『アベンジャーズ(3D・字幕)』

TOHOシネマズ日劇、ホール売店上の大型ペナント。

原題:“Marvel’s The Avengers” / 監督&脚本:ジョス・ウェドン / 原案:ザック・ペンジョス・ウェドン / 製作:ケヴィン・フェイグ / 製作総指揮:アラン・ファイン、ジョン・ファヴロー、スタン・リー、ルイス・デスポジート、パトリシア・ウィッチャー、ヴィクトリア・アロンソ、ジェレミー・ラッチャム / 撮影監督:シーマス・マッガーヴェイ,ASC,BSC / プロダクション・デザイナー:ジェームズ・チンランド / 視覚効果&アニメーション:インダストリアル・ライト&マジック / VFXスーパーヴァィザー:シャネク・サーズ / 編集:ジェフリー・フォード,A.C.E.、リサ・ラセック / 衣装:アレクサンドラ・バーン / キャスティング:サラ・フィン、ランディ・ヒラー / 音楽:アラン・シルヴェストリ / 音楽監修:デイヴ・ジョーダン / 出演:ロバート・ダウニーJr.、クリス・エヴァンスマーク・ラファロクリス・ヘムズワーススカーレット・ヨハンソンジェレミー・レナートム・ヒドルストンクラーク・グレッグステラン・スカルスガルドコビー・スマルダーズグウィネス・パルトロウサミュエル・L・ジャクソン / マーヴェル・スタジオズ製作 / 配給:Walt Disney Studios Japan

2012年アメリカ作品 / 上映時間:2時間24分 / 日本語字幕:松崎広

2012年8月14日日本公開

公式サイト : http://avengers-movie.jp/

TOHOシネマズ日劇にて初見(2012/08/14) ※日本最速上映



[粗筋]

 ニック・フューリー(サミュエル・L・ジャクソン)指揮のもと、他とは異なる形で世界平和への試みを続ける組織シールドの秘密基地が、崩壊の危機に瀕していた。研究が進められていた、未知のエネルギーを内包する立方体が突如、活動を開始したのだ。セルヴィグ博士(ステラン・スカルスガルド)らが制御に尽力するなか、立方体から放たれたエネルギーがこじ開けた空間より、忽然とひとりの男が現れた。

 彼の名は、ロキ(トム・ヒドルストン)――神々の住まう異世界アスガルドから追放された、流浪の神である。彼は人の心を操ることの出来る槍で、シールド最強の狙撃手ホークアイことクリント・バートン(ジェレミー・レナー)ら支配下に置くと、立方体を奪って去っていった。

 依然として危険な状態にある基地を捨てたフューリーは、この未曾有の危機に対処するべく、一度は封印されたプロジェクトの再始動を決意する。そのために、某国で任務遂行中だった女スパイのブラック・ウィドウことナターシャ・ロマノフ(スカーレット・ヨハンソン)や、前々からこの計画に携わっていたエージェントのフィル・コールソン(クラーク・グレッグ)らを動かし、彼らに呼びかけた。

 フューリー自らが呼びかけたは、キャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャース(クリス・エヴァンス)。第二次世界大戦中に軍の研究によってと生み出された世界最初のヒーローは、国を救うために北極に没し、70年を経て冬眠状態から蘇生させられたが、以来戦いを拒み、ひとりトレーニングに励む日々を送っている。だが、「世界を救うためだ」というフューリーの言葉に心を動かされ、ロジャースはシールドに合流する。

 一方、ロマノフはインドに飛び、潜伏生活を送っていたブルース・バナー(マーク・ラファロ)と接触した。キャプテン・アメリカを誕生させた血清を用いた研究の過程で、怒りが最高潮に達すると緑色の巨人ハルクに変貌するようになった彼は、破壊を繰り返さないために身を隠していたが、シールドは有事に備えてずっとバナーを監視していたのだ。事態を打開するために、研究者としての頭脳を求められたバナーは、周りに累を及ばさないためにも同行を了承する。

 間もなくドイツに、ロキと洗脳されたバートンらシールドの部隊が出没した。特殊工作に長けたバートンの能力によって彼らはつつがなく目的を達成するかと思いきや、その動きを察知したシールドが既にロジャースらと、大富豪にして自ら製造したパワード・スーツをまといアイアンマンとして活動するトニー・スターク(ロバート・ダウニーJr.)が合流してロキに対抗、意外にもあっさりと投降して、ロキはシールドの手に落ちた。

 間もなく、ロキをアスガルドに連行するべく急遽時空を超えてきた雷神・ソー(クリス・ヘムズワース)も加わり、奇しくもここに、フューリーが当初計画していた“アベンジャーズ”のメンバーが結集する――しかし、事態は決して容易に収束はしなかった……

