北野 誠 怪異体験集 続おまえら行くな。

北野 誠 怪異体験集 続おまえら行くな。 『北野 誠 怪異体験集 続おまえら行くな。』

北野誠[著]加藤一[編]

判型:B6判ソフト

版元:MICRO MAGAZINE
発行:2007年6月28日

isbn:9784896372557

本体価格:980円

商品ページ:[bk1amazon]

 2006年夏に刊行された『おまえら行くな。』に続いて、タレント・北野誠氏が自らの体験や関係者から聞き取ったエピソードを語り、『「超」怖い話』の加藤一氏が文章化した怪談集の第2弾。『新耳袋』の著者・中山市朗氏も絡む『河内長野百物語会の顛末』、後輩タレントがロケ先から連れてきてしまった怪異『笠置観光ホテル』、建物は失われてもなお残る怪異を綴る『千日前の思い出』など全19話を収録する。

 初めて自ら体験した怪異のみで綴った前作は刊行までに2年を費やしたというが、好評を受けて僅か1年での続刊登場となった。前作の刊行によって体験談も多く寄せられたと言うが、それだけ著者が豊富な経験を持つことの証明だろう。

 実際、番組中のロケでの体験談やイベント絡みのエピソードが多いのだけれど、決して状況も語り口もワンパターンに陥っていない。文章化の作業を担当した加藤一氏の力量に負うところも大きいのだろうが、ただの体験自慢になることなく、“怪談”としての味わいを備えている。

 そのなかでも象徴的なのが『河内長野百物語会の顛末』である。前巻でも『新耳袋』で語られたエピソードを北野氏の側から語り直した作品があるが、こちらも中山市朗氏やトークライブでの出来事が絡んでおり、『新耳袋』と比較すると、切り口の違いから来る印象の変化が楽しめるはずだ。他にも『笠置観光ホテル』は同じような過程を経て取材している人間が複数あって、私の記憶が確かなら、この夏の怪談ラッシュ終盤に、意外なところから出る書籍のなかで詳しく触れられているはずだ。北野氏の体験も結構なものがあるが、笠置観光ホテルの凄まじさはこれに収まらない。気になった方はちょっと目を光らせて、そちらもご覧になっていただきたい。

 若干話が逸れたが、本書はおしなべてクオリティが安定しており、タレント本と意識することなく怪談本として楽しめる。怪異に対して芸能人ならではの関わり方をしていく『竜宮城』などのエピソードもあるが、それとてあくまで関わり方が特徴的なだけであって、漂う怪しさはあくまで“怪談”のそれである。また同時に、『廃病院』『場所柄』『天王寺のアパート』のように、怖さのなかにユーモアも感じさせる話が複数あることもいい。

 突出して凄まじい話が収録されているわけではないが、確固とした立ち位置に支えられた安定感のある怪談が並ぶ、良質の1冊。この質が維持できるならば、次も期待したいところです。

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