『いま、殺りにゆきます2』
判型:文庫判 レーベル:英知文庫 版元:英知出版 発行:平成19年1月20日 isbn:4754230302 本体価格:600円 |
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世間には狂気が満ちあふれている――。『独白するユニバーサル横メルカトル』で日本推理作家協会賞に加え『このミステリーがすごい!』でも1位を獲得、名実ともに現代ホラーの第一人者となった著者。『「超」怖い話』シリーズを軸に実話怪談の分野でも活躍しているが、本書は当初その落ち穂拾いとして発表されながら、いまや平山怪談のもう一つのスタイルとして確立された、“生きている人間”の怖さを綴るシリーズである。『「超」怖い話』シリーズを刊行する竹書房文庫からは『東京伝説』として、ハルキ文庫からは『〜いけない』シリーズとして継続しているが、本書は英知出版からの第2集となる。
単純に帯の口上だけに惹かれて本書を読む方にとってはおそらく刺激が強すぎるので、ちょっと詳細に説明させていただいた。いずれも取材によって著者が採集した実話、ということになっているが、神経の細い人ならこれだけで胃が痛くなるくらいの恐怖を覚えるだろう。もはやすっかりそういう磁力を放ってしまっているから自然に引き寄せられてしまうのだろうけれど、よくもまあこうもえげつない話が集まるものだ、と毎度感心させられる。 しかし、これも最近は繰り返し指摘していることだが、刊行ペースが速すぎるために、これほど凶悪で神経を削るエピソードの数々に、読み続けていくうちに慣らされてしまう。英知文庫刊行の本シリーズは前巻・本巻ともに特に激烈なものが集められているが、それでも「まあ、こんなもんだろうな」とあっさり受け止めてしまっている自分がいる。恐れるべきはそんなふうに鈍磨してしまった自分自身なのだろうが、熱心に愛読している読者ならばたいてい陥ってしまう状況である。出来ればそのあたりに配慮して、発表媒体を絞り厳選するなどして、いまふたたび本来の衝撃を思い出させていただきたい、というのが正直なところだ。 侵入者、ストーカー、危険な商売の類が中心であり、初読の方にはそのあたりのショックが大きいだろうが、こんなことを書くまでになってしまったジャンキーの私には、『ハイキング』『冬ソナ』のようないっそ素直と感じられるようなネタのほうが新鮮で興味深かった。 ――まあ、いずれにせよ、どれほど世間で高く評価されようと、相変わらず著者が狂気のギリギリのところに佇んでいることを証明してくれた点では、ファンとして溜飲を下げた。どうぞ今後もこの危険なラインを維持していただきたい――躰に支障のない範囲で。 なんだか毎回同じようなことを書いてるな。 |
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