本日の見出し

自分症候群 プライス・ダウン・リイシュー盤

 まだ発掘できてないのに、ふと脳裏に甦ったが最後、一日頭の中をぐるぐる回ってました、この曲が。1985年発表の、極めて完成度の高いコンセプト・アルバム……なのですが、引用したこれは唯一のコミック・ソング。当時にしては珍しい打ち込み中心で、どーでもいいことを歌ってます。ベストアルバムなどに採りあげられるような曲はあまりない一方で、『風が伝えた愛の唄』や『沈吟』、『Final Count Down』とバラエティに富みながら曲としての出来は極めていいものが揃っているなかで、この曲だけが激しく浮いてます。それ故に耳に残る。

 昔からさだまさしという人はアルバムに長文のライナー・ノーツを掲載する妙な癖がありましたが、このアルバムに至ってはライナーどころか小説になっている。近年発表している『精霊流し』などに比べるとまだ雑な書き方をしていますが、話やその雰囲気は秀逸だというのに、やっぱりこの曲に添えた小説だけがとても変だったり。そして他のどの話よりも記憶に残っていたり。ハンカチは意外と硬くならない、とかいうどうでもいい一節が不意に思考の片隅を掠めていく、非常に迷惑な代物です。

 ……しかし、音楽も小説もかなりよく出来ているので、気になる方は購入してみてください。但し、例によって私が持っているのはCD化された最初のヴァージョンのものなので、リンクしたリイシュー盤でも小説を収録しているかどうかは保証の限りではありません。音楽だけでも聴く甲斐がある作品ではありますけどね。

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