。この好機に観ない手はありません。気になる封切り作品をひとまずぜんぶスルーして、発売直後にチケットを確保。
 梅雨の晴れ間で好天にも恵まれたので、バイクにてお出かけ――ただ、やっぱり似たような感じでバイクを使うひとが多かったようで、有楽町界隈に行くときいちばんよく利用している最安値の駐車場は見事に埋まってました。最悪、高くても行き先である東京ミッドタウン日比谷の地下に突っ込むつもりでしたが、距離的にも値段的にも手頃な日比谷公園地下には空きがあったので、こちらに駐めて映画館へ。
 劇場はTOHOシネマズ日比谷、それも東京宝塚劇場の地下にあるスクリーン12です。なんでここで鑑賞することにしたか、と言えば、上映館ではいちばん大きい、旧・日比谷スカラ座のスクリーンを転用したところだから――調べてみて驚きましたが、私はひとりで映画館通いをするようになって以来、けっこうな数のジブリ作品をここで観ていた。『千と千尋の神隠し』に始まり『ハウルの動く城』、『借りぐらしのアリエッティ』、『風立ちぬ』、そして以前の国内スタジオでは最後となる『思い出のマーニー』まで。すべてではないけれど、基本はここをメインとして上映されていたため、結果として私も引き寄せられていたようです。そう考えると、この作品をここで観るだけでも意義がある――相変わらずここはポスターを展示するとかいった“彩り”を放棄してるので、あんまし好きではないんですが。
 前置きが長くなりました。本日の作品は、正確にはジブリ“以前”にトップクラフトが制作した宮崎駿監督初のオリジナル長篇、腐海に文明が飲み込まれたあとの世界で、人間と巨大生物との共生を模索しようとする“虫愛ずる姫君”の冒険を描いた『風の谷のナウシカ』(東映初公開時配給)。……そう、私は実は『天空の城ラピュタ』以降はすべて封切り当時に観ていて、これだけを劇場で観てなかった。映画道楽も長くなってからその事実を思い出し、どーしてもスクリーンで観ておきたかったのでした。
 もう、あまりの質の高さにただただ頭を垂れるのみ。独創的な世界観とアイディアに満ちた画面、現代社会への示唆もしっかりと盛り込んだ優れたテーマ性。何より、タイトルロールであるナウシカの魅力的なことときたら! 強さも可愛らしさも繊細さも備えていて、クライマックスの“奇跡”を起こすのも頷ける勇敢さ。ジブリ作品の中でどれがいちばん好きか、と問われると、基本的には『天空の城ラピュタ』と答える私ですが、やっぱりこれも外せない――そもそも私がジブリを劇場で観るようになったのも、公開後にこの作品の面白さを知ったことがきっかけですし、一時期アニメ雑誌を購読してたのも、『アニメージュ』にこの続きが掲載されてたからでした。完全に、私の原点のひとつになってる。

コメント

  1. […] 英題:“Nausicaä of the Valley of the Wind” / 原作、監督&脚本:宮崎駿 /  […]

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