美醜っていったい何だろう?

 この2週間ほど、普通の傘をぶら下げて出歩いているときには雨が降らない、という謎の呪いを受けてます。大雨の可能性が指摘されてるから、折りたたみじゃ間に合わないかも、と傘を提げて出かけると、何故か私が屋外にいるときは降ってない。降ってても、気持ち程度の雨粒が落ちてるだけですから、濡れるというレベルでもない。そのくせ、これなら保つだろ、と高を括って自転車で出かけたらきっちり降ってくる。幸いにあのときはずぶ濡れになるほどではなかったので、そのまんま強行突破してきましたが、問題は今日です。
 行き先は、いつもならバイクで行くユナイテッド・シネマ豊洲。が、この数日の巡り合わせを思うと、曇りの予報でも安心出来ない。しかし、このところバイクを動かしておらず、車体にも良くない。もう、最悪濡れるのは覚悟の上で、バイクを出すことにしました。
 鑑賞したのは、デヴィッド・リンチの傑作を、公開40周年を記念して4Kに修復の上劇場で蘇らせたエレファント・マン 4K修復版』(Unplugged配給)。これもいつか観なきゃ、と思ってた1本です。
 観ているうちに言いようのない感情がこみ上げてくる作品。容貌に囚われず眺めればはじめから無害だと解るのに、その異様な姿形ゆえに会う者に怖れられ、見世物として生きなければならなかった男。医師は恐らくは科学的関心と良心、双方に促されて彼を保護するが、興行師から「お前は俺と同じだ」と指摘され思い悩む。他方で、医師によって初めて人間らしい環境と交流を与えられた男は、もはや見世物としての自分に耐えられなくなっている。庇護者を失った状態で晒し者になった彼が放つ言葉は、シンプルであるがゆえにあまりにも哀切です。
 時代の感覚を絶妙に再現したモノクロの映像が、残酷なほど美しい。実在した“エレファント・マン”の姿をリアルに再現したジョン・ハートの佇まいに、しばしば愛嬌さえ感じられる辺り、痛烈ではあるけれど優しさも感じる。なるほど確かに名作でした。

 豊洲で映画を観たあとは、だいたい映画館と同じフロアにあるど・みそで食事を摂ると決めている。ここで映画を観る、と決めた段階でその口になってるので、他の選択肢がありません。
 映画館から出るひとのなかに、傘を提げているひとが少なくなかったので、ビクビクしつつ建物を出てみたら――降ってなかった。それどころか、ちょっとだけ雲が切れて陽も射してる。蒸してはいるものの暑苦しいというほどでもなく、家まで快適に走ってくることが出来ました……ここんところの験の悪さをようやく脱した気がする。

コメント

  1. […] 原題:“The Elephant Man” / 原作:フレデリック・トリーヴズ、アシュリー・モンターギュ / 監督:デヴィッド・リンチ /  […]

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