『スレイヤーズすぺしゃる(24) 地底王国の脅威』
判型:文庫判 レーベル:富士見ファンタジア文庫 版元:富士見書房 発行:平成17年4月25日 isbn:4829117109 本体価格:520円 |
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まず最初にお断りしておきます。従前、わたしは神坂一作品に限っては「シリーズ完結の時のみ、全体を通した感想を残しておく」という方針で、日記上には簡単に書き留めても“books”のページには記録しない、という方針を貫いておりました。それはごく最近、クロスカディア最終巻の感想のところでも簡単に触れたとおりです。
しかし本書を含むスレイヤーズすぺしゃるシリーズは完全にサザエさん化し、延々話を積み重ねていくだけでいっこうに完結する気配を見せておりません。だいいち仮に完結したとしても全体を通して何を語ればいいのか解りません。これまでも上記の言い訳に添って日記上に簡単な感想を書いておりましたが、現在のブログ形式に移行してからは、日記に本の感想を書いてそこへ“books”のページに作ったインデックスからリンクしておく、というスタイルを取っているので、変に簡単な感想を書くと却って浮いてしまう。 そうしたわけで、今後も基本的には上記の方針でいくつもりですが、このスレイヤーズすぺしゃるに限り、ごく簡単な感想であることは変わりないにしても、ほかの書籍と同様のスタイルで一巻ずつ記録を残しておくことにします。 ――と言い訳が終わったところで本題に入る。 基本線はいつも通り、軽く読めつつもちゃんとオチのある話が並んでいる。このスレイヤーズシリーズは一見楽に書いているように見えて、ファンタジーのお約束を踏まえたうえで可能なお遊びを縦横に展開してくれるため、なんとなく鬱憤が晴れたような気分を齎してくれるのがいいのです。 たとえば『魔の海のほとりにて』と続編の体を為す――と言っても、登場人物を踏襲しているだけで基本的には別のエピソード――『今 そこにいる女房』はいわゆる冒険映画の常套をファンタジーの文法上で踏まえながらお遊びを施している。特に後者なんか、かなり哲学的なひねりとも言えるので(大袈裟)訳も解らずに納得させられてしまうのが素敵だ。 表紙と口絵で往年のファンに対してクリティカルヒットをかますきっかけを作る表題作も、ファンタジーならではのお約束に楔を打ち込んでいると言っていい。この場合エプロンドレスも一種の罠である。 個人的にいちばん興味深かったのは『ゴースト・ライフ』である。この世界における“怪談”を、現実における怪談・幽霊談の文法をちゃんと抑えたうえで、ファンタジーというか如何にもリナ&ナーガらしいツイストを施している。しかもラストには「よ〜く解ってます」と言わんばかりのオチがついているのが憎い。 随所にお約束の展開があるが、寧ろそれを笑うためにお約束を踏まえることに腐心しているシリーズであり、その意味で安心して読める一冊。ナーガの妙な位置づけに深く拘らずにいられるなら、本書からでも作品世界に入れるはずだ。 |
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