『ルーキー』

ルーキー(Blu-ray Disc)

原題:“The Rookie” / 監督:クリント・イーストウッド / 脚本:ボアズ・イェーキン、スコット・スピーゲル / 製作:ハワード・カザンジャン、スティーヴン・シーバート、デヴィッド・ヴァルデス / 撮影監督:ジャック・N・グリーン / プロダクション・デザイナー:ジュディ・カマー / 美術:エド・ヴァリュー / 編集:ジョエル・コックス / キャスティング:フィリス・ハフマン / 音楽:レニー・ニーハウス / 出演:クリント・イーストウッドチャーリー・シーンラウル・ジュリア、ソニア・ブラガ、ララ・フリン・ボイルトム・スケリット、ぺぺ・セルナ、マルコ・ロドリゲス、ピート・ランドール、ドナ・ミッチェル、ザンダー・バークレイ、トニー・プラナ、デヴィッド・シェリル、ハル・ウィリアムズ、ロイド・ネルソン、ジョエル・ポリス、ポール・ベン=ヴィクター、ロバータ・ヴァスケス / マルパソ製作 / 配給:Warner Bros. / 映像ソフト発売元:Warner Home Video

1990年アメリカ作品 / 上映時間:2時間 / 日本語字幕:岡田壯平

1991年2月15日日本公開

2010年7月14日映像ソフト日本最新盤発売 [DVD Video:amazonBlu-ray Discamazon]

Blu-ray Discにて初見(2013/04/02)



[粗筋]

 自動車盗難課のニック・パロヴスキー(クリント・イーストウッド)は長年、組織的な自動車泥棒を追っていた。ストロム(ラウル・ジュリア)という男がその元締めである、ということまで探り出していたが、かなり追いつめたところでストロムに相棒を殺されてしまう。

 復讐心に燃えるニックに、上司のガルシア警部補(ペペ・セルナ)は新しい相棒として、制服警官から転属したばかりのデヴィッド・アッカーマン(チャーリー・シーン)をつけた。荒っぽい手段を好むニックには新人は足手まといでしかなかったが、ニックは彼を同行させつつも、基本的には何もさせないことで折り合いをつける。

 デヴィッドにはそれが不満だった。裕福な家庭に育ったものの、幼い頃に自分のミスで弟を死なせてしまった彼は、未だに罪の意識を抱え、それを払拭するため、悪党たちに立ち向かえる男になろうともがいている。

 ニックは例によって荒っぽい手段を用いて、ストロムの部下モラレス(トニー・プラナ)を陥落すると、その情報をもとに一斉検挙を成功させた。ニックの執拗な捜査により売上が激減し、遂に破産状態になるまで追いつめられたストロムは、メキシコへ逃れることを決めるが、その前にモラレスを殺害し、頻繁に利用していたカジノを襲撃、現金を奪おうと画策する。

 モラレスが最後に仕掛けた盗聴器を利用してストロムの計画を事前に察知したニックは一同を待ち伏せるが、デヴィッドがストロムの女・リースル(ソニア・ブラガ)に不意をつかれ情勢は一変、逆にニックはストロムに囚われてしまう。

 喉から手が出るほどに逃走資金を欲したストロムは警察にニックの身代金として200万ドルを要求するが、誘拐犯罪の蔓延を恐れた市長も警察長官も身代金の拠出を認めない。

 自らの失態により、相棒が命の危険に晒されている。デヴィッドはこの期に及んで、遂に目を醒ました。取り澄ましたポーズをかなぐり捨て、ニックのスタイルに則り動き始めた――

[感想]

 クリント・イーストウッドの監督としての全盛期は21世紀に入って以降だ、と感じている。ここまで彼の劇場映画をかなりの本数観てきたが、当初からのその確信はあまり大きく変わっていない。

 しかし、イーストウッドが初めてオスカーに輝いたのは1992年に発表した『許されざる者』であった。当時、アクション・スター上がりの監督がアカデミー賞を制した、ということで話題になった、という記憶があるが、順を追って鑑賞していくと、その到達点が決して偶然に訪れたわけでも、唐突に辿り着いたわけでもないことが解る。それまでの研鑽があって、確信をもって踏みしめた境地なのだ。

 ちょうど直前にあたるこの作品は、『許されざる者』よりも解りやすい娯楽作、しかも前年に『メジャー・リーグ』で大ヒットを飛ばし、まさに人気の絶頂にあったはずのチャーリー・シーンを起用しているのは、ヒット狙いのようにも思える。imdbを参照しても点数は芳しくないが、しかし私にはむしろ、頂点に向かっているが故の充実感が本篇には溢れており、素晴らしく魅力的な作品と思えた。

 イーストウッドが演じている人物像は相変わらず『ダーティ・ハリー』の路線を踏襲するものだが、従来の殺人や薬物犯罪を扱う立場ではなく、どちらかと言えば軽く見られる立場にある自動車盗難の担当。だが荒っぽさは一級で、相棒を殺された恨みも加わって、警官らしからぬ乱暴な手段を用いて主犯を追いつめる。

 新しい相棒は、そんな彼とは対照的にお坊ちゃま育ちで、有名レストランにも顔が利く、スマートな人物として描かれる。だが同時に、一人前の警官として認められたい想いが強く、明らかにイーストウッド演じるニックに影響されていく。

 本篇の面白さは、従来ならイーストウッド演じる主人公がやっていたことを、彼が虜となってしまったことを契機に、残された若き相棒が代わりに、より過激に実践している点だ。序盤の描写から、色々と鬱屈するものがあっただろう、というのは推測出来るが、しかしこのキレ方は極端で、戸惑うほどである。初登場の際の綺麗ななりはどこへやら、クライマックスのあたりではすっかり薄汚れ、精悍になった様に説得力がある。

 そして最後の最後、それまでの出来事がちゃんと活かされた展開になっているのも巧い。デヴィッドによる意趣返し、ニックの首尾一貫した締め括り方は爽快だ。そのあとに設けられたエピローグも実に憎い。

 決して謎解きがあるわけでもなく、驚きがあるわけでもないが、これまでのイーストウッド作品が備えていた渋さも留めながら、興奮と痛快さを最後まできっちり詰めこんだ、良質の娯楽作である。

関連作品:

ダーティハリー

ダーティハリー2

ダーティハリー3

ダーティハリー4

ダーティハリー5

サンダーボルト

ウォール街

ウォール・ストリート

SAFE/セイフ

メン・イン・ブラック2

テッド

トレーニング・デイ

デンジャラス・ラン

許されざる者

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