『1995~地下鉄サリン事件30年 救命現場の声~』を観た。

1995~地下鉄サリン事件30年 救命現場の声~ - フジテレビ
1995~地下鉄サリン事件30年 救命現場の声~ - オフィシャルサイト。3/21(金) 21:00~22:52放送。「地下鉄サリン事件」を独自取材に基づきドキュメンタリードラマ化!

 圧巻でした。
 私ははっきりと、リアルタイムで報道を観ていた世代で、実はこの時期、ときどき当該路線を利用していた。この日は確か違ったはずですが、ちょっとゾッとしない記憶です。
 報道をつぶさに追っていたため、それなりに状況は把握していたものの、当時の報道映像そのまんまの引用に、実際の通信のやり取りを乗せた描写の臨場感、緊迫感はただごとではない。
 それを、一部の人物になるべく集約する形でドラマとして再現していて、挿入される実際の映像、音声の迫力も相俟って異様なほど惹き込まれてしまう。序盤は警察でも爆発物の可能性がある前提で初動を指示していたり、車内に残った被害者が痙攣のため座席のフレームを掴んだまま直立不動になっていた、など知らなかった事実も随所に見られるのも興味深い。
 また、現在となっては考えられない、不審な液体を素手で回収し、モップ掛けしてしまったくだりもちゃんと描くなど、その辺を偽っていません。結果的に間違いではあったけれど、当時はまさかこれほど明確な害意をもって化学薬品をばら撒くケースはまだ想定されていなかったし、不審なものには安易に触れない、という意識、どのように対処すべきか、といったマニュアルは、この事件を境に生まれたものです。
 個人的に、特に評価したいのは、犯行グループを糾弾するような文脈ではなく、想像だにしなかった事態と、それに直面した人々の動揺、原因物質が特定できないまま対応に奔走した人々など、まさにその現場にいた人々を描き、どれほど多くの人が苦しみ、彼らを救うために救助隊や医療スタッフなどがどれほど腐心したのか、という点に重点を置いて描いたことです。ちょうど事件から30年である昨日はNHKで実行犯側を中心に追ったドキュメンタリーが放送されてましたが、あちらに、この最前線の姿は表現できていなかった。
 この事件で被害を受け、度合いに差はあれど後遺症に悩まされる人は今も多い。日本人である以上、忘れてはいけない歴史のひと幕を、いま可能な限りのリアリティで再現した、出色の作品でした。

 例の問題によるスポンサーの撤退はまだ続いていて、この状況に目をつけた一部企業や、独自に判断して出稿を再開した企業もあるようですが、CM枠はまだまだ寂しい。
 けれど、例の問題の追及とは別に、真摯に制作された番組はきちんと報われるべきだと思うし、こういう意義のある番組は支えて欲しい。追求されている問題とは一切関わりのないスタッフだって少なくないだろうに、何もかも十把一絡げにして責め立てるのは、特定の集団を狙って無差別に毒をばら撒いたこの事件の首謀者と大差ない、とけっこう本気で思ってます。

 番組はFOD、この記事がアップされてまだ間もない時期であればTVerで無料配信されてます。
 なお、首謀者側の変遷、司法による追求の流れをおさらいしたい方は、前述したNHKのドキュメンタリーの一部をまとめた下記の記事や、リンクされているNHKプラスの配信を併せて観てください。

オウム真理教 狂気の“11月戦争” | NHK | WEB特集
【NHK】30年前の1995年3月20日。世界を震撼させた無差別テロ、地下鉄サリン事件。しかし、それは“前哨戦”だった。オウム真理…

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