かりん 増血記 恥じらいダイアリー(2)

かりん 増血記 恥じらいダイアリー(2) 『かりん 増血記 恥じらいダイアリー(1)』

甲斐透[著]/影崎由那[原作・イラスト]

判型:文庫判

レーベル:富士見ミステリー文庫

版元:富士見書房

発行:平成18年5月15日

isbn:482916350X

本体価格:540円

商品ページ:[bk1amazon]

 影崎由那による落ちこぼれの吸血鬼・真紅果林のドタバタと恋心とを描いた人気漫画『かりん』。それとほぼ同時進行で、漫画では語られていない期間の出来事を綴った甲斐透によるノヴェライズ・シリーズの通算8巻目。書き下ろし形式であったものが、アニメ放映に合わせて『ドラゴンマガジン』誌上に連載されており、内容的には7巻目『〜恥じらいダイアリー(1)』に続くかたちとなっている。

 体育祭を境に、果林を吸血鬼では、と疑う葛城律の追求は執拗となっていた。以前は疑いながらもまだ果林を気遣ってくれていたのに、いまは余裕を失っている律の様子に、果林と雨水健太は何か事情があるのでは、と探りを入れようとする――が、基本的にドジっ娘の果林にそんなことがうまく出来るはずもなく、最終的に律は自らの口でその理由を語るのだった……

 前巻で突如連載形式となったときは何巻を費やすのか、とちょっと不安になりましたが、2巻で完結となったのでヴォリューム的には程良い印象です。

 ただ、果たして2冊も費やすようなエピソードだったか、はやや微妙だろう。謎という謎があったわけでもなく、締め括りも身内のドタバタで終わった印象があるので、少々長すぎる番外編という趣だ。そう考えると、程良くまとまった他の巻と比較するといささか緩い。

 但し、原作にある“増血鬼”という特異な設定を活用したラヴコメ、としては相変わらず堅実に華々しい。雨水に想いを寄せながら近づきたくても近づけないジレンマに悩み、しかし些細なことで一喜一憂する果林の姿。そこに今回は果林と瓜二つの祖母・エルダが絡んで、終盤のこんがらがったドタバタぶりはなかなかに楽しい。

 久々に正統派の“恋のライバル”キャラだっただけに、事態が収拾したあとも律にはもう少し粘って欲しかった気はするが、本質的にこの小説版は原作である漫画版の空白を埋めていくもの、という制約があるので、それは難しい相談なのだろう。原作の筋を壊すことなく、そのテイストを文章で再現する、という意外と厄介な要求をきちんとこなしているだけで、このシリーズは読み物としての役割を完璧に果たしている、と思う。

 あとがきでは特に触れられていないが、恐らく書き下ろしに戻るであろう次巻以降も、1ファンとして期待したい。

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