これが欲しかった味……か?

 ほんとに、映画に行くにも決定打がなくて困ってます。もう今週はほぼほぼ諦めて、宿題の消化と作業に費やす気になってます。
 とは言え、出かけないのもストレスになる。そこで思い立ち、久々に足を運ぶことにしました。

 四代目けいすけの味を確かめてくるために。

 2018年に発見してやみつきになり、ふだんは贔屓の店でも2ヶ月に1回足を運べばいい方、という私ですが、これはスタンプカードが2枚埋まるほど通っている――現物がもうないので正確には思い出せませんが、1枚10マスはあったはずですし、1枚埋まれば1杯無料になるサーヴィスでしたからこれに+1、別のけいすけ系列を利用した機会を引いても月に1、2回は通っていた。比較的近い、とはいえもしこれが一般企業なら移動してるあいだに昼休みが終わるくらい移動に時間を費やすので、時として用事もなくこれだけのために足を運んでいたのです。それだけ惚れ込んでいた。
 しかし、店主がけいすけの系列を離れて別の飲食店を営む、という事情で――場所をしっかりお訊きしてなかったのが未だに激しく悔やまれる――昨年2月で閉店、同じ場所に、けいすけ系列初代の味を蘇らせた“初代けいすけ 本駒込本店”が新装開店しました。
 初代けいすけの売りは竹炭を混ぜた味噌を用いた黒味噌ラーメン。これも個性的ですが、明らかに四代目で出していた甲殻類の旨味を濃縮したつけ麺とは違う。まあ、せっかくだからいちどは食べてみよう、と思いつつも、ちゃんと支持者もいたはずの四代目の味をあっさりと切り捨ててしまう姿勢がどーにも釈然とせず、どうも気が進まない。
 そのうえ、ちょうど閉店前後のあたりから私は足腰が不調を来し、お店に行くまでのアップダウンが強烈に答える状態となってしまった。そんなわけで、気づけばまったく立ち寄らなくなっていたのです。

 それから1年半が経ち、私の方の体調は回復――というか、『Fit Boxing』のお陰で通い始めた頃よりも確実に元気になってる。ちょうど今週、映画鑑賞に出かけるモチベーションが落ちてしまっていたこともあり、気分転換がてら行ってみようか、と思い立った。
 食事の前にはいちおうネットで下調べしないと気が済まない性格ゆえ、出かける前にざっと検索をかけてたわけです。そして、愕然としました。

 期間限定で“伊勢海老つけ麺”が復活してたらしい。

 ただし、この内容による書き込みはTwitterにたった1つ見つけたのみ。お店の公式サイトにも、いちおうダウンロードしてあるけいすけのスタンプカードアプリにも情報はない。
 しかし、そこに添えられている写真は、確かに四台目の器とは微妙にモノが違う。これは確かめてみる価値がある、と思い、ようやく本気で挑む気になった。
 ひとつ気がかりだったのは、その投稿が既に1ヶ月以上前であったこと。《期間限定》という文言からすると、既に終わっている可能性も小さくない。が、なければないで、初代けいすけメインの味を見てくればいいのだ、と納得させ、出かけたのでした。

『Fit Boxing』のメニューをいつも通りにこなし、昨晩分の録画を軽く整理し、作業もちょっと片付けてから、自転車にて自宅を出発、この半年、サボることなく継続した成果は、途中のキツい坂道で改めて実感出来ました――屁でもなかった。なんで去年の頭頃、この程度の坂でひーこら言ってたんだ、と自分で疑問になるくらいたやすかった。
 計算したわけではありませんが、見事に開店時間ぴったりに到着。そして券売機には、確かに“伊勢海老つけ麺”の文字がある。ワクワクしながら着丼を待つこと数分、遂に久々に、お目にかかれました。