[感想]

 近年、アメコミを原作とする映画は、すっかりハリウッドを代表するジャンルに成長した感がある。毎年のように興収ランキング上位に名を連ね、ものによっては賞レースでも取り沙汰されるケースも見られるようになった。

 特に、『アイアンマン』『スパイダーマン』などの人気シリーズの権利を多く擁するマーヴェル社はのちに独自のスタジオを設立して映画製作に直接携わるようになり、それを踏まえて前々から大きな計画を打ち出していた。それが、マーヴェル・ヒーローたちを結集させ、巨大な敵に挑む、この『アベンジャーズ』である。

 計画を発表した時点から、新たに発表した映画のエンドロールよりあとに、『アベンジャーズ』に至る導入を用意、直後のマーヴェル最新作への引きとしても用いながら、着々と準備を進めていたが、あまりに壮大な計画なだけに、ファンであっても若干、実現には半信半疑の想いもあったのではなかろうか。仮に実現したとしても、それぞれに世界観、能力の性質などに微妙な差があるため、果たして一連の実写版アメコミ・ヒーローでこの世界に馴染んできた層までも納得させられる仕上がりになるのかどうか。

 非常にプレッシャーの大きい計画であったはずだが、本篇は見事にスタジオのみならず、観客たちの期待に応えている。

 実は、個人的にいちばん気懸かりだったのは、『マイティ・ソー』の存在だった。他のキャラクターは何だかんだ言いながらほとんど生身の人間であるのに対し、ソーだけは“神”である。どう考えてもパワーバランスが保てず、ひとりで活躍するような事態になりそうな気がしていた。

 しかし、そもそもマーヴェルでは以前から同題のドリーム・チームを描くコミックが存在していたわけで、そのあたりの調整ははなから出来ているのだろう。確かにソーの能力は“人間離れ”しているものの、ちゃんとバランスは取れている。

 要は、適材適所をわきまえ、それぞれ相応しい場所で活躍し、見せ場を設けているのだ。単独の映画がまだ存在しないホークアイとブラック・ウィドウはいずれもまったくの生身、特にハンデが大きいのだが、序盤は『アベンジャーズ』独自のドラマ作りに貢献し、終盤の壮絶な戦いの場では、生身だからこその機動力と、それぞれの高いポテンシャルを活かした任務を見事に果たしている。

 他のキャラクターも、各々非常に我が強いだけに、当然のように序盤は対立する場面も見せながら、しかし終盤では実に彼ららしい活躍を示す。アイアンマンは優秀なエンジニアである、という個性を発揮しつつ、多彩な話術で相手を煙に巻くような趣向まで披露する。キャプテン・アメリカはその名に相応しく、終盤では優れた指導力を発揮し、バラバラだったメンバー達を絶妙にコントロールしてみせる。

 予想外だったのは、ハルクの存在が非常に重要だったことだ。優れた科学者にしてヒーロー、というだけならアイアンマンと被っているが、しかしよく考えると、ある意味ほかの誰よりも、数奇な運命に翻弄される男でもある。そして、特徴を考えれば、キーマンになる素質は充分に備えているのだ。その特性も、性格までも見事に発揮しており、いっそオリジナル・シリーズよりもそのキャラクターに見合った活躍をしている、という気さえする。登場人物で唯一、単独作品からキャストが変更されてしまったが、決してスター俳優でなかったことも、その振る舞いに説得力をもたらしていて、奏功していると言えそうだ。

 ほとんどが単独で主役を張るキャラクターばかり、そのうえに最後は地球規模の危機が訪れる、という内容だけに、本篇はほぼ全篇クライマックスに等しい。冒頭のシールドの基地が破壊されるくだりから、アベンジャーズ結集の経緯、集合してすぐに勃発する内輪揉めや、その背後でロキが仕掛ける策と、非常に盛り沢山だ。怒濤のような展開に、観ていて疲れるほどだが、これほど充実した疲労感をもたらす作品はそうそうない。

 各々の作品に固有のファンがいるほどのキャラクターを巧く操り、相応しい見せ場を与えて調和が保たれている。マーヴェル作品全体のファンのみならず、各作品のファンさえも満足させ、恐らくそれぞれの作品に触れたことのない人でさえ唸らせるほどに、充実したエンタテインメントに仕上がっている。世界各国で記録を更新する大ヒットを遂げるのも当然だろう――そして、各キャラクターの続篇とともに、アベンジャーズ再結集が早々と決定するのも宜なるかな、だ。

関連作品:

インクレディブル・ハルク

アイアンマン

アイアンマン2

マイティ・ソー

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー

ダークナイト ライジング

エイトレンジャー

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