『ハッピー・デス・デイ2U』

原題:“Happy Death Day 2U” / 監督&脚本:クリストファー・ランドン / キャラクター創造:スコット・ロブデル / 製作:ジェイソン・ブラム / 製作総指揮:ジョン・バルダッチ、アンジェラ・マンキューソ、サムソン・ムック、クーパー・サミュエルソン、ジャネット・ヴォルトゥーノ / 撮影監督:トビー・オリヴァー / プロダクション・デザイナー:ビル・ボーズ / 編集:ベン・ボーディン / 衣装:ホイットニー・アン・アダムス / キャスティング:エリザベス・コーロン、サラ・ドマイアー・リンド、テリ・テイラー / 音楽:ベアー・マクレアリー / 出演:ジェシカ・ローテ、イズラエル・プルサード、フィー・ヴ、スラージ・シャルマ、サラ・ヤーキン、レイチェル・マシューズ、ルビー・モディーン、スティーヴ・ジシーズ、チャールズ・エイトキンローラ・クリフトン、ミシー・イェーガー、ジェイソン・ベイル、キャレブ・スピルヤーズ / ブラムハウス製作 / 配給:東宝東和 / 映像ソフト発売元:Universal Pictures Japan
2019年アメリカ作品 / 上映時間:1時間40分 / 日本語字幕:?
2019年6月28日日本公開
2020年6月24日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazon|Blu-ray Disc:amazonAmazon Prime Video]
公式サイト : https://www.universalpictures.jp/micro/happydeathday
amazon Prime Videoにて初見(2020/05/31)


[粗筋]
 ライアン(フィー・ヴ)にとって最悪の朝だった。男子寮のルームメイトであるカーター(イズラエル・プルサード)は前日に続いて女子寮の学生を部屋に連れ込んでおり、部屋に戻るなりまた追い出されてしまった。
 不機嫌なまま研究室に赴くと、学部長にここ数日の実験で繰り返し停電を起こしたことを責められ、開発中の装置“シシー”の運用を禁止されてしまう。挙げ句の果てに、謎の人物からの通信で誘い出された部屋で、背後から襲われ、ナイフを突き立てられてしまう。
 ――が、次の瞬間、ライアンは乗用車のなかで目覚めた。男子寮の部屋に戻る道中、いちど経験した出来事が繰り返し起きることに、不安を覚える。部屋ではやはりカーターと女子学生が一度見たとおりにいい雰囲気になっていて、ライアンは思わず、「変な夢を見た」と口走る。
 だが、カーターと二夜をともにした女子学生・ツリー(ジェシカ・ローテ)には、ライアンが口にした荒唐無稽極まる状況に覚えがあった――他でもない、彼女自身がその前日を幾度も繰り返し、何度も殺人鬼によって命を奪われては朝に逆戻りしていたのである。ツリーは最終的に、自らを狙っていた相手を特定し倒すことでループを脱出した。恐らくライアンも、このままでは同じ1日を際限なく繰り返す羽目に陥る。
 或いは、殺人鬼から逃げ切れば問題はないのではないか、というカーターの提案から、ライアンはカーター、ツリーとともにちょうど学内で開催されていたバスケットボールの観客席に紛れてやり過ごそうとした。しかしその途中、突如として非常ベルが鳴り、観客は一斉に避難させられてしまう。その中に、ライアンを襲った、あのマスクの人物が紛れていた。
 懸命の逃亡の挙句、ツリーの助力で襲撃者を倒すことには成功した。だが、マスクを剥いでみると、そこにはあまりにも予想外の顔があった――