初代けいすけ本駒込本店の伊勢海老つけ麺、海苔トッピング。

 ……正直に言おう。なんか違う。
 つけ汁の味は記憶通りでした。同じ伊勢海老メインの五ノ神製作所に近いほど強烈に海老の風味がありますが、あちらほどくどくない。たぶん保管はしてあったのでしょう、瓦に似せた独特の皿も使っているので、見た目は近い。
 しかし、つけ汁の中の具材が微妙に違う。記憶では、チャーシューはもっと小さめに切っていたはずですが、だいぶ大きめで、少々ジューシーさも物足りない。
 いちばんの違いは、麺です。発掘したら、四台目の“伊勢海老の雫”として提供していたものの写真がなんとか見つかったので、ご覧になっていただきたい。

四代目けいすけ本駒込店の伊勢海老の雫、焼き盛り海苔トッピング。

 麺が焼いてある、のはこの当時のサーヴィス。一手間余分に必要になるため、今回の復刻で実施していないのはまあ構わない。
 しかしよく見るとおわかりかと思いますが、麺の太さが違う。かつては一目で解るほどの平打ちだったのですが、いまのものは「平打ち……かな?」という程度。それゆえに、食感もちょっと軽い。
 他にも、トッピングとしてお願いした海苔が、かつてはざるそばのように千切りにして散らしてくれていたのが、今回は長方形のまま添えられているのも違う。
 メインが違うタイプのラーメンゆえに、用意出来る麺にも制約があり、トッピングも現行のスタイルに従わざるを得ないのも理解は出来る。出来るけど――やっぱりちょっとしっくり来ない。

 ただし、味は美味しいのです。スープは完全に再現されているので、麺を啜ると一気に口の中に溢れる甲殻類の風味は一緒。細めとはいえ、ツルツルでちゃんと弾力もある麺にスープがしっかり絡みます。そして、濃厚さのわりに食べやすく、量があっても入ってしまうのも同様。たっぷりと麺を浸してるとと、麺を食べ終わる頃にはスープが残り少なくなってるのも同様。
 四代目のときは、麺を食べ終わったタイミングでお店の方にお願いすると、レンゲに乗るくらいのサイズに揚げたライスボールをつけ汁に入れてくれる。中にはカレーパウダーが入っていて、これを潰してかき混ぜると、リゾット風にして最後までスープを味わえる、というサーヴィスもありました。今回の復刻でも実施しているかどうか、は確認しませんでした――実のところ、入店したときは私ひとりでしたが、気づけば外に待機が出るほど客が詰めかけていたので、それ以上席を塞ぐのも、店員の方を煩わせるのも気詰まりだったのです。

 決して完璧ではないものの、味自体はまあ許容してもいい範囲でした。ただ、たぶん、直近にもういちど訪ねることはないでしょう。
 問題は味よりも、店内の感染症対策が甘すぎる点です。
 券売機の脇には消毒薬が置いてありますし、カウンターと厨房の境には透明なカーテンも下がっている。しかし、肝心の客席のほうは、仕切りもなければ、客席の間隔を設けることもしていない。
 そもそも店舗の面積がかなり狭いので、万全に対策をするとキャパシティが低下しすぎて経営が成り立たない、という背景もあるのだとは思います。ただそれならそれで、マスクをせずにべらべら喋っている客に注意する、程度の配慮は欲しい。ぶっちゃけ、ライスボールの有無などを確認せずに店を出たのは、隣に来た客がまさにそんな感じだったからだったりする。どのみち食事のときにはマスクを外さねばならないにしても、ちょっとは気を遣って欲しい。
 繰り返しますが、味は悪くない。新装開店後の口コミでは店員の態度に難を覚える意見がちらほらあったのですが、少なくとも今日は問題を感じなかった。ただ、現状でこの対策の甘さだと、感染すると深刻化する危険を孕む持病のある私にはちょっと怖くて立ち寄りづらい。
 まあ、ここも例に漏れず、テイクアウトに対応するようになっていたので、メインの味を確かめたい、多少違っててもあの味が恋しい、という気分になったら、そちらを利用してみます。

コメント

  1. […] […]

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