北野 誠 怪異体験集 おまえら行くな。

北野 誠 怪異体験集 おまえら行くな。 『北野 誠 怪異体験集 おまえら行くな。』

北野誠[著]加藤一[編]

判型:B6判ソフト

レーベル:LUNATIC WALKERS

版元:MICRO MAGAZINE
発行:2006年7月5日

isbn:4896372360

本体価格:980円

商品ページ:[bk1amazon]

サイキック青年団』『トゥナイト2』などの番組内企画で様々な怪奇スポットを探訪し、自らも奇怪な出来事を多く体験しているタレント・北野誠氏が自らの口で語った怪奇体験の数々を、『「超」怖い話』の共著者である加藤一氏が文章に起こした怪談集。幼少期から青年期にかけて、北野氏が自らの生活圏内で体験した出来事である『赤襦袢』以降の5話と、タレント業に携わり、怪奇ものの企画でレポーターを務めるようになって以降の体験談など、計16話を収録する。

『幽』において、交流の深い中山市朗氏との共同企画『やじきた怪談旅日記』を連載しているため、テレビ・ラジオには興味がなくても怪談好き、という方ならば著者の名前はご存知だろう。自らも多くの体験をしていることも有名であり、それをきちんと順序立てて綴ったのが本書である。

 従って、昔から著者の出演するテレビ番組をよく観ていたり、関連した書籍を読んでいる人間には聞き覚えのある話が揃っているが、古びた印象はない。本人の語りをそのまま文章に起こすのではなく、『「超」怖い話』シリーズなどで活躍し、怪異を簡潔に解り易く表現する手管に長けた加藤一氏の筆を経て綴りなおすことで、違った手触りを生むことに成功している。

 更に興味深いのは、実際にテレビで放映され話題となった映像の背景を綴った『地蔵』や『ホワイトハウス』、木原浩勝&中山市朗『新耳袋』で語られた話題を体験者である北野氏自身の視点で、しかもあちらでは固有名詞をすべて伏せる形で記されていたものを、支障のない範囲でではあるが実名で綴っていることだ。恐怖の精髄を抽出した『新耳袋』に比べるといささか緩んだ印象はあるが、本人の語りを元に、本人の一人称という手法で綴っているため、生々しさを増している。

 長く“怪奇現象”と付き合っている著者の体験から選り抜いていること、また多くのタレント怪談のようにやたらと勿体ぶらず因果に頼ることもしない姿勢と、また加藤氏の簡潔で的を射た文章とが、全体に品格を齎している。よくあるタレントの余技的な代物ではなく、正統的な怪談本として賞味できる1冊である。

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