『ハッピー・デス・デイ2U』本篇映像より引用。
『ハッピー・デス・デイ2U』本篇映像より引用。


[感想]
ハッピー・デス・デイ』<のスマッシュヒットを受け、その2年後に製作された続篇である。日本では輸入が遅れたために第1作と本篇が同時に封切りとなった。私はタイミングを逸してしまい、劇場で鑑賞することは叶わなかったが――正直、後悔している。
 前作でひとまずループは乗り越え、ストーリーは完結した。観る側はあのまんま終わらせても構わないが、せっかく好評を博したのだから、製作サイドとしては続篇を作りたい。終わった話をどうやって広げていくか? という問いかけに、本篇は清々しいほどの全力で応えている。
 とにかく序盤の展開の速さ、意外性が見事だ。前作ではヒロイン・ツリーの体験するループ序盤で必ず登場し、繰り返しのたんびに雑な扱いを受けていたカーターのルームメイト・ライアンが翌日に殺害、そしてツリーがループを経験した翌日の朝に逆戻りする。こんどはライアンが1日を繰り返す羽目になるのか、と思いきや、またぞろツリーにお鉢が戻される。前作はループする理由が不明なままだが、今回はその(科学的な理屈はさておき)原因が特定されることで、SF要素まで絡んでくる大盤振る舞いっぷりだ。
 序盤から前作の設定を利用してのツイストが激しいが、しかし前作の魅力はきっちり踏襲している。圧巻なのはやはり、事態を検証する最中のツリーの振り切りっぷりだろう。前作でも、自らの立場を受け入れた途端の開き直った行動の数々で楽しませてくれたが、今回は更に凄まじい。事態の検証に加わった仲間の口からあることを示唆されてからのくだり、私は観ながらずーっと笑いっぱなしだった。
 とことん観る側を楽しませながらも、しかしその中に1本、強い芯を通しているのも前作の良さだったが、その点もまた絶妙に踏襲している。前作で一回り成長したツリーだが、本篇で起きたある“変化”に心を揺さぶられる。そんな彼女に、もう一段階上の成長をもたらす物語的な仕掛けがまた絶妙だ――彼女の決断が正しいか否か、は観客によって意見は割れるだろうが、ここで示唆される考え方は悪くない。少なくとも、SFとしては至極真っ当な価値判断と言っていい。
 ギリギリまで終着点を悟らせることなく、逆転の鮮やかさを味わわせることも前作と同様だ――ただ、本篇の逆転は前作と比べると少々ヒントが迂遠なのがやや残念ではある。とはいえ手がかりはあるのは確かで、前作からしっかりと続けて観ている人ほど衝撃は大きいはずである。
 もうひとつ惜しいのは、前作で犯人の正体を隠し続け、最後まで秀逸なアイテムとなっていたマスクが、今回は中盤以降あまり意味を為していない点だが、しかしここまで笑わされ、翻弄されたあとではそれほど重大な瑕ではない。
 もはや“ホラー”と呼ぶのは似合わないが、エンタテインメントとして優秀。前作からまとめて鑑賞することで、カタルシスを幾度も味わうことの出来る快作である。
 ……なお、そこで止めても問題のなかった前作に対し、本篇はその点だけ反対に、続篇に対する含みを持たせたような終わり方をしている。しかしこれも、ここで終わりでも決して悪くないし、無茶を承知でもうひとまわり繰り出してみるのも一興だろう――さすがに次はかなりハードルが高くなりそうだが。

 新型コロナウイルス感染症の拡大による非常事態宣言の影響で、自宅にて配信の映画を鑑賞する機会が増えてから、記事に添える画像がないのを補うべく、本篇から静止画での引用を始めました――調べる限り、ギリギリ許容範囲とは考えられますが、それでもリスキーなのでなるべく仕掛けや大きなネタを割らず、かつ作品の雰囲気を伝えやすいシーンから抜粋するようにはしてます。
 しかしこの作品については、観ている時点で「あ、このシーンしかない」と思ってしまったワンショットを引用してます。本篇を観ていない方には意味不明すぎる場面ですが、観た方ならきっと同意していただけると思います。このシーンの意味を知るためだけでも、第1作から順に観る価値はある、と言い切りたいくらい最高のワンシーンだと思う。まさにこの映画の真価。


関連作品:
ハッピー・デス・デイ
パラノーマル・アクティビティ4』/『パラノーマル・アクティビティ 呪いの印
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コメント

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